『「ワンピース」と現在の終末戦争』
『ワンピース』は、「ゴム人間になった少年ルフィが“海賊王”を目指して仲間と世界を巡り、巨大な世界政府の秘密と“本当の歴史”に挑む長大な冒険物語」です。
表面上は「宝探しとバトルの海賊マンガ」ですが、実際には「自由 vs 支配」「歴史の改ざん」「人種差別・身分差別」「巨大権力(世界政府)の正体」といった重いテーマが通底しているようです。
私はこの漫画を読んだことがありませんが、2030年のAI完全監視社会の中心にあるパランテイア(Palantir)を率いるピーター・ティール(自らが支援しているバンス副大統領を次の大統領として考えている、バンスが当初イラン侵攻に反対していたというナレーションも次の大統領選挙のため)が「ワンピース論」として言及している記事を読み、興味を持ちました。
ティールは、世界政府の支配者イムを反キリスト的権力として位置付ける一方で、ルフィをキリストに対応する人物として読んでいるようです。
ピーター・ティールは、単なる億万長者のテック投資家として語るには、あまりにも大きすぎる存在になっています。PayPalの共同創業者(マスクらとともにペイパル・マフィアと呼ばれている)であり、監視と分析の巨大企業パランテイアの共同創業者でもある彼は、終末論の語彙を使い、歴史の終わり、反キリスト、抑止者、救済といった宗教的な概念を、現代の地政学やテクノロジーの文脈へ持ち込みます。
いわば、半導体と聖書を同じ机の上に広げ、その両方を見比べながら世界を語ろうとします。これは一見すると壮大で知的な試みに見えますが、神学が政策の衣装を着て、企業戦略が預言者の声色をまとうとき、非常に危険な「時代を動かす思想」になります。
キリスト教における反キリストとは、神に敵対する力の象徴ですが、ティールはこの概念をひっくり返し、「進歩を止める者」「無限の技術発展に歯止めをかける者」こそが、現代の反キリストなのだと主張しています。
ティールにとっては、戦争は技術と資本と思想が結託したときに生まれるものです。イラン侵攻も勝った負けたの枠組みを超えた一種の高収益プロジェクトであり、一握りの「創設者」や「主権的個人」だけがそれを決定できるというテクノクラシー(超優生思想)を体現したものとなっています。
彼にとっては、戦争が商品で、混乱が原材料で、終末論が販促コピーのようなものです。これは、「終末ビジネス」と呼べるべきものです。
ワンピースは世界支配・反キリスト・終末論という彼自身の巨大なモチーフを物語に埋め込んでいるため言及したのでしょう。

ティールのような現代の一部のテック・エリートは、自分たちを単なる企業家ではなく、歴史の危機に立ち向かう“選ばれた設計者”として物語化しているにすぎません。実はピーター・ティールこそが強力な「反キリスト」なのです。
参考文献
『The Prophet of the Profitable Apocalypse: Peter Thiel and the Antichrist』Margherita Furlan , March 28, 2026
『ピーター・ティールのワンピース論』文藝春秋プラス、2026/01/08

















