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◆パレオ協会ニュースレター◆   『黒死病(ペスト)の真実』〜その3 』

 

◆パレオ協会ニュースレター◆  

黒死病(ペスト)の真実』〜その3

黒死病の後、労働者不足が深刻化し、中世の農奴制は事実上終焉を迎え、その結果、賃金は劇的に改善される一方で、食料、商品、住居の価格は下落しています(Bailey M (1996) T. S. Ashton Prize: Joint Winning Essay. Demographic Decline in Late Medieval England: Some Thoughts on Recent Research. Econ Hist Rev 49: 1–19.)。

実質賃金は19世紀まで超えられなかった水準まで上昇し、あらゆる社会的地位の人々の住居と食生活の改善が認められました(Poos LR (1991) A rural society after the Black Death: Essex, 1350–1525. Cambridge: Cambridge University Press.)(Stone DJ (2006) The consumption of field crops in late medieval England. In: Woolgar CM, Serjeantson D, Waldron T, editors. Food in medieval England: diet and nutrition. Oxford Oxford University Press. pp. 11–26. )(Dyer C (2002) Making a living in the middle ages: the people of Britain 850-1520. New Haven, CT: Yale University Press. )(Hatcher J (1977) Plague, population, and the English economy, 1348–1530. London: Macmillan.)( Postan M (1950) Some Economic Evidence of Declining Population in the Later Middle Ages1. Econ Hist Rev 2: 221–246.)。

実際に黒死病の後、一人当たりの食費は増加し、人々は比較的高品質の小麦パン、肉、魚をより多く食べるようになり、その多くは流行前に一般的であった塩漬けではなく、新鮮なまま消費されるようになっています(Dyer C (2005) An Age of Transition?: Economy and Society in England in the Later Middle Ages. Oxford: Oxford University Press, UK. ) 。

黒死病前後の死亡時年齢分布は、黒死病後の方が高齢者の割合が高いことから、黒死病後に生存率が向上したことが指摘されています。これはKaplan-Meier生存分析方によっても確認され、黒死病後の標本の生存関数はより高いことが明らかになっています。一般人口が黒死病以前の状況に比べて、少なくとも200年間死亡率と生存率が全体的に改善しています(Setting the stage for medieval plague: Pre-black death trends in survival and mortality. Am J Phys Anthropol. 2015 Nov;158(3):441-51.)

この食習慣に代表される生活環境・衛生の向上が、中世の黒死病(1347年頃〜1351年)以降の中世から近世にかけてのその後のペストの流行で死亡率が低いままであった理由と考えられます・・・・・・・・・・

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