皆さんは、「壊血病(かいけつびょう)」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?
中世の大航海時代に、数カ月以上の長期間航海で発症する貧血や出血性障害でこの名前が付けられました。
みかん、レモン汁を摂取すると、この症状が消えたというエピソードから、ビタミンC不足がその原因と考えられています。
ところが・・・・・・
ビタミンC源となる柑橘類などを入手することができないエスキモーには、壊血病は発症しません。
なぜでしょうか?
以前からお伝えしているように、フレッシュな肉類には十分なビタミンC(dehydroascorbic acid.)が含まれています(Science. 1920 Mar 12;51(1315):273-5)。
長期保存ではビタミンCの量は著明に低下しますが、それでも完全になくなる訳ではありません。
ところで、大航海時代には何を船員たちは食べていたのでしょうか?
やはり、長期保存の効く穀物が中心になっています。
この長期保存の穀物の最大の問題は、以前お伝えしたカビ毒です。
特に「トリコテセン(trichothecenes)」と呼ばれるカビ毒は、皮膚感染、貧血、粘膜出血を引き起こすため、壊血病(あるいはジフテリア)と誤診されやすいことが報告されています(Clin Microbiol Rev. 2003 Jul; 16(3): 497–516)。
おそらく大航海時代に流行した壊血病様の症状は、柑橘系の摂取で改善しないケースもあったのは、その原因が単なるビタミンC欠乏だけでなく、船内および穀物のカビ毒が大きな要因であったと思います。
もちろん、保存の効く食品ばかりで全体の栄養素不足が最大の原因だったのは間違いありません。