『腸内細菌に「善玉菌」「悪玉菌」もない』
私たちは長年、腸内細菌を「善玉菌」と「悪玉菌」に分類し、善玉菌を増やすことが健康につながると信じこまされてきました。プロバイオティクスやヨーグルトなどの発酵食品が健康食品として推奨され、腸内フローラのバランスを整えることが重要だと教えられてきました。

しかし、これは支配層が流布する「二元論」が医学において展開された典型例として捉える必要があります。
⭐️すべての腸内細菌は炎症性物質を放出する
実は、腸内細菌には本質的に「善玉」も「悪玉」もありません。なぜなら、すべての腸内細菌は何らかの形で炎症性物質を産生するからです。
グラム陰性菌は細胞壁の構成成分としてリポポリサッカライド、いわゆるエンドトキシン(内毒素)を持っています(1)。このエンドトキシンは細菌の外膜の一部であり、細菌が死滅したり増殖したりする際に放出されます(2)。2011年の研究では、血液中のエンドトキシン活性が、脂質異常症、インスリン抵抗性、肥満、そして慢性炎症と密接に関連していることが示されました(3)。
一方、いわゆる「善玉菌」として知られる乳酸菌やビフィズス菌などのグラム陽性菌も、リポテイコ酸(lipoteichoic acid)という炎症性物質を放出します。2008年の研究では、リポテイコ酸が自然免疫応答において重要な役割を果たし、炎症反応を誘導することが確認されています(4)。さらに、2008年の別の研究では、リポテイコ酸が肺の炎症を引き起こすことが人間を対象とした実験で実証されました(5)。
これは、私たちが「体に良い」と信じてきた善玉菌も含め腸内細菌は、実際には潜在的に炎症を引き起こす物質を産生しているということを意味します。
⭐️エンドトキシンとは何か
エンドトキシン(内毒素)は、主に腸内の細菌(グラム陰性菌)によって産生される物質で、ミトコンドリアでのエネルギー産生(=糖の完全燃焼)を阻害し、過剰な炎症を促進します(6)。

エンドトキシンは、健康な人の血液中にも低濃度で常に循環していますが、その濃度が上昇すると炎症が引き起こされ、慢性疾患の発症につながります(7)。2019年の研究では、肝細胞がんが腸からのエンドトキシンが肝臓に流入して炎症を引き起こすことで発生することが証明されました。
興味深いことに、この研究では「善玉腸内細菌からもエンドトキシンが放出される」と明記されており、抗生物質を投与して腸内細菌全体を減少させると、肝細胞がんが著明に減少したと報告されています(8)。
⭐️腸内細菌過剰がもたらす健康への悪影響
小腸内細菌異常増殖症(SIBO: Small Intestinal Bacterial Overgrowth)は、通常は無菌状態あるいは細菌数が少ない小腸で細菌が過剰に増殖した状態を指します。2010年の包括的レビューでは、SIBOが栄養吸収障害、腹部膨満、下痢などの症状を引き起こすことが詳しく説明されています(9)。
腸内細菌が過剰になると、腸管バリアの機能が低下し、エンドトキシンなどの細菌由来の毒素が血流に入り込みやすくなります。この現象は「細菌トランスロケーション」と呼ばれ、2020年の研究では、腸管透過性の亢進(いわゆるリーキーガット)と細菌トランスロケーションが慢性疾患の発症と密接に関連していることが示されました(10)。2016年の研究では、腸管バリアの機能障害により、エンドトキシンが血液中に移行し、全身性の炎症反応を引き起こすことが確認されています(11)。
腸内での食物の発酵が不良な消化、刺激、または細菌の過剰増殖によって起こるとき、エンドトキシンが上昇します。現代人に多いストレス過多や基礎代謝低下による低体温症は、小腸からのエンドトキシンの吸収増加を伴い、ミトコンドリア呼吸の障害、糖から脂肪燃焼へのシフト(メタボリック・スイッチ「エネルギー産生の燃料が糖から脂肪へスイッチする」」)、炎症、そして広範囲のストレスホルモンの増加につながります(12)。

⭐️慢性病とエンドトキシンの関係
エンドトキシンは、ガンだけでなく、糖尿病などのメタボリック症候群、アトピー性皮膚炎、リウマチ、うつ病などの精神疾患を含むあらゆる慢性病に関与しています。2020年のレビュー論文では、エンドトキシン血症が全身性の炎症を引き起こし、さまざまな介入によってこれを抑制できる可能性が議論されています(13)。
2023年の研究では、腸管透過性の亢進(リーキーガット)と細菌トランスロケーションが線維筋痛症や慢性疲労症候群と関連していることが示され、腸管バリアの喪失が慢性疾患の共存に寄与している可能性が指摘されています(14)。

また、2020年の研究では、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)において、小腸内細菌異常増殖とエンドトキシン血症の関係が調査され、腸管由来のエンドトキシンが肝臓の炎症を引き起こすメカニズムが詳しく解説されています(15)。
エンドトキシンは直接的にミトコンドリアのエネルギー産生(糖の完全燃焼。糖のエネルギー代謝)を阻害します。2011年の研究によると、細菌エンドトキシンの注入が全身性の炎症を誘導し、それがインスリン抵抗性や脂質異常症と伴って現れることが実証されています(3)。エンドトキシンはこのように抗ミトコンドリア作用を持ち、エストロゲンの上昇およびプーファと相乗作用します(16)。
⭐️「善玉菌」という概念の再考
従来、ビフィズス菌や乳酸菌などは「善玉菌」として推奨され、プロバイオティクス製品が広く販売されてきました。しかし、「糖のエネルギー代謝」という生命の本質から見ると、腸内に善玉も悪玉もないありません。
乳酸菌は特に注意が必要で、それは私たちにとってエンドトキシンと乳酸のダブルパンチをもたらすからです。乳酸は解糖系の最終産物であり、ミトコンドリアでの効率的なエネルギー産生を妨げます。
、グラム陽性菌とグラム陰性菌のプロバイオティクス細菌が何らかの形で白血球を過剰興奮させて、炎症のスイッチを過剰にオンにします(17) (18)。
腸内細菌を増殖させるような食事がラットに与えられたとき、彼らは不安や攻撃性などの行動変化も確認されています。つまり、腸内での細菌増殖そのものが、行動や精神状態にまで影響を及ぼす可能性があるのです(19)。
⭐️新しいパラダイムへ
私たちは、「善玉菌を増やせば健康になる」という単純な図式から脱却する必要があります。すべての腸内細菌は、グラム陰性菌であれグラム陽性菌であれ、何らかの炎症性物質を産生します。重要なのは、腸内細菌の「バランス」ではなく、腸内細菌の「総量」を適切に管理し、特に小腸での細菌の過剰増殖を防ぐことです。
消化を良くし、腸の通過時間を速め、腸管バリアの機能を維持することが、エンドトキシンの吸収を最小限に抑え、全身性の炎症を防ぐ鍵となります。そして、効率的なエネルギー代謝を支える栄養素、適切な甲状腺機能、そして抗炎症作用のある飽和脂肪酸の摂取が、私たちの健康を守るために重要な役割を果たすのです。

従来の常識にとらわれず、エネルギー代謝という生命の本質に立ち返ることで、慢性病のない健やかな人生を送ることができるでしょう。従来の腸内細菌に対する見解を再検討し、新しいパラダイムで健康を考える時代が来ているのです。
参考文献
- Bacterial endotoxin-lipopolysaccharide role in inflammatory diseases. PMC, 2024, 12258786
- Endotoxin Producers Overgrowing in Human Gut Microbiota as the Causative Agents for Nonalcoholic Fatty Liver Disease. mBio, 2020, 11(1), e03263-19
- Lassenius MI, Pietiläinen KH, Kaartinen K, et al. Bacterial endotoxin activity in human serum is associated with dyslipidemia, insulin resistance, obesity, and chronic inflammation. Diabetes Care, 2011, 34(8), 1809-1815
- Seo HS, Michalek SM, Nahm MH. Lipoteichoic acid is important in innate immune responses to gram-positive bacteria. Infection and Immunity, 2008, 76(1), 206-213
- Hoogerwerf JJ, De Vos AF, Bresser P, et al. Lung inflammation induced by lipoteichoic acid or lipopolysaccharide in humans. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 2008, 178(1), 34-41
- Functional Performance Systems. Ray Peat, PhD on Endotoxin. 2012年11月29日
- The Importance of Food for Endotoxemia and an Inflammatory Response: A Narrative Review. PMC, 2021, 8431640
- eLIFE, 2019年4月16日 (崎谷博征医師ブログより引用)
- Bures J, Cyrany J, Kohoutova D, et al. Small intestinal bacterial overgrowth syndrome. World Journal of Gastroenterology, 2010, 16(24), 2978-2990
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- Fukui H. Increased intestinal permeability and decreased barrier function: does it really influence the risk of inflammation? Inflammatory Intestinal Diseases, 2016, 1(3), 135-145
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- Role of Metabolic Endotoxemia in Systemic Inflammation and Potential Interventions. Frontiers in Immunology, 2020, 11, 594150
- Martín F, Blanco-Suárez M, Zambrano P, et al. Increased gut permeability and bacterial translocation are associated with fibromyalgia and myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome. Frontiers in Immunology, 2023, 14, 1253121
- Augustyn M, Grys I, Kukla M. Small intestinal bacterial overgrowth and nonalcoholic fatty liver disease. Clinical and Experimental Hepatology, 2019, 5(1), 1-10
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- Cross ML, Ganner A, Teilab D, et al. Patterns of cytokine induction by gram-positive and gram-negative probiotic bacteria. FEMS Immunology & Medical Microbiology, 2004, 42(2), 173-180
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- Hanstock TL, et al. Diet and anxiety: a narrative review. 2003-2004 (Functional Performance Systemsより引用)

















