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『走れば走るほど体調が悪くなる理由』

 

『走れば走るほど体調が悪くなる理由』

マラソンが赤血球を傷つけ、老化を加速させるという衝撃の事実

メインストリームの医学は、ここ数十年にわたって「運動は多ければ多いほど良い」という福音を説き続けてきました。フルマラソン、ウルトラマラソン、トライアスロン ― これらは人間の健康と達成感の頂点であるかのように祭り上げられ、完走メダルはまるで「健康の勲章」のごとく語られています。

 

 

 

2026年に米国血液学会の機関誌「Blood Cells & Iron」に掲載された研究論文は、この風潮に一考を促しています[1]。研究者たちは、ウルトラマラソンが赤血球を物理的にも分子レベルでも損傷させ、その柔軟性を奪い、まるで老朽化した船のごとく「壊れやすい状態」へと変質させてしまうことを明らかにしました。距離が長くなればなるほど、その損傷は深刻化していきます。

 

 

⭐️赤血球という「酸素配達人」が悲鳴をあげるとき

研究チームは、40キロメートル(25マイル)のレースと、171キロメートル(106マイル)のウルトラマラソンに参加したランナーから、レース前後の血液サンプルを採取し、その変化を綿密に分析いたしました[1]。その結果、赤血球には二重の災難が降りかかっていたことが判明しました。一つは、激しい血流と足の着地による物理的な衝撃 ― いわば「機械的ストレス」によるダメージであり、もう一つは、炎症と酸化ストレスに起因する分子レベルの損傷です。

 

 

 

赤血球というのは、いわば全身の細胞に酸素を届けて回る「配達トラック」のような存在です。しかも、その配達ルートには毛細血管という、赤血球の直径よりも細い結果が無数に存在しています。したがって、赤血球は柔らかく、しなやかに変形できなければ、毛細血管を通過することができません。

 

 

 

マラソン後の赤血球は、深刻なダメージを受けて、柔軟性を失っており、毛細血管を通過することができなくなっていました。つまり、私たちの隅々まで酸素を届けることが不可能になっていたのです。

 

 

 

40キロのレースでもすでに「老化の加速」と「赤血球の崩壊増加」の兆候は明確に観察され、171キロのウルトラマラソンを完走したアスリートでは、その傾向がさらに顕著であったと報告されています[1]。

 

 

 

足の着地によって赤血球が物理的に破壊される現象は「フットストライク溶血」と呼ばれ、半世紀以上前から知られています。2001年の研究では、ランニング中の溶血の主因が、まさにこの足裏での衝撃であることが実証されています[2]。最近のレビュー論文(2024年)でも、長距離ランナーにおける貧血の隠れた原因として、このフットストライク溶血が改めて注目されています[3]。

 

 

⭐️「クリーンな燃料」と「煤を吐く燃料」二種類のエンジンの話

私たちの身体には二種類の燃料系統が備わっています。一つは「ブドウ糖(グルコース)」を燃やす系統、もう一つは、低血糖になったときに「脂肪酸」を燃やす緊急時のバックアップの系統です。

 

 

 

通常の身体活動では、主としてブドウ糖(グルコース)を燃料とします。これは、いわば「ハイオクガソリンを燃やす最新のハイブリッド車」のような状態で、燃焼効率が高く、排気ガス(活性酸素種、ROS)が少なく、ミトコンドリアの機能と基礎代謝を高めてくれます。

 

 

 

ところが、何時間にもわたって走り続けるマラソンやウルトラマラソンになると、ブドウ糖のストックであるグリコーゲンの貯蔵は早々に枯渇し、身体は否応なく緊急時の脂肪酸の燃焼へと切り替わります。これは「煤を大量に吐き出すディーゼル機関車」を全速力で走らせるようなものです。発生する活性酸素種は、ブドウ糖(グルコース)酸化の場合よりも遥かに多くなります。

 

 

 

2001年の研究では、超持久運動がプーファの脂質過酸化を引き起こし、ビタミンEの消耗を伴うことが既に示されています[4]。2016年のレビュー論文では、超持久運動における活性酸素産生と酸化ストレスは、運動の負荷量に比例して直線的かつ直接的に増加することが確認されています[5] [6]。

 

 

 

これに加えて、長時間運動はコルチゾールとアドレナリンというストレスホルモンを天井知らずに押し上げ、筋肉タンパクの分解、免疫抑制、脂質過酸化といった長期の糖質制限、マンジャロなどの「痩せ薬」の摂取や断食と同じ現象を引き起こします。2025年のレビュー論文では、ウルトラマラソンが顕著な炎症反応 ― 特にインターロイキン6(IL-6)とC反応性タンパク(CRP)の劇的上昇 ― を引き起こすことが詳細に報告されています[7]。

 

 

マラソンの生理病理を扱った2025年のナラティブレビューでも、マラソンが急性炎症反応と一過性の免疫抑制を伴い、ランナーを感染症と呼ばれる免疫抑制という脆弱な状態に追い込むことが指摘されています[8]。

 

 

 

⭐️心臓という「主機関」も無傷では済まない

被害は赤血球だけにとどまりません。長距離ランニングの「沈むタイタニック号」とも言うべき側面は、心臓そのものにも及んでいます。2025年に発表されたシステマティックレビューでは、マラソンランナーにおける左心房の拡大、心房細動リスクの上昇、そして心筋線維化マーカーの増加が、29件の研究にわたって一貫して観察されていることが報告されております[9]。2016年のレビューでも、マラソンのような激しい持久運動が、それ以外は健康な若年・中年成人において発作性心房細動のリスクを高めることが明示されておりました[10]。

 

 

 

運動量と心血管疾患罹患率の関係について、「U字型ないし逆J字型」の曲線の関係が繰り返し指摘されています。すなわち、運動はある一定量までは明らかな有害事象は発生しませんが、それを超えるとむしろ運動が有害になることが指摘されています [11] [12]。

 

 

⭐️辛いことの後の爽快感ではなく、いつも快適を

何時間にもわたって脂肪酸酸化(脂肪の燃焼)に依存するような過酷な持久イベントは、避けるに越したことはありません。長時間の苦行のあとは、ストレスがマックスになり、一時的にドーパミンが放出されるため、爽快感を得ることができます。しかし、この爽快感は赤血球だけでなく、身体を確実に破壊させていきます。

 

 

 

そうではなく、いつも快適な身体活動をすること。グルコース酸化を促進する緩やかな身体活動が赤血球だけでなく、私たちの心身の健康を向上させます。

 

 

「健康のために走る」というスローガンが、実は「老化を加速させるために走る」ことになっているという皮肉 ― マラソンやトライアスロンなどを喧伝するスポーツ業界に踊らされることなく、いつも快適な身体活動を心がけましょう。

参考文献

[1] Long-distance trail running induces inflammation-associated protein alterations and accelerated aging in red blood cells. Blood Cells & Iron 2026, 2(2), 100055.

[2] Footstrike is the major cause of hemolysis during running. Journal of Applied Physiology 2003, 94(1), 38-42.

[3] Foot-strike Hemolysis: A Scoping Review of Long-Distance Runners. International Journal of Sports Physical Therapy 2024, 19(12), 1538-1551.

[4] Oxidative stress in athletes during extreme endurance exercise. Free Radical Biology and Medicine 2001, 31(7), 911-922.

[5] Oxidative Stress Assessment in Response to Ultraendurance Exercise. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2016, 2016, 6105601.

[6] Redox Mechanism of Reactive Oxygen Species in Exercise. Frontiers in Physiology 2016, 7, 486.

[7] Inflammatory Response to Ultramarathon Running: A Review of IL-6, CRP, and Related Biomarkers. International Journal of Molecular Sciences 2025, 26(13), 6317.

[8] Physiology and Pathophysiology of Marathon Running: A narrative review. Sports Medicine – Open 2025, 11(1), 25.

[9] Atrial Fibrillation Markers in Marathon Versus Ultramarathon Athletes: A Systematic Review. Journal of Cardiovascular Development and Disease 2025, 12(7), 260.

[10] Pathophysiology of atrial fibrillation in endurance athletes: an opportunity for modifiable risk reduction? European Heart Journal 2016, 37(31), 2399-2401.

[11] The “Extreme Exercise Hypothesis”: Recent Findings and Cardiovascular Health Implications. Current Treatment Options in Cardiovascular Medicine 2018, 20(10), 84.

[12] Dose of Jogging and Long-Term Mortality: The Copenhagen City Heart Study. Journal of the American College of Cardiology 2015, 65(5), 411-419.

 

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