日本で最も食べられている果物。
それがバナナです。
その消費量の99.9%が輸入品、特にフィリピンからの輸入が大半を占めています。
現在、日本では1本1000~2000円の高級バナナが話題を呼んでいます。
この高級バナナは、宮崎県産で、無農薬で皮ごと食べられると言います。
また、賞味期限が20分のバナナジュースなどもマーケティングされています。。。。。
しかし・・・・・・
日本で流通しているバナナは、やはりほとんどが輸入物です。
今年に入って、スミフル(旧称:住商フルーツ)がフィリピンでの労働争議に関連して、バナナ事業から撤退することが発表されています。
バナナに使用する農薬や様々な化学物質によって、健康被害が出たことや低賃金労働に反対運動が起こったからです。
バナナは青いうちに刈り取って、ちょうど輸出国で熟するように、化学物質を使って人工的に熟させます(他の果物や野菜でも行われている)。
さて、バナナ、桃、りんご、ナシ、メロン、マンゴー、アボカドやトマトなどは、置いておくほど甘さが増す果物は「クリマクテリック型果実(climacteric fruits)」と呼ばれています。
これらは、時間経過とともにエチレンガス(ethylene gas)を急激に放出することで、熟する果物、野菜です。
それでは人工的に果物や野菜を完熟させるには、どのような方法を使用しているのでしょうか?
人工的なバナナなどの果物の熟成(artificial ripening)には、以下のような化学物質が使用されています(Int J Food Sci. 2019; 2019: 2520179)。
・エチレンガス(ethylene gas)
・炭化カルシウム(Calcium carbide)
・エテフォン(Ethephon、エチレン放出物質)
・ケロシン、灯油(Kerosene)
・アリキルアルコール(alkyl alcohols)
このうち上から3つは、自然の完熟で放出されるエチレンガス(あるいはアセチレンガス)を人工的にふりかけるものです。
あとはまだ青いバナナを倉庫に詰めて、灯油を燃やして発生させた煙(soot=エストロゲン)で熟させる方法も伝統的に行われています。
このうち、最も安価なアルカリ剤である炭化カルシウム(Calcium carbide)を使ってバナナなどの果物を完熟させる方法は、以前よりその危険性が指摘されていました。
この炭化カルシウムは水と反応し、エチレンガスと同じ作用を持つアセチレンガスを発生させます。
しかし、炭化カルシウム自体にヒ素やリン酸が混入しているのです。
ガスそのもの、そしてヒ素やリン酸の曝露によって、労働者に頭痛、めまい、認知機能障害、痙攣や腹痛・嘔吐などの腹部症状が引き起こされます(Annals of Tropical Medicine and Public Health 5(3):150 ·January 2012 )。
これはフィリピンでの労働争議が起こったきっかけとなる健康被害と同じ症状です。
炭化カルシウムは、それ自体が立派な発がん物質ですので、人工完熟果物に残留している場合は、それを食べた人にももちろん悪影響が出ます。
実際に妊婦が炭化カルシウムで完熟させたバナナを食べると、子供に奇形が生じます(Journal of Food Science and Engineering 2 (2012))。
最新の研究でも、この炭化カルシウムによって人工完熟させたフルーツを食べると、強いエストロゲン作用を示すことが報告されました(Heliyon 5(9):e02397 · September 2019)。
ヒトも思春期でエストロゲンが過剰に産生されることで、成人へと熟していきます。
同じくフルーツや野菜もエストロゲン作用物質で完熟していくのを見ると、生命の仕組みがよく分かりますね。
さらに他の人工完熟ケミカルでも、心臓血管疾患、皮膚病、呼吸器障害、腎不全などが起こることが分かっています(Journal of Food Agriculture and Environment 10(2):247-251 · April 2012)。
日本で一番消費量の多いバナナは、皮が薄いため、これらの人工完熟ケミカルや農薬の残存の影響が大きい果物です。
これが、私が大半を輸入に頼っているバナナを果物の中で推奨しない大きな理由なのです。
ちなみに人工完熟ものは、やはり見た目が均一の色で綺麗ですので、自然の完熟とは見分けがつくものがあります(^_−)−☆。