地質学とガンの研究の交差点ともいえる大変興味深い研究が報告されました(Nature Ecology & Evolution 2, 220–228 (2018))。
地質学では、私たちのような多細胞生物はカンブリア紀とよばれる約5億年前に出現したと推測されています。この時期に爆発的にさまざまな多細胞生物が出現したことから、カンブリア爆発と呼ばれています。
従来はカンブリア紀に酸素濃度が高まったことから、多細胞生物が出現したとされていました。しかし、現在ではカンブリア紀前後にも酸素濃度が高まっていることから、多細胞生物の出現と酸素濃度の高まりとの関係は疑問視されています。
今回の研究論文を発表した地質学者がガンの研究に目を付けました。ガンは酸素があるなしに関わらず発酵(解糖系)します(これをワーバーグ効果といいました)。通常は酸素があれば、ミトコンドリアで糖の完全燃焼を行うのですが、ガン細胞は発酵を選ぶのです。
このガン細胞とよく似た細胞に幹細胞(かんさいぼう)があります。
幹細胞は、私たち多細胞生物にはなくてはならない細胞です。細胞の一部にダメージを受けた場合は、幹細胞がやってきてそのダメージを受けた部分の細胞を埋めます(再生)。
この幹細胞をたくさん持っておくことが多細胞生物の必須条件として考えたのです。
そして幹細胞を未熟細胞のまま体内に抱えるためには、低酸素の状態が必要です(酸素に触れると成熟細胞になる)。実際に低酸素の環境になくても、低酸素と同じ代謝(これがガンの代謝です)にしておくメカニズムがカンブリア紀に獲得できたために、幹細胞をスペアとして体内にもつことができたことが、多細胞生物への扉を開いたという推測です。
この低酸素の代謝というのは、まさしくガンの代謝であり、多細胞生物はガンの代謝メカニズムを獲得することで誕生したということです。
ということは、多細胞生物は誕生のときから、組織を再生する幹細胞を持つと同時にガン組織を形成する能力が高いということです。
たしかに植物より動物、そして無脊椎動物より脊椎動物の方がはるかにガンに罹る率は高くなっています。
私たちはその成り立ちからガンを形成しやすいのですから、そのガンを異物として捉えるという発想は大変危険であるだけでなく、さらにガンを増殖させる結果を招くのは当然ですね。
ガンができるのは多細胞生物である証拠。しかし、ガン形成は可逆的な“過程”です(これがガン安心療法の要点です)。
今回の地質学の研究のように、もはやサイエンスには垣根がなく(ノーサイエンシーズ)、総合的な学問としての新しいパラダイムが必要と痛感する日々です。
そのひとつの試みとして「エネルギ―量子医学会」を立ち上げていきますので、たくさんの方にご参加頂き、みなさん一緒に学びを深めていければと思っています。