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『ガソリンスタンドの臭いとドライシャンプー:毒性物質シリーズ』

子供の頃は、ガソリンスタンドの臭いに惹きつけられることがありました。

後に、この臭いの主体が発ガン物質だと知って愕然としました。

 

さて、水やお湯を使わずに頭皮のにおいを抑え、髪を清潔に保てるドライシャンプーなるものがマーケットに出回っています。

ニオイや皮脂のベタつきを抑えるという売り文言で、病院、介護施設、アウトドア・機内・運動後なでで使用されています。

 

このドライシャンプーが発がん物質を放出していることが問題視され、ユニリーバーなどの販売会社がリコールに踏み切ったことが話題となっています(『Unilever recalls dry shampoos because of potentially high levels of benzene』 NBC News, October 25, 2022)。

その発がん物質とは、「ベンゼン(Benzene)」。

ガソリンスタンドに臭いの主体もこのベンゼンです。

 

ベンゼンは特に白血病、骨髄異形成(myelodysplastic syndromes (MDS))などの血液系の癌を引き起こすことが報告されていますが、国際ガン研究機関(IARC)でも「ヒトに明確にガンを発生させる」グループ1に分類されている物質です(Exposure of Hematopoietic Stem Cells to Benzene or 1,4-Benzoquinone Induces Gender-Specific Gene Expression. Stem Cells. 2004;22:750–758)(IARC-International Agency for Research on Cancer . IARC Monographs on the Carcinogenicity of Chemicals to Humans. IARC; Lyon, France: 1987. Summaries & Evaluations: Benzene (Group 1) Supplement 7)。

 

ベンゼンは、肝臓で代謝されて一部はフェノールに変換されます(The role of metabolism and specific metabolites in benzene-induced toxicity: Evidence and issues. J. Toxicol. Environ. Health. 2000;61:357–372)。

 

ベンゼンはエストロゲン作用を発揮するフェノール類の元になる物質です(New Look at BTEX: Are Ambient Levels a Problem? Environ. Sci. Technol. 2015;49:5261–5276)。

 

したがって、ベンゼンは、ガンの発生だけでなく、糖尿病、心臓血管疾患のリスクを高めます(Association between Heavy Metals, Bisphenol A, Volatile Organic Compounds and Phthalates and Metabolic Syndrome. J. Environ. Res. Public Health. 2019;16:671)(Association of benzene exposure with insulin resistance, SOD, and MDA as markers of oxidative stress in children and adolescents. Environ. Sci. Pollut. Res. Int. 2018;25:34046–34052)(Urinary benzene metabolite and insulin resistance in elderly adults. Sci. Total Environ. 2014;482:260–268)(Ambient Volatile Organic Compounds and Racial/Ethnic Disparities in Gestational Diabetes Mellitus: Are Asian/Pacific Islander Women at Greater Risk? Am. J. Epidemiol. 2019;188:389–397)(Traffic-related air pollution and incident type 2 diabetes: Results from the SALIA cohort study. Environ. Health Perspect. 2010;118:1273–1279)。

 

この多岐にわたるベンゼンの悪影響は、代謝産物のエストロゲン作用だけではありません。

 

ベンゼンそのものが、「メタボリック・スイッチ(糖のエネルギー代謝→脂肪のエネルギー代謝)」を引き起こし、プーファの脂質過酸化反応を高めることで慢性病を誘発します(Exposure to benzene induces oxidative stress, alters the immune response and expression of p53 in gasoline filling workers. Am J Ind Med. 2010 Dec;53(12):1264-70)(Benzene Exposure Alters Expression of Enzymes Involved in Fatty Acid β-Oxidation in Male C3H/He Mice. Int J Environ Res Public Health. 2016 Nov; 13(11): 1068)。

 

ドライシャンプーでは、頭皮から出る皮脂(現代人はプーファ)や毛髪や頭皮に付着した環境中の汚染物質は、洗い流さないために頭皮に蓄積していくはずです。

 

しかも発ガン物質のベンゼンが頭皮から吸収されるリスクを考えるとリコールとなって当然でしょう。

 

現代社会の便利さ・利便性の追求の背後には、代償不可能なもっと大きな犠牲があるものです(^_−)−☆。

 

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