『「日の丸タンカー」はなぜ帰還しなかったのか?』
⭐️真夜中の海峡を駆け抜けた一隻:歓喜から一転、奇妙な進路変更
二〇二六年四月二十八日、ホルムズ海峡を一隻の巨大タンカーが堂々と通過したというニュースが流れました。船名は「出光丸(IDEMITSU MARU)」、サウジアラビア産原油約二百万バレルを積み、目指すは日本の名古屋港。米イラン戦争勃発以降、日本に向かった日本関連タンカーとしては第一号という快挙であり、私たち日本人にとっては「よくぞやってくれた」と拍手喝采したくなる出来事でした[1][2]。
それに対して高市氏は顔をひきつらせながらも自分の功績のように談話で語っていました。この顔をみたときに強い違和感を覚えました。
そして・・・・・・・・
順風満帆でアラビア海を巡行していたはずの出光丸は、突如として目的地をスリランカの「ゴール(Galle)」という人口十万人ほどの小さな港町に変更し、速度も五月一日の時点で九・三ノットまで半減させました[3]。
ゴールという町は、原油の積み下ろし設備すらない小さな漁村のような港で、二百万バレルの巨大タンカーが立ち寄る合理的理由は、船員の交代や食料の積み込みくらいしか考えられません。しかも船員がそこから日本に帰るとなれば、列車でコロンボまで出て、さらに飛行機を乗り継ぐという、まるで遠回りの巡礼のような行程が必要になるのです[3]。これは、原油を日本に入れないように指示されたと解釈するのが論理的です。

⭐️七十三年前の「日章丸事件」と現在の出光丸の不思議な符合
ここで時計の針を一気に七十三年前まで戻してみます。一九五三年、日本の出光興産が所有するタンカー「日章丸(Nissho Maru)」が、英国海軍の海上封鎖をくぐり抜けてイランのアバダン港に乗り込み、原油を満載して日本に持ち帰るという、まさに大冒険のような事件がありました。これが世に言う「日章丸事件」です[4]。当時のイランでは、新たに首相となったモハンマド・モサデク(Mohammad Mosaddegh)が英国系石油権益を国有化したことに対し、英国海軍がペルシャ湾を封鎖するという強硬手段に出ていました。英国が米国に変わっただけで、現在と同じ状況です。
米占領軍が引き上げた直後の日本では、米国の石油メジャーが日本市場の支配を維持するためにガソリン供給を絞り、出光興産は経営の崖っぷちに追い込まれていました。創業者である出光佐三氏は、まさに窮鼠猫を噛む勢いで、英国の封鎖に挑む覚悟を決めたのです[2][4]。
二〇二六年の出光丸が「日章丸の再来」のように扱われ、イラン側が日本に対して「特別な計らい」として通航料を免除した背景には、この七十三年前の物語があると報じられています[5][6]。在日イラン大使館もSNSで日章丸の故事を引き合いに出し、両国の友情を強調しました。
⭐️「拍手喝采」のはずが「なんてことしてくれたんだ」:政府の本音が透ける場面
ここで本題に戻ります。日本に向かっていたはずの出光丸が、なぜ目的地をスリランカに変えたのでしょうか。報道や航跡情報によれば、出光丸の積荷は「政府の原油調達目録」に載っていない、つまり政府が管理する公式の供給ラインに組み込まれていない原油である可能性が指摘されています[3]。
実際、この一件について自動車評論家の国沢氏らは、SNS上で「日の丸を上げて正々堂々ホルムズ海峡を通過した出光丸は、日本人からすれば拍手喝采だったものの、日本政府にとっちゃ『なんてことしてくれたんだ』だったのかもしれない」と率直に綴っています[3][8]。出光タンカーが運用する他の船舶(十和田など)や商船三井の八雲山も同時期に動いておらず、出光丸だけが孤立した形でスリランカへ向かった事実は、政府が他のタンカーには「待機」を命じている可能性を強く示唆しているのです。

⭐️「エネルギー危機をどうしても深刻化させろ」という命令
ここまでの事実を並べてみると、不思議な絵が浮かび上がってきます。第一に、日本には最大でも半年程度の石油備蓄しかない(実際に使用できるのは数ヶ月程度)。第二に、出光丸はホルムズ海峡を堂々と通過し、二百万バレルの原油を日本に運べる態勢にあった。第三に、にもかかわらず、その船は突如スリランカの小さな港へと迂回させられた。第四に、日常生活ではナフサ(肥料など)不足が深刻になっており、中小・零細企業が存亡の危機にさらされている。それがあらゆる物価上昇となって現実化している。
このように事実を並べると、現在の日本政府というのは、国民を犠牲にして権力者が意図的に引き起こしているエネルギー危機を演出していることが理解できるはずです。あらゆる物価が上昇している現代、私たち一人ひとりが政府の発表を鵜呑みにせず、その背後にある事実関係を冷静に確かめる目を持つことが、何よりも大切な防御策となります。
出光丸が日本に到着するのか、それともスリランカ沖で「瀬取り」されて全く別の場所に消えてしまうのか、その行方を見守ることは、エネルギー安全保障という名の下で進行している壮大なる演出劇の正体を読み解く、絶好の手がかりになるはずです。

七十三年前、出光佐三が英国海軍の包囲網を突破して日本にもたらした原油は、戦後日本の自立の象徴でした。今回のの出光丸が何をもたらすか――いや、何をもたらすことを日本政府が許さないか――ウエルネスラジオのニュースレター5月号でお伝えしたように、その答えのなかにこそ、私たち国民がいま最も直視すべき真実、つまり現政府の”正体”が眠っているのです。
参考文献
[1]Japan’s Idemitsu Maru allowed through Hormuz, history in tow. Asia Times. 2026 Apr. https://asiatimes.com/2026/04/japans-idemitsu-maru-allowed-through-hormuz-history-in-tow/
[2]Japanese Oil Tanker First Through Hormuz Since Iran War. Chosun Daily English. 2026 Apr 30. https://www.chosun.com/english/world-en/2026/04/30/2EPWVVCKYBCIJOY6LAFW2NCAYE/
[3]残念なニュースです。出光丸、目的地をスリランカに変更。速度半減。kunisawa.net. 2026 May. https://kunisawa.net/car/car_latest-information/
[4]Nissho Maru Incident. Wikipedia (Japanese). 日章丸事件. 2026. https://ja.wikipedia.org/wiki/日章丸事件
[5]出光、石油調達でイランと歴史的関係 ホルムズ通過、通航料支払わず. 時事通信. 2026 Apr 30. https://www.jiji.com/jc/article?k=2026043000952&g=eco
[6]Iranian Embassy in Tokyo’s Post Highlights Friendly Japan-Iran Relations. The Japan News (Yomiuri). 2026 May 1. https://japannews.yomiuri.co.jp/business/companies/20260501-325344/
[7]出光はなぜホルムズを通過できたか 濃密な関係づくりが分ける危機. 日本経済新聞. 2026 May. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD016110R00C26A5000000/
[8]73年前のホルムズ海峡通過、「日章丸事件」が残す教訓. Bloomberg Japan. 2026 Apr 2. https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-04-02/TCR063KK3NYJ00
[9]中東情勢を踏まえた石油及び関連製品等に関する対応. 経済産業省 資源エネルギー庁. 2026. https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/energysecurity/index.html
[10]How Japanese Companies Will Handle Middle East Risk. S&P Global Ratings. 2026. https://www.spglobal.com/ratings/en/regulatory/article/how-japanese-companies-will-handle-middle-east-risk-varies-across-sectors-s101675576
[11]Japan Oil Security Policy – Analysis. International Energy Agency (IEA). 2025. https://www.iea.org/articles/japan-oil-security-policy
[12]Kitamura T, Managi S. A comparative study of strategic petroleum reserve policies of major countries. Energy Policy. 2024;190:114148. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0301421524003823
[13]中東での紛争に起因する原油価格上昇が招くシナリオと考察. JapanNext. 2026. https://www.japannext.co.jp/jnxlab/finance-investment/RUkMC.html
[14]Bicchi F, Voltolini B. Energy security in EU-Mediterranean relations: a review. Mediterranean Politics. 2023;28(3):421-444.
[15]How Middle East Turmoil Reverberates Through Japan’s Energy System. Observer Research Foundation Middle East. 2026. https://orfme.org/expert-speak/how-middle-east-turmoil-reverberates-through-japans-energy-system/
[16]Jaffe AM, Elass J. The 1973 Oil Crisis: Three Crises in One—and the Lessons for Today. Columbia SIPA Center on Global Energy Policy. 2023. https://www.energypolicy.columbia.edu/publications/the-1973-oil-crisis-three-crises-in-one-and-the-lessons-for-today/

















