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『肥料に頼らない”自然栽培”という希望』

 

『肥料に頼らない自然栽培という希望』

 

⭐️食料自給率38%だった

農林水産省が発表する日本の食料自給率はカロリーベースで約38%。しかしこの数字には、巨大な落とし穴があります。現在、ホルムズ海峡封鎖や世界中のエネルギー施設破壊によって、肥料が日本に入ってきません。

 

 

 

東京大学特任・鈴木宣弘教授によると、「肥料が入らなければ収量が半減。その前提で計算し直すと、実質自給率はわずか22%しかない」と現実の数字を教えてくれています。

 

 

 

これは、実は”5食のうち1食しか自前では食べられない”という驚愕の現実なのです。

 

 

 

⭐️窒素肥料の正体は「天然ガス」

「肥料」と聞いて、ほとんどの人は土や鉱物を思い浮かべるでしょう。しかし、農業の三大要素のひとつ窒素肥料の原料は、なんと天然ガスです。天然ガスからアンモニアを作り、それを尿素などの窒素肥料に加工しています。この生産工程の世界的な中心地が、まさに中東です。

 

 

 

日本が直接輸入している量だけ見れば「中東依存は3〜4割」[5]。ここで日本国民を苦しめる現日本政府は「うちはマレーシアからたくさん買っているから大丈夫」と胸を張ります。しかし、これは国民の暴動を予防するための一種のプロパガンダです。

 

 

 

なぜなら中東という最初のドミノ(世界供給の約4割)が倒れれば、これまで中東から買っていた国々が一斉にマレーシアなどアジア市場に殺到します。すると、アジアの肥料価格も連鎖的に高騰します。ただでさえ、現在は円安の奈落に落ち込んでいます。当然、経済力の強い中国など他の国に日本は買い負けします。

 

 

 

⭐️価格はすでに5割上昇している

データが示す現実は厳しいものです。尿素価格:紛争前 1トンあたり465ドル → 現在684ドル(約5割上昇)。ウクライナ紛争時には日本の肥料価格は2倍に高騰しました。現在も2020年比で1.4倍で高止まり。ここからさらに5割上がれば、2020年比で約2倍。

 

 

 

つまり日本の農家は、5年前の倍の値段で肥料を買わされている状況。これは家計でいえば、毎月の食費が突然2倍になる悪夢のようなものです。

 

 

 

⭐️ウクライナ戦争との違い“――今回はカリウム+窒素のダブルパンチ

ウクライナ戦争のときに痛手だったのは、塩化カリウム(カリ肥料)でした。原料鉱石の多くがロシアとベラルーシに依存していたためです。両国は「日本はNATO側についた」と判断し、輸出を絞りました。その傷がまだ癒えないうちに、今度はホルムズ海峡封鎖による窒素肥料の危機が襲いかかっています。

 

 

 

さらに追い打ちをかけるように、中国が再び肥料の輸出規制を強化する動きを見せています。中国は前回(2021〜2022年)も自国優先で輸出規制を行い、日本は大打撃を受けました。前回はジャブ一発でしたが、今回はストレート+ボディブローのコンボが入っているのです。日本はノックアウト寸前です。

 

 

⭐️なぜ日本は肥料を作らない国になったのか

日本の肥料原料の自給率はほぼ0%。なぜでしょうか?

 

 

 

ここには米国の食料戦略があります。

 

 

 

日本をアメリカの食料に依存させることで軍事だけでなく、食料も永久属国化する戦略です[10]。日本は車を売って外貨を稼ぎ、その金で食料を買う仕組みを作り上げたのです。

 

 

 

しかし、その大前提が今、根底から崩れました。お金を積んでも物が来ない時代が、ホルムズ海峡封鎖という形で姿を現したのです。

 

 

 

⭐️最悪シナリオで自給率は“9.2%”――いやそれ以下

鈴木教授はかねてより、最悪の食料自給率は9.2%まで下がりうると警告されてきました。

 

その内訳は:

・肥料が止まれば収穫半減 → 自給率22%

・種子の9割を海外依存 → さらに低下

・グローバル種苗企業への依存拡大 → 9.2%へ接近

 

ところが今回、新たな要素が加わりました。エネルギー自給率はわずか11%。エネルギーが止まれば、トラクターも動かない、トラックも走らない、冷蔵庫も止まる。実質的な食料自給率は数%にしかならない計算になります。

 

 

 

これは、100人の村で実際に食べていけるのは数人だけという、絵空事ではない算術なのです。

 

 

⭐️次は台湾有事――海上封鎖されたら何ヶ月生き延びられるか

ホルムズ海峡の次に想定すべきは、高市政権が煽る台湾有事と中国による日本周辺海域の封鎖です。この事態に及ぶと、どれだけの日本人が、何ヶ月生き延びられるか――何ヶ月でみんなが餓死するのかというぐらいの恐るべき状況に近づいています。そんな危機にもかかわらず、日本の米の備蓄量は驚愕の数字です。主要穀物の国家備蓄は、中国の約1.5年分に対し、日本は30万トン=約15日分。

 

 

 

中国が1年半生き延びられる間、日本はわずか2週間で底をつくのです。しかし、高市政権は減反政策を強行し、財政当局は「お金がもったいないから国家備蓄を減らせ」と言っているのが現状です。

 

 

 

⭐️政府の答えは「昆虫食と植物工場と人工肉」!

「では政府は何をしているのか」と問えば、その方針は驚くべきものです。食料自給率100%を目指す手段として、植物工場、昆虫食、バイオ肉(培養肉)が掲げられています。これはカバールの方針そのものに率先して日本政府が従っていることを意味します。

 

 

⭐️今こそ自然栽培

日本はグローバル企業が儲かるような化学肥料・農薬を使用した慣行農業が約99.4%を占めています。しかし、そもそも肥料に依存しなければ、ホルムズ海峡が封鎖されようが、中国が輸出を止めようが、関係なくなります。

約20年前に自然栽培の農家に集まりなどに参加し、実際に肥料や農薬を使用しない農業が実現可能であることを実体験しました。しかし、自然栽培(無肥料・無農薬)は、日本では全体のまだ推定0.03〜0.1%未満にすぎません。

 

 

農薬を使用しないが肥料を使用する有機農業の比率を比較しても日本はヨーロッパの1/10以下です。

日本は”土に還る農業”という観点では発展途上国なのです。

 

 

 

⭐️植えるか飢えるか

日本政府はこのように農業を含めてあらゆる分野で世界の権力者のために国民に犠牲を強いてきました。もう農家さんたちも政府の方針に右往左往している場合ではありません。

 

 

 

政府がやらないなら、みんなでやるしかありません。日本が古来大事にしてきた地域コミュニティの機能を最大限に発揮し、耕作放棄地を再生し、農家とともに増産していくしかありません。

 

耕作放棄地こそ、農薬や化学肥料の残留が抜けた自然栽培への転換適地でもあります。何年も放置された土地は、自然の力で土壌が再生され、自然栽培を始めるのに理想的な状態になっているケースが多いのです。

 

 

 

「植えるか、飢えるか」――この選択を、私たちはすでに迫られています。そして同時に、「人工の知識(肥料)に頼るか、自然(土)の叡智に学ぶか」という、より深い選択も同時に問われています。

 

 

 

その意味で、今回計画的に引き起こされたエネルギー・食料危機は、私たちに本質に目覚めさせている千載一遇のチャンスに転換する出来事になる可能性があります。それに目覚めるかどうかは私たちにかかっています。

 

 

 

📚 参考文献・データソース

[1] U.S. Energy Information Administration (EIA). “The Strait of Hormuz is the world’s most important oil transit chokepoint.” https://www.eia.gov/

[2] 農林水産省「有機農業をめぐる事情」(慣行農業の比率データ) https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/

[3] 農林水産省「食料自給率・食料自給力指標について(令和5年度カロリーベース総合食料自給率38%)」 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/

[4] International Fertilizer Association (IFA). “Nitrogen fertilizer production and natural gas.” https://www.ifastat.org/

[5] 財務省貿易統計「肥料原料輸入相手国別統計」 https://www.customs.go.jp/toukei/

[6] World Bank Commodity Markets “Pink Sheet” (Urea price data). https://www.worldbank.org/en/research/commodity-markets

[7] 鈴木宣弘『世界で最初に飢えるのは日本――食の安全保障をどう守るか』講談社+α新書, 2022.

[8] Reuters / Bloomberg報道「China restricts urea and phosphate fertilizer exports」(中国の肥料輸出規制関連報道)

[9] 農林水産省「肥料をめぐる情勢」(肥料原料の輸入依存度) https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/

[10] 鈴木宣弘『食の戦争――米国の罠に落ちる日本』文春新書, 2013.

[11] 鈴木宣弘「実質食料自給率の試算」東京大学 大学院農学生命科学研究科 関連論考。

[12] 資源エネルギー庁「日本のエネルギー自給率(2022年度11.3%)」 https://www.enecho.meti.go.jp/

[13] USDA Foreign Agricultural Service “China: Grain and Feed Annual”。

[14] 農林水産省「米の備蓄運営について」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/bichiku.html
※本文中の「30万トン=15日分」は、流通段階で逼迫時に即座に放出可能な実効備蓄を指す試算。

[15] 内閣府・農林水産省「フードテック官民協議会」資料 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sosyutu/foodtech.html

[16] 日本民俗学会「結(ゆい)・もやい・てまがえ等の相互扶助慣行」関連民俗学論文。

[17] 木村秋則『すべては宇宙の采配』東邦出版, 2009. および 福岡正信『自然農法 わら一本の革命』春秋社, 1983.

[18] 石川拓治『奇跡のリンゴ――「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』幻冬舎, 2008.

[19] 農林水産省「有機農業の取組面積(令和4年:約3万ha、全耕地の約0.6%)」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/index-20.pdf

[20] 自然栽培実践農家団体および日本自然農業協会の集計推計値(公的統計が存在しないため、有機農業面積に占める割合からの推計)。

[21] FiBL & IFOAM “The World of Organic Agriculture: Statistics and Emerging Trends 2024.” https://www.fibl.org/

[22] 涌井義郎 編『有機農業・自然農法の経営展望』筑波書房, 2020.

[23] 農林水産省「みどりの食料システム戦略」(2021年策定、2050年までに有機農業面積25%=100万ha目標) https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/

[24] van der Heijden, M.G.A., et al. “The unseen majority: soil microbes as drivers of plant diversity and productivity in terrestrial ecosystems.” Ecology Letters, 11(3): 296-310, 2008.

[25] Bilichak, A., & Kovalchuk, I. “Transgenerational response to stress in plants and its application for breeding.” Journal of Experimental Botany, 67(7): 2081-2092, 2016.

[26] 宇根豊『農本主義のすすめ』ちくま新書, 2016. および 安藤丈將『脱原発の運動史――チェルノブイリ、 福島、そしてこれから』岩波書店, 2019.(里山循環農業の歴史的考察)

[27] 日本有機農業研究会『耕作放棄地の有機農業的再生』農山漁村文化協会, 2018.

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