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『森に還す——「ノグソ」で問い続けた命の循環』

『森に還す——「ノグソ」で問い続けた命の循環』

 

権力者が意図的に引き起こしたエネルギー危機によってあらゆる物価が上昇しているだけでなく、物資の供給が途絶えるようになっています。先日のウエルネスラジオでも、これからのエネルギーおよび食糧ロックダウンに備えて何を準備したら良いかを具体的に討論しました。

その中でも私にとって重要だったのは、排泄です。現在はトイレも水洗になっており、電気と水の供給がないと、汚物が積み上がります。実際に熊本地震のときに体育館に避難した人から伺った話では、トイレの便が積み上がっていたことが一番苦痛だったとおっしゃっていました。そこでバイオトイレなども検討した方が良いことをお伝えしましたが、それよりももっとコストがかからない方法があります。

 

 

 

⭐️「ノグソ」の世界記録保持者

累計1万7000回、連続13年45日。一人の男が森にしゃがみ続ける理由

76歳になる伊沢正名さん。2026年1月時点で、累計の「ノグソ」回数は1万7000回を超え、連続記録に至っては13年と45日(4793日)に及びます。これは、トイレで一度も用を足さずに過ごした日数です。ホテルに泊まろうが、海外旅行に行こうが、全部ノグソという強者です。

 

 

 

数字だけを並べれば、突拍子もない奇行のように聞こえるかもしれません。しかしその裏側には、半世紀以上にわたって積み重ねられてきた、ひとつの哲学と科学的な探究があります。

 

 

 

⭐️出発点は「自然保護運動への失望」だった

伊沢さんの活動の原点は、意外にも自然保護運動への深い失望でした。20歳から自然保護運動に身を投じていた伊沢さんは、ある日、”し尿処理場反対運動”を目の当たりにします。住民たちが「臭いものは嫌だ」と処理場の建設に反対している。けれど、そこで処理されるのは、ほかでもない住民自身が出したうんこやしっこなのです。

 

 

 

「自分で汚いものを出しておいて、処理は嫌だ——何なんだ、これは?」

その瞬間、批判の矛先が、ぐるりと自分自身に跳ね返ってきました。「自然保護運動だって、結局は”自分が好きな自然を守ってくれ”とワガママを言っているだけじゃないか」。みんな自分勝手だ——自分自身も含めて。そう気づいてしまったのです。

 

 

 

⭐️キノコが教えてくれた「命の循環」

ちょうどそのころ、伊沢さんはキノコの働きを知ります。これがすべての転機となりました。枯木に生えるキノコは、木を食べて分解している。地面のキノコは落ち葉を分解している。動物の死骸やうんこに生えるキノコもある。つまりキノコは「死んだ動物・植物」を分解し、土へと還している。そしてその土から新しい植物が芽吹き、森ができ、新しい命が生まれていく——まさに命の循環です。

 

 

「人類は死んだものを土に変え、新しい命につなげている。これはすごい!」

ならば自分のうんこも、トイレに流してしまうのではなく、森に返せばいい。1974年1月1日、伊沢さんはノグソ生活をスタートさせました。それから52年、彼はひたすら森にしゃがみ続けてきたのです。

 

 

 

伊沢さんの哲学はいたってシンプルです。「生きるということは、肉も魚も穀物も野菜もキノコも——他の生き物の命を奪うこと。残酷なことです。でも、ノグソをすれば、奪った命を土に返し、よみがえらせることができる」。だから伊沢さんにとってノグソとは、汚いものでも反社会的な行為でもなく、「生きる責任を果たす唯一の方法」です。

 

 

 

そして近年、伊沢さんの視線は自分自身の「死後」にまで及んでいます。歯がほとんどなくなり、食事も話すことも難しくなった伊沢さんは、「死に一歩踏み込んだ」と感じながら、こう考えるようになりました。「うんこも死体も、結局は同じ”死んだもの”。だったら、自分の死体も土に返せばいいじゃないか」。いま彼が研究を続けているのは、土葬を現代日本でいかに実現するか、というテーマのようです。

 

 

 

 

 ⭐️常識は思考停止だ

人類はサルの時代から数百万年ものあいだ、ずっと外で排泄してきました。それが現代では、うんこを下水に流すために大量の電力を使い、その電力を作るために石油を採掘し、海洋生物を殺している。「うんこを流すことが、地球を壊している」——その現実が、たしかに、そこにあります。

 

 

 

そうすると、「外で排泄するほうがむしろ常識で、いまのほうが異端なんじゃないか?」という当たり前の結論となります。

 

 

 

⭐️ 「プープランド」——たった一人のノグソが森を変えた

伊沢さんの活動は、長年通い続けた森を「プープランド」と名付け、科学的に追跡することへとつながっています。

15年前、同じ場所を掘り返してうんこの分解スピードを測定したのですが、今回の映画のために再調査したところ、分解力が約2倍にまで上がっていたというのです。微生物や土壌昆虫の数が劇的に増え、土そのものが”元気”になっている。たった一人のノグソで、15年でこれほどまでに土が育ったのです。

 

 

さらに驚くべき発見が続きます。世界で23例しか報告されていない希少なキノコが、プープランドから発見されました。そして香港、ジャマイカ、アメリカ南部、台湾でしか見つかっていなかった珍菌が、世界で5例目としてプープランドで採集されたのです。これは「腸内では酸素なしで生き、空中では酸素ありでも生きられる」という、菌類の進化を解き明かす重要な菌だといいます。

 

 

 

決定打となったのは、こんな比較でした。プープランドのある熊本の山中には、500年以上手付かずの照葉樹原生林を擁するお寺があります。菌類研究者の出川洋介さんが両者を調べたところ——

プープランドのほうが、500年の原生林より3倍も生物相が豊かだった。

両者の違いは何か?「私がうんこをしてるか、してないか、それだけです」と伊沢さんは破顔します。

 

 

 

⭐️人が作り出す最も価値あるものは、「うんこ」です

「みなさん、うんこは汚いと思っているでしょう。でもプープランドに来ると、空気はうまいし、こんないい環境なのかと驚くんです。人間のなかにある”うんこ=不衛生”という感覚は、人間社会のなかだけの感覚にすぎない。実際に自然のなかでは、うんこは最高のごちそうなんですよ」

そして伊沢さんは静かに、しかし力強く言い切ります。

「人が作り出す最も価値あるもの。それはうんこです。こんなに素晴らしいものはない」

 

 

 

それを私たちは、わざわざトイレに流して、燃料を使って燃やし、土には返さない。事態はトイレの中にとどまりません。日本の牛にもイベルメクチンという駆虫剤が使われ始めた結果、牛糞のなかに寄生していたダイコクコガネなどの糞虫が、本州ではほぼ絶滅状態にあります。糞を分解する虫がいなくなれば、当然、糞は土に戻らなくなります。

 

 

 

命の循環は、いま静かに、しかし確実に断ち切られつつあるのです。だからこそ伊沢さんは今日も、森にしゃがむ。それは奇行ではなく、52年をかけて磨き上げられた、ひとつの祈りのような営みなのかもしれません。ワンちゃんのウンコもなるべく森に還していますが、今度は自分の番です😃。エネルギーロックダウン後の排泄は「ノグソ」で決定です(ただし、子供や女性の場合は誰かが監視し、守るか、簡易テントを使用することをお勧めします)。

 

 

参考動画

・【東出昌大vs自然破壊】人間中心主義の限界…異色対談で“命の循環”を考える【関野吉晴&伊沢正名&ReHacQ】

 

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