『インフルエンサーも必要がなくなるAIの時代』
インスタグラムで250万人以上に追われ、ハイブランドをまとい、政治的な発言までこなし、Black Lives Matter や the LGBTQI+などの社会運動への支持も表明する。世界中に熱狂的なファンがいて、広告にも次々と登場する。
そのインフルエンサーには感情はなく、サイコパスと同じこともできる。そのうえ、そのインフルエンサーは、監視する必要もなく、忠実に権力者の命令をこなす・・・・・
「バーチャルインフルエンサー」、つまり本物そっくりに設計された、企業所有のデジタル人格が出現しています。実際にリル・ミケーラ(Lil Miquela、西洋的で、都会的で、ほとんど人間に見える)は、バーチャルインフルエンサーである、AI監視時代の先頭を歩いています。
「バーチャルインフルエンサー」 は、権力者のアルゴリズムで動くため、マスコミやSNSのインフルエンサーも必要なくなる時代がそこまできています。
バーチャルインフルエンサーは一言でいえば、「SNSで生きているように見せるために作られた、完全管理可能な人格」です。AI、CG、アニメーション、モーションキャプチャ、ブランド設計を組み合わせ、まるで本物の人間のように振る舞わせます。投稿し、フォロワーに応答し、商品を宣伝し、ときには社会問題についても意見を述べます。つまり見た目は人間、役割も人間、影響力も人間並みです。

寝不足もなければ、気分の波もなく、失言もなく、スキャンダルも制御できます。権力者にとって、これほど都合のいい「有名人」はありません。人間の“雇われ”インフルエンサーも大失業の時代になっていきます。

そして、現代ではロボットで人間を代用できる時代になっています。最愛の伴侶を亡くしても、今まであれば、新しい伴侶を探すか、ペットとの新しい絆を築いていました。現代では、このようなケースでも、ペットや伴侶を代用するロボットが発売されています。
実際にそのロボットと生活している方から話を伺うと、抱くと体温もあり、帰宅すると喜んだりするようです。基本的に世話が必要ないので、忙しい現代人にとってはロボットが世話が必要なく楽で十分という結論になるのでしょう。
このように現代社会の人間は、AIと分かっていても、惹かれます。相手が本物でなくても、心が動くことはあるということです。人間とは一体何なのか考えさせられます。
映画の主人公に泣き、アニメのキャラクターに励まされ、会ったことのない有名人に親しみを感じるように、人は昔から「一方向のつながり」を生きてきました。これがパラソーシャル関係です。最近の研究でも、バーチャルインフルエンサーに対して人々がこうした関係を築くこと、そしてその強さが「人間らしさ」「自分との類似感」「人工物であると明示されるかどうか」「感情的な投稿をするかどうか」で変わることが示されています。
つまり、私たちの心は「相手が本物か」よりも、「本物っぽく感じるか」にかなり左右されるのです。

ここで本当に怖いのは、バーチャルインフルエンサーが増えることではありません。本当に怖いのは、私たちが「何を本物と感じるか」その基準自体が、アルゴリズムと商業設計によってじわじわ書き換えられていくことです。これは、文化の舞台に新しい役者が加わった話ではありません。舞台監督、照明、脚本、観客導線まで、全部まとめてシステム側に回収されていく話です。しかもその変化は、革命のように大きな音を立ててやって来るのではなく、便利さ、楽しさ、美しさ、親しみやすさという、抗いにくい形で進みます。麻酔のように静かで、だからこそ深く効くのです。
結局のところ、この問題の核心は「AIがすごい」でも「CGがリアル」でもありません。核心は、「文化の配線図を誰が握るのか」です。どの価値観が拡散されるのか。どの美意識が標準になるのか。どの政治的主張が“自然な空気”として浸透するのか。それを決める力が、少数の巨大プラットフォーム企業と、そのアルゴリズムに集中しているとしたら、私たちは想像以上に狭い配管の中で世界を見せられていることになります。
だから、これから必要なのは単なるメディアリテラシーでは足りません。「これは本物か偽物か」と問うだけでは甘いのです。むしろ問うべきは、「これは誰にとって都合がいい感情なのか」「この親しみやすさは自然発生したものか、それとも設計されたものか」「多様性に見えるこの景色は、本当に多様なのか、それとも同じシステムが違う衣装を着ているだけなのか」ということです。そこまで見抜いて初めて、私たちは次の時代の観客ではなく、当事者になれます。
次にあなたの心をつかむ存在は、人間より人間らしく、しかも人間ではないかもしれないからです。
参考文献
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