アセトアミノフェン(パラセタモール)— 多くの家庭の薬箱に常備され、「安全な解熱鎮痛剤」として頻繁に処方されてきたこの薬が、自閉症スペクトラム障害(ASD)の増加と深い関わりを持つ可能性が、数々の科学的証拠によって浮き彫りになっています。
⭐️メディアの煙幕作戦〜NBCニュースが隠蔽した真実〜
2024年、NBCニュースが発表した「アセトアミノフェンと自閉症との間に関連性がない」という記事は、見た目は普通のニュースのようでしたが、実は巧妙に「本当に大事な部分」を隠す煙幕のようなものだったのです。
メディアはもともと複雑で、色々な面から考えるべき科学的な証拠を、製薬会社(権力者の所有物)の都合のいい「スウェーデンのたった一つの研究」だけで代表させる形で流しました。
これは、大きなジグソーパズルのうち、都合の良い1ピースだけを出して「これが全部だよ」と説明しているようなものです。
2024年の研究¹は、一つの重要なデータを確かに提供しています。しかし、その研究にも実は大きな欠点がいくつもあったのです。
分かりやすく料理に例えてみましょう。おいしい料理を作るには新鮮な材料、きちんとした分量、正しい火加減や時間など色々な要素が必要ですよね。この研究で使っていた「材料」は、実は十分に新鮮じゃなかった、つまりデータの質に問題があったのです。
たとえば、薬の曝露があったかどうかを調べるデータは「妊娠8~10週のたった一度きりの面談」だけから集めていました。これは、1年間の食生活をたった一日の食事だけで判断するようなものです。
さらに、市販薬の使用量がとても低めに見積もられていました。病院で処方された薬だけでデータを作っていたため、本当の薬の使用量とかけ離れてしまいました。
さらに「生涯で薬を使ったか」などぼんやりした期間の分け方だったため、本当に影響を受けやすい時期が分からなくなってしまったのです。
また、研究者たちは「兄弟比較」という研究方法を使っていましたが、これにもいろんな問題があります。
例えば、双子が同じ家で暮らしていても、片方だけが風邪をひいたとします。そのとき「どうして一人だけ風邪をひくのだろう?」と疑問に思いますよね。
見た目は同じ条件でも、体質や普段の生活習慣など、細かい違いがたくさんあるから結果が異なってしまうのです。
この研究ではさらに、「兄弟で薬の使い方が違う家族」だけを特別に調査していました。こうすると、調査の対象になる家族の多くは、「普通の家族」とは違った特徴を持つグループばかりになってしまいます。実際そのグループは、たばこを吸う人が多かったり、精神的な問題を持っていたり、病院に通うペースも他と違うという偏りが生まれてしまったのです。
つまり、この研究が取り扱ったのは特殊ケースであり、一般化できないという結論になるのです。
このように、一部だけの情報を使って「これが全部です」と言ってしまうことで、本当はもっと複雑な真実や本質的な問題が隠されてしまう――そんな危険なメディアの手法を知ることが大切です¹。
⭐️隠された科学的証拠
本当の科学的証拠は、自己申告に頼らない客観的な測定から生まれます。
ボストン出生コホート研究において、画期的な発見が報告されました²。臍帯血漿中のアセトアミノフェン代謝物を測定した結果、まるで階段を上るように段階的にリスクが上昇することが判明したのです。
多動症(ADHD)では最高四分位群において最低四分位群と比較してオッズ比2.86(95%信頼区間1.77-4.67)、自閉症スペクトラム障害ではオッズ比3.62(1.62-8.60)という驚くべき結果でした。これは、まるで温度計の目盛りのように、曝露量が増えるにつれてリスクも比例して上昇することを示していました。
さらに興味深いことに、2020年の研究³では、胎便中のアセトアミノフェン濃度とADHDリスクの関連だけでなく、脳の前頭頭頂ネットワーク接続性の変化も確認されました。これは、まるで橋の構造に亀裂が入り、交通の流れが変わってしまうようなものです。
この発見は、アセトアミノフェンが単に統計的な関連を示すだけでなく、実際に脳の物理的構造と機能に悪影響を与えることを示唆する重要な証拠となりました。
大規模メタ解析⁴は、70,000人以上の小児を対象とした6つのヨーロッパのコホート研究を統合しています。その結果は、まるで異なる楽器が同じメロディーを奏でるように、一貫してアセトアミノフェンの出生前曝露と自閉症スペクトラム症状およびADHD症状のリスク増加を示していました。
これは単一の研究の偶然の結果ではなく、複数の独立した研究が同じ結論に到達したという、科学における最も強力な証拠の一つです。
⭐️発達薬理学の警告〜脆弱な新生児の真実〜
新生児がアセトアミノフェンという薬を体で分解・排出する仕組みは、例えると「建設途中の高速道路」みたいなものです。大人の場合はたくさんの出口(安全な分解ルート)が整備されているので、薬は安全に体から外へ出すことができます。しかし赤ちゃんは、その出口の多くがまだ完成していません。
過去の研究⁵ ⁶からも、新生児が薬を分解する際は「硫酸化経路」と呼ばれる一本道に頼っていることが分かっています。
この状況は、山の中に一本しか道路がないのに、その道路で土砂崩れが起きて通れなくなってしまうようなリスクと似ています。まだ他のルート(グルクロン酸抱合経路)が成長していない時期に、もしこの硫酸化経路がうまく働かなくなると、危険な経路(NAPQIと呼ばれる毒性物質ができるルート)に流れてしまう恐れがあります。
さらに驚くべきことに、自閉症がある子どもでは、この硫酸化の力が生まれつき弱まっていることが報告されています。
1997年に報告された先駆的な研究⁷では、自閉症の子どもでフェノールスルホトランスフェラーゼ(PST)という分解に必要な酵素の働きが落ちていて、体の中の硫酸塩の量も少なくなっていることが確認されました。
この発見は2021年の研究⁸でも裏付けられており、自閉症スペクトラム障害(ASD)がある人では血液中のセロトニンが高いことと、この分解力の弱さが関係していることも分かってきました。
これは、生まれつき排水管が細い家が、大雨ですぐに床上浸水してしまうのと似たメカニズムです。
このように、胎児(妊婦)や新生児に超加工品で毒性のある薬剤を与えることの危険性は、アセトアミノフェンという解熱剤だけ取り上げても、十分証明されています。