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『イライラすると“本物”の甘いものが欲しくなる理由〜リアルサイエンスシリーズ』

 

私たち生命体は、ストレスが溜まってイライラすると、急に「甘いもの」が欲しくなります。この時に空腹でなくても、やはり甘いものが欲しくなるのです(Perceived Effects of Stress on Food Choice. Physiol. Behav. 1999;66:511–515)(Acute Stress-Related Changes in Eating in the Absence of Hunger. Obesity. 2009;17:72–77)。

 

実際に、私たちがストレスを感じているとき、砂糖入りのものを飲食すると、気が落ち着き、機嫌が良くなり、心が穏やかになります(Food Selection Changes under Stress. Physiol. Behav. 2006;87:789–793)(Academic Stress Levels Were Positively Associated with Sweet Food Consumption among Korean High-School Students. Nutrition. 2013;29:213–218.)(Self-Medication with Sucrose. Curr. Opin. Behav. Sci. 2016;9:78–83)。

なぜでしょうか?

 

イライラするようなストレス過多の状態では、ストレスに対処するエネルギーが不足しています。

 

ストレスに対処するエネルギーを産生するために、コルチゾールというストレスホルモンが放出されます。

 

コルチゾールは、私たちの筋肉や脂肪を砕いて(破壊して)、エネルギーに変換する作用を持っています(肝臓のぶどう糖の貯蔵であるグリコーゲンも分解される)。

 

コルチゾールが高くなると、イライラが始まるのですが、それは体が無理やり分解されていくからです。

 

とくに筋肉のタンパク質が分解されたり、脂肪からプーファが血液中に放出されたりすると、エネルギー源となる他にも、エストロゲンやセロトニンを誘導してイライラを募らせます(また長期的には甲状腺機能低下症、つまり糖のエネルギー代謝低下をもたらす)。

砂糖(ショ糖)がストレスを抑えるのは、砂糖そのものがストレスに対処する最も良質のエネルギー源になるので、コルチゾールを分泌しなくて済むからです。

実際に砂糖(ショ糖)がコルチゾールの分泌反応(HPA axis)を抑えることは、過去記事や拙著でも繰り返しお伝えしてきた確固たるエビデンスです(Palatable Foods, Stress, and Energy Stores Sculpt Corticotropin-Releasing Factor, Adrenocorticotropic and Corticosterone Concentrations after Restraint. Endocrinology. 2009;150:2325–2333)(Sucrose Ingestion Normalizes Central Expression of Corticotropin-Releasing-Factor Messenger Ribonucleic Acid and Energy Balance in Adrenalectomized Rats: A Glucocorticoid-Metabolic-Brain Axis? Endocrinology. 2001;142:2796–2804)(Corticosterone Infused Intracerebroventricularly Inhibits Energy Storage and Stimulates the Hypothalamo-Pituitary Axis in Adrenalectomized Rats Drinking Sucrose. Endocrinology. 2002;143:4552–4562)(Daily Limited Access to Sweetened Drink Attenuates Hypothalamic-Pituitary- Adrenocortical Axis Stress Responses. Endocrinology. 2007;148:1823–1834)(Role of Endogenous Opioid System in the Regulation of the Stress Response. Prog. Neuro-Psychopharmacol. Biol. Psychiatry. 2001;25:729–741)。

 

砂糖入りのドリンクを摂取すると、ストレス後の血液中コルチゾール値は低下します。その一方で、アスパルテーム(人工甘味料)入りのドリンクを摂取すると、ストレス後の血液中コルチゾール値は逆に高くなります(Excessive Sugar Consumption May Be a Difficult Habit to Break: A View from the Brain and Body. J. Clin. Endocrinol. Metab. 2015;100:2239–2247)。

 

偽物の甘味では、かえってストレスが増すということです。

 

さらに高プーファ食も、かえってストレスを増加させることが分かっています(High-Fat Diets and Stress Responsivity. Physiol. Behav. 1998;64:1–6)(High-Fat Feeding Alters Both Basal and Stress-Induced Hypothalamic- Pituitary-Adrenal Activity in the Rat. Am. J. Physiol.-Endocrinol. Metab. 1997;273:1168–1177)。

2023年の研究では、ストレス下では、砂糖および飽和脂肪酸にストレス軽減作用(砂糖により強いストレス降下作用)があることが報告されています(Real-World Intake of Dietary Sugars Is Associated with Reduced Cortisol Reactivity Following an Acute Physiological Stressor. Nutrients. 2023 Jan; 15(1): 209)。

 

ストレスが溜まったときに、甘い生クリームやバターたっぷりのハチミツトースト(ハニー・バターのサワードウなど)などを食べたくなる理由がよく分かりますね。

 

今年もみなさんには大変お世話になりました。

糖のエネルギー代謝を高めて、心も体も温かしてどうぞ良いお年をお迎えください(^_−)−☆。

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