先日、月に2回配信しているウエルネスラジオで、
「脳卒中後に麻痺した手足は糖のエネルギー代謝を高めることで元に戻るのか?」
というご質問を受けました。
これに対する現代医学の回答は「ノー」です。
脳卒中後にいったんゼロになって麻痺した手足は、リハビリ等によって数ヶ月後には50%程度は回復する可能性があります。
現代医療でゼロが100%に戻ることはありません。
しかし、糖のエネルギー代謝を高めれば、高齢であっても麻痺した神経が戻る可能性を示唆する実験結果が報告されました(Mitochondria metabolism sets the species-specific tempo of neuronal development. Science. 2023 Feb 10;379(6632):eabn4705)。
ヒトの神経細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝(=糖のエネルギー代謝)を高める処置を行うと、通常の神経細胞よりも成長が早く、神経突起の伸長、神経の接合の上昇(シナプス形成アップ)など、神経機能が著しく高まることが示されました。
ミトコンドリアのエネルギー代謝は、脂肪やタンパク質をエネルギー源にするとミトコンドリアがダメージを受けるために、徐々に低下していきます(『慢性病の原因は「メタボリック・スイッチ」にあった』参照)。
したがって、ミトコンドリアのエネルギー代謝は、糖のエネルギー代謝とイコールです。
一般に言う「代謝を高める」と表現されるものの、実際は「糖のエネルギー代謝を高める」ことであることをまずおさえておきましょう(脂肪やタンパク質をエネルギー源として燃焼すると、最終的に代謝は低下する)。
また、マウスの実験において、逆にミトコンドリアのエネルギー代謝(=糖のエネルギー代謝)を低下させる処置を行うと、神経突起の発達の遅れや神経接合の減少が認められました。
つまり、神経細胞においても、糖のエネルギー代謝を高めると、今まで不可能(神経は再生しない)と考えられていた神経の発達および機能の向上が認められることが明らかにされたのです。
糖のエネルギー代謝を高めることで再生するのは、脳神経だけではありません。
過去記事で、切断肢も糖のエネルギー代謝を高めると再生することをお伝えました。
ミトコンドリアのエネルギー代謝、つまり糖のエネルギー代謝を高めると、脳神経だけでなく、あらゆる組織でダメージを回復させることが可能になるのです(Is metabolic rate a universal ‘pacemaker’ for biological processes? Biol Rev Camb Philos Soc. 2015 May;90(2):377-407)。
以上から、冒頭のご質問に対しての回答は、
「初期から糖のエネルギー代謝を高める適切な処置を行えば、麻痺が回復する可能性がある」ということになります(^_−)−☆。