またもや血糖が高いことがウイルス感染と関係しているという誤解を招く論文があるので解説して欲しいと紹介がありました。
その研究論文を見ると、やはり・・・・・
この論文では、糖尿病などの状態では、細胞内で糖がエネルギー代謝で使用できずに、ある酵素(OGT (O-GlcNAc transferase))合成に使用され、これがインフルエンザウイルスを増殖させるタンパク質(interferon regulatory factor–5(IFR-5))を誘導するとありました(Sci Adv, 6:eaaz7086, 2020)。
拙著や過去のウエルネスラジオでも何度もお伝えしていますが、血糖が高いという状態は、糖の過剰摂取あるいは糖が悪いということではありません。
血糖が高いというのは、糖が細胞内で利用できないという“結果(状態)”を示しているものであり、病態を引き起こしている“原因”ではないのです。
これを一般の方ならともかく、研究者自身がよく理解していません。
今回の研究論文でも、通常の糖の細胞内利用(エネルギー代謝)がブロックされて、糖がアミノ酸、核酸、脂肪などの合成に使用されてしまいます。
この糖のエネルギー代謝以外の使用は、がんや関節リウマチなどの自己免疫疾患の特徴であることは、基礎医学ならびにメタトロン講義でお伝えした通りです。
今回の研究において、糖がエネルギーの燃料として使用されるのではなく、ウイルスを増殖させる酵素への転換(hexosamine biosynthesis pathway)されます。
糖がこの酵素へ変換されるには、グルタミンというアミノ酸や脂肪から供給されるアセチルCoAという物質が必要です。
グルタミンやアセチルCoA(脂肪から供給される)は、まさしく低血糖(糖質制限やファスティング(コチラの記事も))や糖が利用できない時に起こるリポリシス(脂肪分解)やプロテオリシス(タンパク質分解)によって供給される物質です。
リポリシス(脂肪分解)やプロテオリシス(タンパク質分解)は、低血糖という最大のストレス反応として、血糖を作るために自分の体を分解する「病気の場」で起こる営みです。
つまり、今回の研究も、糖が正常に細胞内でエネルギー代謝できないために、体がストレス反応として引き起こす経路(リポリシス、プロテオリシス)が活性化し、それがウイルスを増殖させているのです(実際の悪さをしているのは、食事中あるいはリポリシスで発生するプーファ)。
糖がエネルギー代謝で使用できないと、ウイルス感染に罹りやすくなるということです(実際は、ウイルスは存在しないので、“ウイルス感染症”と呼ばれる病態になるといった方が正確(^_−)−☆)。
糖尿病で、糖が細胞内で利用できないことは、糖が悪さをしているのではなく、プーファ(直接の原因)などの存在によって糖が使えないという結果に過ぎません。
研究論文の内容が難しいので、解説も少し専門的になり過ぎましたが、今回の研究も原因と結果をとり違えることがサイエンスの世界では頻繁に起こっていることの証左として捉えて頂ければと思います(^_−)−☆。