みなさんは、思い出したくない記憶はないでしょうか?
それを思い出すだけで、実際に体が寒気を感じたり、胃が痛くなったり、吐き気を催すような出来事です。
人間も含めた生命体は、楽しい経験よりも恐怖などの命にかかわる記憶を体に刻む傾向があります。
これは環境因子によって、機能と構造が変化するからですね(^_-)-☆。
だから、自己啓発系でよく言われるような「自己肯定アファーメーション」を唱えるだけはまったく功を奏さないのです。
私たちの心身の機能・構造を変えるだけのインパクトをもたないからです。
さて、そのネガティブな記憶の形成には、興味深いことに、がんの増大・転移や感染症の拡大に必須のある酵素が必要とされています。
その酵素とは、細胞と細胞の間(膠)をつなぐ結合組織(コラーゲンが主体)を溶かす酵素です。
「マトリックス・メタロプロティネース(MMP-9)」と呼ばれています。
記憶の定着には、神経細胞を連結する間質を溶かして、リモデリング(再構築)する必要があります。
これは新しいシナプス(連結)を作るためですね。
「創造的破壊」という言葉が当てはまるかも知れません。
さて、このコラーゲンを溶かす酵素をブロックすると、恐怖などのネガティブな記憶の形成がブロックされるのではないか・・・・・
つまり、こころのトラウマの形成を少しでも軽減できるのではないかという仮説を立てた興味深い臨床実験があります(Mol Psychiatry. 2018 Jul;23(7):1584-1589.)。
コラーゲンを溶かす酵素(MMP-9)をブロックする物質を投与すると・・・・・
なんとネガティヴな記憶の形成が実際に軽減されたのです(^_-)-☆。
このとき、使用された物質は、古くから使用されている抗生物質。
最近はほとんど使用されなくなって、私がよく使用するので、他のドクターが首を傾げていたものです。
ドキシサイクリン(doxycyline)というテトラサイクリン系の抗生物質です。
この抗生物質は、クワイノンと私が呼んでいる、ミトコンドリアの糖のエネルギー代謝をアップさせる物質でもあります。
おそらく、過剰なネガティヴな記憶の形成は、この抗生物質による糖のエネルギー代謝を高める作用によってもブロックされたのでしょう。
何かショックな出来事があったとき。
そのような時には、やはり糖のエネルギー代謝を高めておくことがトラウマを少しでも軽減するのに役立つのです(^_-)-☆。