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「やはり糖質制限は寿命を縮める」―プーファ以外のもう一つの真犯人

 

「寿命を縮めるのは、『糖質』ではなく『タンパク質』の摂取です」と聞いて、驚かない人はいないでしょう。

 

 

 

寿命を縮めるのは、脂質、とりわけプーファであることを複数のエビデンスでお伝えしましたが、とりわけ若い人ほど、タンパク質の過剰摂取がデメリットになります。

 

 

 

糖質制限は、糖質を削減して、脂肪あるいはタンパク質を増やす極端な食事法ですが、高脂肪食(ケトジェニックダイエット)だけでなく、高タンパク質食(米国式パレオダイエット)も問題があります。

 

 

 

タンパク質を減らしたほうが寿命は延びる――驚きの実験結果

 

近年、ごはんなどの主食である炭水化物に含まれる糖質が「太る」「老化や病気を招く」と敬遠されてきました。炭水化物は主に「糖質と食物繊維」から構成されます。

 

 

 

そのうち糖質は分解されてブドウ糖になり、血液中に溶け出して全身に供給されるのですが、ブドウ糖が余ると中性脂肪として蓄積されて肥満を招くと喧伝されてきました。そのため、できるだけ糖質の摂取を抑えるダイエット、いわゆる糖質制限がブームになり、市場には糖質オフを謳う食品が続々と登場しました(1)。

 

 

 

ちなみに、繰り返しエビデンスをお伝えしているとおり、ショ糖、ハチミツ、フルールなどの「ブドウ糖+果糖」のコンビネーションでは、現代人の日常の糖質摂取量では、肥満になるどころか、むしろ体重が減少していく効果があります。

 

 

 

そして糖質に代わって人気を集めたのが「脂肪」と「タンパク質」です。

 

 

 

「筋肉の維持・回復にはタンパク質が必須」などといわれ、今もプロテイン(タンパク質)入りのさまざまな商品が流行しています。つまり「糖質は悪」で、「タンパク質は善」という図式が出来上がったのです。

 

 

ところが、この図式が実は逆だったとしたら、どうでしょうか?

 

 

 

近年の研究では、カロリーを同一にした場合、糖質よりタンパク質が老化を早め、寿命を縮める結果がでています (2、3)。

炭水化物を少なくしても寿命は延びない

 

老化の研究ではショウジョウバエが用いられます。

 

 

 

20008年に、ショウジョウバエを用いた興味深い研究が報告されています(4)。

 

 

糖、すなわち炭水化物と酵母、すなわちタンパク質の『両方を豊富に含む餌』と、両方とも減らした『食餌制限餌』を作ると、両方減らした場合に寿命が大きく延長しました。

 

 

次にその食餌制限では、糖と酵母のどちらを減らすことが大事なのか、あるいはただカロリーを減らせばいいのか、を確かめるため、餌を調製しました。

 

 

 

すると糖を減らしても寿命はそれほど変化しませんが、酵母(タンパク質)を減らした場合には寿命が大きく延長しました。

 

 

 

もちろんタンパク質を減らせば減らすほど長寿になるわけではありません。ある一定以上に減らすと栄養欠乏になり、かえって寿命は短くなってしまいます。

 

 

 

つまり、タンパク質摂取量は、少なくても多すぎても短命になります。

 

 

 

筋肉ムキムキの代償

 

ボディビルダーのようにタンパク質を多く摂取すると、「筋肉ムキムキ」にはなります。しかし、それは同時に「老化」のスイッチを押していることになっています(5、6)。

 

 

そして、若ければ若いほど過度なタンパク質の摂取は寿命を縮める可能性が指摘されています(7、8)。特に子どもがプロテイン飲料のようなものでタンパク質を多く摂取することは、推奨できません。

 

 

タンパク質欲は糖質欲より強い――食べすぎのリスク

 

それならとにかくタンパク質摂取量を少し減らせばいいんだと思ったかもしれません。しかし、そこに落とし穴があります。タンパク質の摂取量を減らすと、「食べすぎのリスクが高まる」ことがわかっています(10、11)。

 

 

 

タンパク質を欲する気持ちが強いため、足りないときにより多くの食事量を摂ろうとしてしまうからです。

 

 

 

総カロリー、つまり全体の食事量(特に脂質)を摂りすぎれば肥満や糖尿病などのメタボリックシンドロームを引き起こし、やはり寿命を縮めてしまいます(12、13)。

 

 

 

原点に還る

人類の健康状態が良かった狩猟採集時代には、それほど毎日タンパク質を食べることができなかったでしょう。狩りで動物を射止めることは難しいからです。

 

 

 

食事の中心となる糖質を減らして、脂質やタンパク質を極端に摂取するという糖質制限は狩猟採集時代には不可能でした。

 

 

やはり、糖質を中心として、タンパク質を摂取する(糖質とタンパク質のバランスは、3:1程度)という基本(かつ生理学的にも適切)に戻ることが心身の健康の鍵となります。

 

 

 

参考文献

 

  1. Rizza W, Veronese N, Fontana L. What are the roles of calorie restriction and diet quality in promoting healthy longevity? Ageing Research Reviews 2014, 13, 38-45

 

  1. Kitada M, Ogura Y, Monno I, Koya D. The impact of dietary protein intake on longevity and metabolic health. EBioMedicine 2019, 42, 372-379

 

  1. Green CL, Lamming DW, Fontana L. Molecular mechanisms of dietary restriction promoting health and longevity. Nature Reviews Molecular Cell Biology 2022, 23, 56-73

 

  1. Lee KP, Simpson SJ, Clissold FJ, Brooks R, Ballard JWO, Taylor PW, Soran N, Raubenheimer D. Lifespan and reproduction in Drosophila: New insights from nutritional geometry. Proceedings of the National Academy of Sciences 2008, 105, 2498-2503

 

  1. Blagosklonny MV. Calorie restriction: decelerating mTOR-driven aging from cells to organisms (including humans). Cell Cycle 2010, 9, 683-688

 

  1. Ma L, Dong W, Wang R, Li Y, Xu B, Zhang J, Zhao Z, Wang Y. Effect of caloric restriction on the SIRT1/mTOR signaling pathways in senile mice. Brain Research Bulletin 2015, 116, 67-72

 

  1. Le Couteur DG, Solon-Biet S, Cogger VC, Mitchell SJ, Senior A, de Cabo R, Raubenheimer D, Simpson SJ. The impact of low-protein high-carbohydrate diets on aging and lifespan. Cellular and Molecular Life Sciences 2016, 73, 1237-1252

 

  1. Richardson NE, Konon EN, Schuster HS, Mitchell AT, Boyle C, Rodgers AC, Finke M, Haider LR, Yu D, Flores V, Shen WH, Jiao J, Li Y, Khadeer M, Smith SR, Mittelman SD, Dang L, Peng W, Verdin E, Promislow DEL, Green CL, Kapahi P, Anderson RM, Lamming DW. Lifelong restriction of dietary branched-chain amino acids has sex-specific benefits for frailty and life span in mice. Nature Aging 2021, 1, 73-86

 

  1. Austad SN, Smith JR, Hoffman JM. Amino acid restriction, aging, and longevity: an update. Frontiers in Aging 2024, 5, 1393216

 

  1. Simpson SJ, Raubenheimer D. Obesity: the protein leverage hypothesis. Obesity Reviews 2005, 6, 133-142

 

  1. Gosby AK, Conigrave AD, Raubenheimer D, Simpson SJ. Protein leverage and energy intake. Obesity Reviews 2014, 15, 183-191

 

  1. Soultoukis GA, Partridge L. Dietary protein, metabolism, and aging. Annual Review of Biochemistry 2016, 85, 5-34

 

  1. Korat AVA, Shea MK, Jacques PF, Sebastiani P, Wu D, Cassidy A, Chui KK, Larson N, Eliassen AH, Shadyab AH, Manson JE, Sun Q. Dietary protein intake in midlife in relation to healthy aging—results from the prospective Nurses’ Health Study cohort. American Journal of Clinical Nutrition 2024, 119, 271-282

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