『アセトアミノフェンと自閉症の危険な関係〜メディアが報じない科学的証拠の全貌〜その2』
⭐️動物実験が示す不都合な真実
世界のさまざまな研究室が、違う種類の動物を使って実験を行ってきました。その結果は「違う言葉で同じ物語を語る」かのように、一貫して似た傾向を示しています。
2017年の研究⁹で分かったことは、子どもの発達期にアセトアミノフェン(熱さましの薬)を使うタイミングによって、その後の行動や脳への影響が大きく変わる「重要な時期」があるということです。
具体的には、動物の赤ちゃんが生まれて3~10日目に薬を与えると、長い間続く行動の変化が起こりました。ですが、19日目に薬を与えても、めだった影響はありませんでした。これは「種まきは一番良い季節にやらないと育たない」というのと同じで、薬の悪影響にも「特別なタイミング」があることを示しています。
また、近年の研究¹⁰ ¹¹では、いろいろな動物実験で「オス」のほうが薬の影響を強く受けやすいことが分かりました。これは自閉症が男の子に多く現れるという実際の現象とぴったり合っています。同じ鍵が異なる扉を開けるように、動物での結果が人でも起こる可能性を示しているのです。
さらに、2010年の細胞レベルの研究¹²では、アセトアミノフェンがラットの脳細胞に「アポトーシス(細胞が自分から死ぬ現象)」を起こすことが明らかになりました。そして2022年の研究¹³では、脳の細胞同士のつながり(神経突起)や細胞の骨組み(細胞骨格)に異常が出ることが分かりました。
これは、精密な電子回路の配線が傷つくことで、うまく情報が伝わらなくなるのと似ています。
さらに、2024年の研究¹⁴では、お母さんのお腹にいる時にアセトアミノフェンの影響を受けると、脳が音をちゃんと処理する力(聴性脳幹反応)がうまく働かなくなる場合があることが分かりました。これは、自閉症の子どもに見られる音への敏感さや感覚の問題と関係しているかもしれません。
こうした動物実験の発見から、薬を使うタイミング・性別などによって脳の発達への影響に差が出ることが分かってきました。これは、人間にとってもとても重要なヒントです。複数の動物実験の結果から、アセトアミノフェンが発達期に与える影響は時期や性別によって大きく変わることが分かっています。
このように、動物実験の積み重ねが、人間の脳や行動への薬の影響を知る大きなヒントになっています。
⭐️相互作用という複雑な世界
アセトアミノフェンが脳の発達に与える影響は、単独で決まるものではありません。他の要因と組み合わさることで、まるでオーケストラが複数の楽器で演奏するように、結果が大きく変わってきます。体調や環境が違えば、同じ薬でも出てくる効果やリスクも変わってくるのです¹⁵¹⁶¹⁷。
2022年の研究¹⁵では、「炎症」があるとき(体でインターロイキン-1βという物質が増えている状態)、アセトアミノフェンが行動に与える影響が強くなってしまうと分かりました。つまり、同じ薬でも人によって体調や環境が違えば反応が全く変わるということです。これは、同じ種類の植物でも土壌が良ければ元気に育ち、悪ければ弱く育つのと似ています。
またグレリンというホルモンが「アセトアミノフェンの行動への効果」を変えてしまうことも分かりました¹⁶。人間の体は様々な物質が複雑につながった化学工場のようなもので、その時の体内状況の違いが薬の影響に大きく関わってくるのです。
さらに基礎研究¹⁷では、プロスタグランジンE2という物質が、産まれてすぐの敏感な時期に小脳の発達や複雑な行動に大切な役目を持っていることが分かってきました。このプロスタグランジンE2の働きが、アセトアミノフェンが脳にどんな影響を及ぼすかについてもヒントになる可能性があります。
このように、アセトアミノフェンの神経発達への影響は「そのときの体の状態・ホルモン・他の物質の働き」などが絡み合って決まる、とても複雑なものなのです¹⁵¹⁶¹⁷。
⭐️疫学的パズルの完成〜一致する証拠の数々〜
科学の一番面白いところは、一見まったく関係なさそうに見える現象の間に「隠れたつながり」を発見することです。アセトアミノフェンという薬と自閉症との関係を考えると、不思議なパターンが浮かんできます。
例えば、正統派ユダヤ教徒の子どもに自閉症が少ない理由のひとつに、宗教上の理由から薬の使用を控えている習慣が関係しているかもしれません。また、デンマークとフィンランドの子どもたちの自閉症の割合の違いは、両国の薬剤に関する政策(薬の使い方や規制)が影響している可能性があります。
割礼の習慣がある地域では、手術後に鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)を使うかどうかが関係していることも考えられます。さらに、医薬品が手に入りにくい国では自閉症の発症率が低いというデータもあります。これらの小さな事例がパズルのピースのようにつながり、星座のようにひとつの大きな絵を描いているのです。
小児集団でアセトアミノフェンの使用量が増えるほど、自閉症の割合も増えるという強い関連が時間を追って見られています。
1980年代には解熱薬の主力がアスピリンからアセトアミノフェンへ大きく切り替わり、その時期と消費者向けの薬の宣伝が増えたタイミングは、自閉症が急増するパンデミックとなった時期とぴったり重なります。
2008年の研究²²では、アセトアミノフェンを使った子どもで、退行性自閉症スペクトラム障害を発症するリスクが統計的に20倍高いことが示されました。
このように、さまざまな社会習慣や薬の使用状況、大規模な消費行動の変化がつながって、近年の自閉症の爆発的増加を生み出している可能性があります。パズルのピースがひとつにつながることで「真実の全体像」が浮かび上がります²²。
現在の証拠は、アセトアミノフェンが完全に安全であるという仮定に重大な疑問を投げかけています。2022年の系統的レビュー²⁴では、乳幼児におけるアセトアミノフェン使用が神経発達に対して安全性が証明されたことは一度もないことが明らかになりました。
医学界の反応やNBCの報道は、まるで法廷で検察側の証拠だけを提示して判決を下すようなものでした。これは、オメガ3(プーファ)、エストロゲンやセロトニンなどの礼賛や砂糖悪玉説にも言えることです。真のサイエンスは、都合の良い証拠だけを選び出すのではなく、すべての証拠を公平に評価することから始まります。
参考文献
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