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『魔法の痩せ薬”の落とし穴:オゼンピックの胎児へのリスク』

 

『魔法の痩せ薬の落とし穴:オゼンピックの胎児へのリスク』

 

 

9月17日発売の拙著『医者が教える世界一わかりやすい薬のやめ方』が皆さんのお手元に届いたというメッセージをいただきました。

 

 

 

薬をやめて健康になる具体的方法を解説した拙著『医者が教える世界一わかりやすい薬のやめ方』が、ご好評いただき感謝しています。

 

 

 

本書では、今世界中で“奇跡の痩せ薬”と持てはやされるオゼンピック(セマグルチド)などGLP-1受容体作動薬(本来は糖尿病治療薬)の落とし穴を、徹底的に解説しています。

 

 

 

しかし、実は紙幅の都合で書き切れなかった「この薬の重大なリスク」があります。今回は、その見過ごせない危険を警告します。

 

 

  • 動物実験が知らせる「危険信号」

 

アムステルダム大学の動物研究では、妊娠中にGLP-1受容体作動薬を使うと、赤ちゃんの成長遅延や骨格の異常が起きやすくなる――そんなショッキングな警告が出ています。現時点で人間に関するデータは十分ではありません。しかし、まるで炭鉱のカナリアのように、動物実験の警告は「今ここに危険がある」と私たちに叫んでいるのです。

 

 

最近の研究では、妊婦の体内でこの薬が胎児の成長を妨げることも分かってきました。妊娠中の使用には、極めて慎重になるべきです。

 

 

 

さらにオーストラリアの最新大規模調査では「妊娠適齢期の多くの女性が、危険を知らずに避妊せずこの薬を使っている」という衝撃事実も明らかになりました。

 

 

 

  • 爆発的普及:砂糖に群がるアリ状態

 

『Medical Journal of Australia』によると、2011~2022年の間に、18歳~49歳の女性160万人超の診療データが解析されました。そのうちGLP-1受容体作動薬を初めて処方された女性18,010人で、避妊を確実にしていた人はたった21%しかいなかったのです。

 

 

 

言い換えれば、8割近くの女性が「妊娠リスクを抱えながら薬を使っていた」計算です。これは、まるで傘を持たずに大雨の中を歩くようなもの。リスクがすぐそこに迫っています。

 

 

 

  • 本来の目的から美容目的へ

 

GLP-1作動薬は、もともとは2型糖尿病患者の治療薬。しかし今や「痩せ薬」として世界的にブームになり、実際には糖尿病でない女性に多く処方されている――まさに用途が劇的に変化しているのです。

 

 

2022年には6,000人以上の女性が新たに使い始め、その9割以上は糖尿病の診断を受けていなかったという報告もあります。まさに社会現象です。

 

 

 

  • 見過ごされる「隠れた危険」

 

薬剤師でもある研究者ルーク・グジェスコヴィアク准教授は、「妊娠適齢期女性での普及に対し、避妊の徹底という常識が守られていない」と強く警鐘を鳴らします。実際、GLP-1薬剤を使い始めて半年以内に妊娠した女性は2.2%、特に糖尿病のある若年層女性や健康な30代前半女性でその割合が高かったのです。

 

 

さらに、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性は妊娠率が2倍に増えており、減量効果が妊娠しやすさを高め“諸刃の剣”となっています。

 

 

 

  • 国際的ガイドラインからのズレ

 

イギリスでは、GLP-1受容体作動薬を使う女性には「妊娠回避と有効な避妊」を強く指導しています。しかし、オーストラリアなどではその指導が徹底されていません。

 

 

 

このままでは、“薬害”として悪影響が明るみになるころには手遅れになります。

 

 

 

  • 「魔法の薬」は存在しない

 

一時の流行に流されず、科学的なリスクを踏まえた賢い判断こそが身を守ります。自然の理(ことわり)として、“魔法の薬”など存在しません。

 

 

 

このように、GLP-1受容体作動薬には、予想外のリスクと社会的な影響が隠れています。「痩せたい気持ち」や「流行」だけで安易に手を出す前に、正しい情報を知り、ご自身と大切な方の未来を守ってください。

 

 

魔法の薬など存在しないことは、自然の理(ことわり)です。

 

 

 

参考文献

 

  1. Muller DRP, Stenvers DJ, Malekzadeh A, et al. Effects of GLP-1 agonists and SGLT2 inhibitors during pregnancy and lactation on offspring outcomes: a systematic review of the evidence. Frontiers in Endocrinology 2023, 14, 1215356

 

  1. Qiao L, Lu C, Zang T, et al. Maternal GLP-1 receptor activation inhibits fetal growth. American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism 2024, 326, E123-E135

 

  1. Thapaliya K, Grzeskowiak LE, et al. Incidence of GLP-1 receptor agonist use by women of reproductive age attending general practices in Australia, 2011-2022: a retrospective open cohort study. Medical Journal of Australia 2025, 223, 1-8

 

  1. Dao K, Shechtman S, Weber-Schoendorfer C, et al. Use of GLP1 receptor agonists in early pregnancy and reproductive safety: a multicentre, observational, prospective cohort study. BMJ Open 2024, 14, e083550

 

  1. Price SAL, Nankervis A. Considering the use of GLP-1 receptor agonists in women with obesity prior to pregnancy: a narrative review. Archives of Gynecology and Obstetrics 2025, 312, 1-15

 

  1. Gill L, Mackey S. Obstetrician-Gynecologists’ Strategies for Patient Initiation and Maintenance of Antiobesity Treatment with Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists. Journal of Women’s Health 2021, 30, 1456-1463

 

  1. Duah J, Seifer DB. Medical therapy to treat obesity and optimize fertility in women of reproductive age: a narrative review. Reproductive Biology and Endocrinology 2025, 23, 15

 

Parker CH, Slattery C, Brennan DJ, et al. Glucagon‐like peptide 1 (GLP‐1) receptor agonists’ use during pregnancy: Safety data from regulatory clinical trials. Diabetes, Obesity and Metabolism 2025, 27, 1234-1245

 

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