『健康の常識を覆す:私たちの食卓に忍び寄る「静かな危険」—調理油に潜む発がんリスクの真実』
日常に潜む危険:愛用の調理油が健康を脅かす可能性
あなたが毎日使っている調理油(植物油脂)が、実は健康上の重大なリスクをもたらしているかもしれません。長年「健康的」と信じられてきた多価不飽和脂肪酸(PUFA)、特に植物油や種子油に豊富に含まれるリノール酸(LA)が、攻撃的ながんの発症と進行を促進する可能性が最新の研究で明らかになりました。
『サイエンス』誌に掲載された画期的な最新の研究によると、ヒマワリ油、コーン油、大豆油などの一般的な調理油に含まれるリノール酸が、治療が難しく生存率の低い「トリプルネガティブ乳がん(TNBC)」の発症を促進する可能性があることが示されています。
参考文献
・Direct sensing of dietary ω-6 linoleic acid through FABP5-mTORC1 signaling. Science. 2025 Mar 14;387(6739):eadm9805
「健康油」というマーケティングの落とし穴
何十年もの間、医薬品業界はPUFAの血中コレステロール低下作用を称賛し、その摂取を推奨してきました。しかし、複数の研究結果が示す新たな事実は衝撃的です—血中コレステロールの低下は心臓病リスクの良い指標ではなく、むしろがん発症のリスク因子になります。
さらに驚くべきことに、スタチン(コレステロール低下薬)の服用による意図的なコレステロール低下が将来のがんリスク増加と関連していることが示されています(次作の『世界一やさしい薬のやめ方』に多数のエビデンス掲載)。食品業界や医療業界が「天然のスタチン」として宣伝しているPUFAにも、同様の危険な関連性が存在する可能性が高いのです。
ちなみに、スタチン製剤の副作用を調べると、ありとあらゆる病態(病気のデパート)が出てきます。
参考文献
・Meta-analysis says low LDL cholesterol may be associated with greater risk of cancer. BMJ. 2007 Jul 28;335(7612):177.
メカニズムが解明された「静かな発がん促進者」
最近の研究では、リノール酸ががん発症・進行を促進する具体的なメカニズムが解明されました。リノール酸は「脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)」と呼ばれる酵素と結合して活性化し、その結果、腫瘍の成長を促進するのです。
「脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)」は、患者由来の腫瘍において最大10倍に増加し、予後不良と強く関連しています」と研究は報告しています。
さらに懸念すべきことに、FABP5の発現は乳がんだけでなく、肝がん、前立腺がん、脳腫瘍、扁平上皮がんなど多くのがん種で上昇していることが確認されています。
もちろん、このメカニズムはプーファがガンを促進する多くのメカニズムのうちの一つに過ぎません。
参考文献
The emerging role of fatty acid binding protein 5 (FABP5) in cancers. Drug Discov Today. 2023 Jul;28(7):103628.
現代食の歴史的転換点とがん増加の関連性
特に注目すべきは、リノール酸の摂取量が1950年代以降急増していることです。拙著や過去記事等でも繰り返しお伝えしていますが、この増加は、心血管疾患とがん発症率の上昇と時期的に一致しています。現代の食生活において、リノール酸は揚げ物や超加工食品に広く使用される植物油を通じて大量に摂取されるようになりました。
リノール酸は炎症の主要な駆動因子であり、慢性炎症はがんをはじめとするほぼすべての慢性疾患の発症における主要な原因因子です。こうした科学的事実から、リノール酸が真の発がん物質である可能性は否定できません。
健康を守るための実践的対策
一般的にリノール酸を多く含む植物油・種子油には、ヒマワリ油、コーン油、サフラワー油、大豆油、綿実油などがあります。対照的に、ココナッツオイル、バターなどはリノール酸含有量が比較的低く、代替として検討する価値があるでしょう。
ナッツ類、肉、卵にもリノール酸は含まれますが、調理油に比べるとその量ははるかに少ないことも知っておくべき重要なポイントです。
私たちの食卓を守るために必要なのは、科学的根拠に基づく食品選択と、長年の「常識」を盲目的に信じないことなのかもしれません。
健康的と信じられてきた食品が、実は静かに健康を蝕んでいる可能性があることを、最新の研究は私たちに警告しています。