『超加工食品と「筋肉の霜降り化」』
体重が何キロ増えた、何キロ減った。私たちは食生活の成果を、体重計の数字で確かめようとします。
しかし、身体の重さが分かっても、その中身までは見えてきません。同じ重さの旅行かばんでも、何が詰まっているかによって使い道が変わるように、身体についても「何キロあるか」に加えて、「何でできているか」が大切です。
そこで今、注目されているのが、太ももの筋肉の中に入り込んだ脂肪です。
いわゆる「筋肉の霜降り(しもふり)」化です。
2026年、医学誌『ラジオロジー(Radiology)』に、超加工食品を多く食べる人ほど、太ももの筋肉内に脂肪が多く見られるという研究が掲載されました。お腹や腰まわりにつく脂肪とは別に、身体を動かす筋肉の奥深くにも、食生活との関係がうかがえる変化が見つかったのです[1]。
赤身の間に白い脂が入り込んだ、霜降り肉を思い浮かべてください。今回の研究が光を当てたのは、それに似た、外見からは気づきにくい筋肉の変化でした。
⭐️膝に痛みがない人の筋肉にも、違いが見えていた
米国で進められている大規模な膝関節症研究のデータから、615人の食生活と太もものMRI画像の関連が調べられました。
参加者の平均年齢は約60歳。膝関節症を起こすリスクはあるものの、膝や股関節に痛みがなく、X線でも明らかな変形性関節症が認められていない人たちでした。食事に関する質問票から算出した、超加工食品の摂取割合は平均約41%でした[1]。
研究チームは、MRIで筋肉内の脂肪の見え方を段階的に採点しました。すると、食事に占める超加工食品の割合が高い人ほど、太ももの筋肉をまとめて評価した脂肪のスコアが高くなっていました。
さらに、摂取カロリー、身体活動量、年齢、体格などの影響を計算に入れても、この関係は残っていました。食事と筋肉のつながりを考える際には、「どれくらい食べたか」「どれくらい動いたか」に加えて、「何を食べていたか」も調べる価値があるという結果です[1]。
この研究は、ある時点の食生活と筋肉の状態を照らし合わせた観察研究です。食生活を変えた後に筋肉の中身がどう変化するかを追跡することが、次の検証につながります。
⭐️超加工食品とは、「成分を組み立てた人工食品」
超加工食品では、食品から取り出した加工でんぷん、植物油脂(プーファ)、たんぱく質などを組み合わせ、香り、色、口当たり、保存性などを調整して製品に仕上げます。家庭の台所ではあまり使わない原料や、風味・食感を整える添加物が、その特徴を見分ける手がかりになります[2]。
菓子パン、スナック菓子、清涼飲料、一部の加工肉や調理済み食品などが、超加工食品に含まれます。
同じパンでも、材料が小麦粉、水、塩、酵母を中心とするものと、さまざまな成分で風味や食感を調整したものでは、分類が変わります。冷凍野菜や殺菌した牛乳は、最小限の加工をした食品です。また、砂糖、塩、油などは、調理に使う材料のグループに位置づけられています[2]。
つまり、見るべきなのは、「加工してあるかどうか」という一つの言葉よりも、何を材料に、どのように作られているかなのです。
⭐️食べる量は、食品の側からも左右される
超加工食品と身体の関係を考えるうえで、興味深い実験があります。
2019年の臨床研究では、成人20人に研究施設へ入院してもらい、超加工食品中心の食事と、未加工・最小限加工の食品を中心とした食事を、それぞれ2週間ずつ食べてもらいました。参加者全員が両方の食事を経験し、どちらを先に食べるかは無作為に決められました[3]。
提供する食事は、カロリーや主要な栄養素などをできるだけそろえ、そのうえで、参加者には好きな量を食べてもらいました。
すると、超加工食品中心の食事では、実際の摂取量が平均で1日約508キロカロリー多くなりました。体重も、超加工食品中心の2週間では平均約0.9キログラム増え、未加工食品中心の2週間では平均約0.9キログラム減っていました[3]。
同じ人でも、目の前に用意される食事が変わると、食べる量が変わったのです。
この結果は、食べ過ぎを考えるときに、本人の意志だけでなく、食品の特徴にも目を向ける大切さを教えてくれます。
健康との関連を広く調べた研究もあります。2024年に『BMJ』に掲載された包括的レビューでは、延べ約989万人分のデータを含む45の統合解析を評価し、超加工食品の摂取が多いことと、死亡、心血管系の病気、2型糖尿病、精神的な不調など、32の健康指標との関連を報告しました。研究ごとに根拠の確かさには幅があり、多くは人々の食生活を観察したデータですが、食事と健康のつながりを幅広く描き出した報告です[4]
⭐️脂肪は、「どこにあるか」も大切
脂肪というと、お腹のふくらみや、皮膚の下につまめる部分を思い浮かべるでしょう。しかし、脂肪が蓄積する場所は、それだけではありません。筋肉と筋肉の間や、一つの筋肉の内部にも脂肪組織があります。
筋肉は、力を出す細い線維が集まってできています。たくさんの糸を束ねたロープのような構造です。その内部に脂肪が増えると、外から見た太さだけでは分からない、組織の構成の違いが生まれます。研究では、こうした脂肪の量や分布を、筋肉の状態を知る手がかりとして調べています[5]。
2023年に『ネイチャー・レビューズ・エンドクリノロジー(Nature Reviews Endocrinology)』に掲載された総説では、筋肉周囲・内部の脂肪組織が、インスリン抵抗性や身体機能の低下と結びついていることが指摘されました[5]。
インスリン抵抗性とは、血液中の糖を取り込むよう促すインスリンの働きに、身体が反応しにくくなった状態です。筋肉は糖を受け取り、利用する重要な場所なので、筋肉の状態は、歩く力や立ち上がる力だけでなく、糖の代謝とも関係します。
また、筋肉の近くにある脂肪組織については、周囲に放出する物質や炎症との関わりも研究されています。筋肉そのものに加え、筋肉が働く「周辺環境」にも目を向ける必要があるのです[5]。

⭐️膝を守るには、筋肉の「太さ」と「中身」を見る
膝を、扉の蝶番にたとえてみましょう。
扉を滑らかに動かすには、蝶番の状態に加えて、扉全体を支え、動きを安定させる仕組みも大切です。人の膝では、その重要な役割を太ももの筋肉が担っています。膝を伸ばしたり、立ち上がったり、歩くときに身体を支えたりする筋肉です[7]。
2014年に掲載された研究では、太ももの前側にある大腿四頭筋の大きさよりも、内部に占める脂肪の割合が、変形性膝関節症と関連していました。筋肉の太さを測ることに、筋肉の中身を調べることを加える意味が、ここにあります[6]。
さらに、2022年の『Radiology』の研究では、MRIを使って筋肉の変化を数年にわたり追跡しました。変形性膝関節症がある人では、ない人に比べて、大腿四頭筋が小さくなる変化と、筋肉内の脂肪が増える変化が大きくなっていました。そして、これらの変化は、その後の膝の症状の悪化とも関連していました[7]。
こうした結果から見えてくるのは、関節と筋肉を一緒に考える大切さです。膝の健康を考えるときには、軟骨や骨の状態とともに、その膝を日々支えている筋肉にも目を向ける必要があります。
⭐️食卓と膝のつながりを調べる研究も進んでいる
超加工食品と関節の状態を直接調べた研究もあります。
2024年、英国バイオバンクの約16万4,000人を追跡した研究では、超加工食品の摂取が最も多いグループは、最も少ないグループに比べ、変形性膝関節症の発症リスクが相対的に約10%高くなっていました。股関節については明確な関連が見られず、関節の場所によって結果に違いがありました[8]。
病気の種類による違いもあります。2025年の米国の研究では、超加工食品の摂取と、自己申告による関節炎全体や関節リウマチとの関連が見られました。一方、変形性関節症については、統計的に明確な関連が見られませんでした。食事と関節の関係は、対象となる病気や調査方法を分けながら、詳しく調べられています[9]。
2025年に米国の膝関節症研究に参加した4,403人のデータを解析研究では、とくに女性で、超加工食品の摂取割合が高いほど、膝の痛みが強い、日常動作に支障がある、歩行が遅い、MRIで測定した軟骨が薄いといった特徴との関連が認められました[10]。
同じ研究基盤を用いた2026年の論文では、そこに「筋肉内の脂肪」という新たな観察項目が加わりました。食事、筋肉、関節。それぞれ別々に見ていた身体の問題が、少しずつ同じ画面の中に収まり始めています。
⭐️カロリーが足りていても、筋肉を養う材料が不足することがある
筋肉については、脂肪の入り込み方だけでなく、筋肉量との関係も調べられています。
2024年の研究では、米国の全国健康・栄養調査に参加した20〜59歳の成人1万255人を解析しました。年齢や生活習慣などの影響を調整すると、超加工食品の摂取割合が高い人ほど、体格に対して手足の筋肉量が少ない状態に該当しやすいという関連が見られました。若い世代や中年世代にも、食事と筋肉を一緒に考える必要性を示す結果です[11]。
2025年には、超加工食品中心の食生活と、加齢に伴う筋肉量や筋力・身体機能の低下を特徴とする「サルコペニア」との関係を整理した総説も発表されています。そこでは、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの不足や、肥満、炎症といった複数の経路が検討されています[12]
カロリーを満たすことと、筋肉の維持に必要な栄養を満たすことは、両方そろえて考える課題です。食事が特定の製品に偏ると、十分に食べているつもりでも、身体を維持するための栄養に不足が生じることがあります[12]。
今回の研究で使われたMRIは、皮膚の上から眺めるだけでは分からない、筋肉内部の脂肪を映し出しました。この視点を日常生活に取り入れるなら、まずは普段よく食べている食品の原材料表示を見るところから始められます。
例えば、いつもの菓子パンやスナック、調理済み食品が、どのような材料でできているかを確かめる。そして、それらだけで食事を済ませる回数を減らし、食べ慣れた主食に、卵、乳製品、肉や果物など、なるべく加工度の低い食材全体を摂取する。
このことによって、筋肉の霜降り化が軽減し、筋肉本来の働きができるようになるでしょう。
参考文献
[1]Akkaya Z, Joseph GB, Ziegeler K, et al. Ultra-processed Foods and Muscle Fat Infiltration at Thigh MRI: Data from the Osteoarthritis Initiative. Radiology. 2026;319(1):e251129. doi:10.1148/radiol.251129.
[2]Monteiro CA, Cannon G, Levy RB, et al. Ultra-processed foods: what they are and how to identify them. Public Health Nutr. 2019;22(5):936-941. doi:10.1017/S1368980018003762.
[3]Hall KD, Ayuketah A, Brychta R, et al. Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain: An Inpatient Randomized Controlled Trial of Ad Libitum Food Intake. Cell Metab. 2019;30(1):67-77.e3. doi:10.1016/j.cmet.2019.05.008.
[4]Lane MM, Gamage E, Du S, et al. Ultra-processed food exposure and adverse health outcomes: umbrella review of epidemiological meta-analyses. BMJ. 2024;384:e077310. doi:10.1136/bmj-2023-077310.
[5]Goodpaster BH, Bergman BC, Brennan AM, Sparks LM. Intermuscular adipose tissue in metabolic disease. Nat Rev Endocrinol. 2023;19(5):285-298. doi:10.1038/s41574-022-00784-2.
[6]Kumar D, Karampinos DC, MacLeod TD, et al. Quadriceps intramuscular fat fraction rather than muscle size is associated with knee osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2014;22(2):226-234. doi:10.1016/j.joca.2013.12.005.
[7]Mohajer B, Dolatshahi M, Moradi K, et al. Role of Thigh Muscle Changes in Knee Osteoarthritis Outcomes: Osteoarthritis Initiative Data. Radiology. 2022;305(1):169-178. doi:10.1148/radiol.212771.
[8]Wei Y, Zhang T, Liu Y, et al. Ultra-processed food consumption, genetic susceptibility, and the risk of hip/knee osteoarthritis. Clin Nutr. 2024;43(6):1363-1371. doi:10.1016/j.clnu.2024.04.030.
[9]Zhu Y, Garcia-Larsen V, Bromage S, et al. Association Between Ultraprocessed Food Intake and Self-Reported Arthritis. Am J Prev Med. 2025;68(6):1109-1119. doi:10.1016/j.amepre.2025.02.010.
[10]Akkaya Z, Sims WM, Lynch JA, et al. Ultra-processed food consumption is associated with knee osteoarthritis: Data from the Osteoarthritis Initiative. Osteoarthritis Cartilage. 2025;33(9):1130-1140. doi:10.1016/j.joca.2025.05.011.
[11]Kong W, Xie Y, Hu J, Ding W, Cao C. Higher ultra processed foods intake is associated with low muscle mass in young to middle-aged adults: a cross-sectional NHANES study. Front Nutr. 2024;11:1280665. doi:10.3389/fnut.2024.1280665.
[12]Parlak Baskurt H, Yardımcı H. Consumption of ultra-processed foods can accelerate age-related appearance of sarcopenia. Biogerontology. 2025;26:112. doi:10.1007/s10522-025-10253-8.

















