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朝の塩が体を目覚めさせる——白湯に塩ひとつまみで「巡る水」に変わる習慣

朝の塩が体を目覚めさせる——白湯に塩ひとつまみで「巡る水」に変わる習慣

 

 

目覚めたばかりの朝、まだ体がぼんやりとしている時に何を飲むか。この選択が実は、一日の体のリズムを左右する重要な鍵を握っています。

 

 

 

「白湯を飲むと体にいい」というのはよく耳にする話ですが、これはかえって体を冷やして代謝を落とす原因になります。しかし、そこにほんの少しだけ塩を加えると、覚醒効果が高まることをご存知でしょうか。

 

 

まるで川の水が海に注がれるように、体の中にも「流れ」が存在します。この流れがスムーズであれば、私たちは軽やかに一日をスタートできますが、流れが滞っていると、体は重く、動きも鈍くなってしまいます。朝の「塩白湯」は、まさにこの体内の流れをスムーズにするための、シンプルで効果的な習慣です。

 

 

 

⭐️白湯と塩の組み合わせが生み出す効果

 

私たちは夜眠っている間、約8時間もの間、水分を摂っていません。この間に、体は呼吸や汗によって少しずつ水分を失っています(1)。まるで土が乾いたスポンジのように、朝の体は水分を待っているのです。

 

 

 

しかし、ただの水を飲んでも、実は体に十分に留まってくれるとは限りません。ここで重要な役割を果たすのが「塩」、つまりナトリウム(sodium)です。

 

 

2004年の研究では、水分補給において電解質(electrolyte)のバランスが非常に重要であることが示されています(2)。水だけを飲んだ場合と比較して、ナトリウムを含む飲料を摂取した方が、体内の水分保持が効率的に行われるのです。

 

 

これは、ナトリウムが水分の吸収と保持に深く関わっているためです(3)。

 

 

 

具体的には、白湯に塩を加えることで次のような効果が期待できます。まず、水分と電解質のバランスが整い、朝の軽い脱水状態からすばやく回復できます。次に、血流の維持をサポートし、体温を効率的に上昇させます(4)。

 

 

さらに、塩に含まれるミネラルが胃腸を刺激し、腸の蠕動運動(peristalsis)を促進します(5)。そして最も重要なのは、水分が体に保持し、血流を高めるという点です(3)。

 

 

 

⭐️温かい水が腸の動きを呼び覚ます

白湯の温度も、実は重要な要素です。2020年の研究によれば、温かい水を飲むことで胃の蠕動運動が活発になることが分かっています(6)。

 

 

 

冷たい水を飲んだ場合と比較すると、37度から60度の温かい水を飲んだ方が、胃の収縮運動の頻度が高まり、消化器系の働きが活性化するのです。

 

 

さらに、2016年の臨床研究では、術後の患者に温かい水を飲んでもらったところ、腸の動きが早期に回復し、ガスの排出時間が大幅に短縮されたことが報告されています(5)。

 

 

 

この研究では、温かい水が腸の痙攣を和らげ、蠕動運動を助ける効果があることが示されました。健康な人においても、同様の効果が期待できると考えられます。

 

 

 

つまり、「塩白湯」は、朝の水分とミネラル補給を兼ね備えた、シンプルながらも理にかなったセルフケアなのです。活動の前に飲めば、体が目覚めやすくなり、動きもスムーズに巡りやすくなります。

 

 

 

⭐️朝に実践するための具体的なポイント

この習慣を取り入れるには、特別な準備は必要ありません。次のステップに従うだけです。

 

 

 

まず、白湯を40度から50度に温めます。熱すぎると胃を刺激してしまうため、少しぬるめがおすすめです。手のひらで触れて「心地よい温かさ」と感じる程度が理想的です。

 

 

 

次に、自然塩をひとつまみ、量にして約0.3グラムから0.5グラムを加えます(7)。ここで重要なのは、精製塩ではなく、ナトリウム以外の微量ミネラルを含む海塩や岩塩を選ぶことです。自然塩には、マグネシウム(magnesium)やカリウム(potassium)などの微量ミネラルが含まれており、体の調子を整えるのに役立ちます(8)。

 

 

そして、朝起きてすぐ、ゆっくりと飲みます。ゴクゴクと一気に飲むのではなく、口の中で温度を感じながら、少しずつ飲むのがポイントです。まるで、植物に水を与えるように、体に優しく水分を染み込ませていくイメージです。

 

 

 

⭐️冷えやむくみに悩む方へ

冷えやむくみ、朝の重だるさを感じやすい人には、日光浴以外にも特にこの習慣がおすすめです。1990年の研究では、体温調節において、血液量と電解質のバランスが重要な役割を果たしていることが示されています(4)。体が十分に水分を保持していないと、血流が滞り、体温も上がりにくくなってしまうのです。

 

 

 

特別な準備はいらず、毎朝キッチンで簡単にできるミネラル補給習慣です。一日のスタートを朝の一杯から、穏やかに体のリズムを整えていきましょう。いつもの白湯に塩をひとつまみ加えるだけで、体の水分とミネラルバランスを整えて、「巡る白湯」に変わります。まるで、静かな池に小石を投げ込むと波紋が広がっていくように、この小さな習慣が、みなさんの一日全体に良い影響を与えてくれるはずです。

 

 

参考文献

(1) Rodriguez-Giustiniani, P., et al. Influence of peak menstrual cycle hormonal changes on restoration of fluid balance after induced dehydration. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 2019, 29(6), 651-658.

 

(2) Shirreffs, S.M., Armstrong, L.E., et al. Fluid and electrolyte needs for preparation and recovery from training and competition. Food, Nutrition and Sports Performance, 2004, 292-302.

 

(3) Hunt, J.B., et al. Water and solute absorption from a new hypotonic oral rehydration solution: evaluation in human and animal perfusion models. Gut, 1992, 33(12), 1652-1656.

 

(4) Morimoto, T. Termoregulation and body fluids: role of blood volume and central venous pressure. The Japanese Journal of Physiology, 1990, 40(2), 165-179.

 

(5) Çalişkan, N., Bulut, H., Konan, A. The effect of warm water intake on bowel movements in the early postoperative stage of patients having undergone laparoscopic cholecystectomy: a randomized controlled trial. Gastroenterology Nursing, 2016, 39(5), 340-347.

 

(6) Fujihira, K., Hamada, Y., Yanaoka, T., Yamamoto, R., Suzuki, K., Miyashita, M. The effects of water temperature on gastric motility and energy intake in healthy young men. European Journal of Nutrition, 2020, 59(1), 103-109.

 

(7) Elliott, E.J., Cunha-Ferreira, R., Walker-Smith, J.A., Farthing, M.J. Sodium content of oral rehydration solutions: a reappraisal. Gut, 1989, 30(11), 1610-1621.

 

(8) Pop, M.S., Cheregi, D.C., Onose, G., Munteanu, C., et al. Exploring the potential benefits of natural calcium-rich mineral waters for health and wellness: A systematic review. Nutrients, 2023, 15(14), 3126.

 

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