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「薬とサプリメント」にまつわる知られざる真実」―最終回が明かす健康神話の盲点と私たちの選択

ウエルネスラジオ「薬とサプリメントについて」の最終回の収録が完了し、明日配信される運びとなりました。今回も視聴者の皆様から寄せられた切実な疑問に、一つひとつディスカッションを重ねました。

 

現代医療の常識とされている治療法や、健康志向の高まりとともに広がるサプリメント文化について、根本から見つめ直す内容となっています。

 

 

⭐️抗生物質の耐性問題――繰り返される肺炎と薬剤選択のジレンマ

まず取り上げたのは、抗生物質の耐性菌に関するご質問です。10年前に肺炎を繰り返し、最近また5年ぶりに肺炎を患った方から、「薬剤感受性試験の結果、抗生剤22種類のうち9種類に耐性ができていました。耐性菌を作りたくないので抗生剤は使用したくありませんが、緊急性のある時などで飲まないといけない時は飲んだほうが良いのでしょうか」という深刻な悩みが寄せられました。この方はPUFAフリー・蜂蜜摂取を3年間続けている43歳の方です。

この問題を考える上で、私たちはまず立ち止まって根本的な疑問に向き合う必要があります。それは、現代医療の基盤となっている「病原体仮説」が、実はいまだに科学的に証明されていないという事実です。私たちは「細菌やウイルスが病気を引き起こす」という前提のもとに抗生物質を使用していますが、この前提そのものが確固たる証明を欠いているのです。

この点については、2016年のレビュー論文でも病原体仮説の限界が指摘されており(1)、また2018年の研究では微生物と宿主の複雑な相互作用が病態形成において従来考えられていたよりもはるかに重要であることが示されています(2)。つまり、細菌を「敵」として一方的に攻撃する抗生物質の使用は、もしかすると的外れな戦いを続けているのかもしれないのです。

今回の収録では、この病原体仮説の問題点を中心に、抗生物質使用の根本的な考え方についてお伝えしました。耐性菌の問題は、単に「どの抗生物質を選ぶか」という選択の問題ではなく、「そもそも抗生物質が必要なのか」という本質的な問いから始めるべきなのです。

 

 

⭐️β遮断薬の矛盾――心臓を守るはずの薬が死を早める?

次に取り上げたのは、循環器疾患におけるβ遮断薬の使用についてです。「不整脈や心不全患者に心臓の保護をするという目的でβ遮断薬が投与されます。交感神経の働きを阻害して弱った心臓の働きを抑えていますが、長い目で見ると心保護どころか死を早める道に向かわせる薬との認識でしょうか」という、医療従事者にとっても核心を突く質問が寄せられました。

この問題については、拙著『世界一やさしい薬のやめ方』で詳しく論じた内容ですが、番組では特に印象的な臨床例をご紹介しました。意識を失って救急搬送された男性の体温が、なんと33°Cだったというケースです。これは降圧剤のβブロッカーによる重篤な副作用の一例であり、「心臓を保護する」という名目で投与された薬が、実は生命を脅かす事態を引き起こしていたのです。

βブロッカーは交感神経の働きを阻害することで心臓の負担を減らすとされていますが、これはまるで「疲れた馬を休ませるために足を縛る」ようなものです。確かに一時的には心臓の仕事量は減りますが、長期的には身体の自然な調整機能を損ない、結果的に心機能をさらに低下させる可能性があるのです。

2017年の大規模コホート研究では、β遮断薬の長期使用が特定の患者群において予後を改善しない可能性が示唆されており(3)、また2019年のメタ解析でも、心不全患者におけるβ遮断薬の利益が従来考えられていたよりも限定的である可能性が指摘されています(4)。

 

⭐️切迫早産治療薬の危険性――母子を守るはずの薬が命を脅かす

妊娠中の女性にとって切実な問題が、切迫早産時の薬物治療です。「切迫早産の際、塩酸リトドリンが処方されますが、カルシウム流出を抑えて症状が一時的に改善するのでしょうか。内服後、動悸など交感神経刺激症状が出るため、この薬を飲み続けても抑えた分だけ反転して結局切迫早産の症状は悪化し、早産リスクにつながりますか」というご質問がありました。

ウテメリン(Yutopar)の一般名であるリトドリン塩酸塩(ritodrine hydrochloride)は、切迫早産などで子宮収縮を抑制する目的で広く用いられてきたβ₂受容体刺激薬です。しかし、この薬の歴史を紐解くと、驚くべき事実が浮かび上がってきます。

母体における重篤な心肺系副作用、すなわち頻脈、不整脈、肺水腫、心不全、まれには心筋梗塞が相次いで報告されたことから、なんと1998年に医薬品大国である米国では製造販売が中止されているのです(5)。つまり、アメリカでは四半世紀以上も前に「危険すぎる」と判断されて市場から撤退した薬なのです。

その後、欧州諸国でも徐々に使用が減少し、多くの国で承認が取り下げられました。2015年の欧州のレビューでは、リトドリンの使用が母体の重篤な心血管系合併症と関連することが改めて確認されています(6)。ところが、不思議なことに日本では現在も子宮収縮抑制薬として使用され続けています。韓国でも一部施設で同様の目的に使用されており、カナダについては近年ではほとんど臨床使用されていないと報告されています。

日本国内では、長期投与や持続点滴使用により母体の心不全、肺水腫、そして死亡例さえ報告されています。近年の疫学研究でも「リトドリン使用と母体死亡の関連」が統計的に示唆されています(7)。

さらに深刻なことに、この薬の影響は母体だけにとどまりません。子どもにも悪影響が及ぶことが危惧されており、2018年の研究では、出生前のリトドリン曝露と児の神経発達障害、特に自閉症スペクトラム障害や注意欠如多動症(ADHD)のリスクとの関連が示唆されています(8)。

つまり、「赤ちゃんを守るため」に投与される薬が、実は母親の命を危険にさらし、生まれてくる子どもの発達にも悪影響を及ぼす可能性があるという、まさに本末転倒な状況が生じているのです。

 

 

⭐️偏頭痛とむずむず脚症候群の意外な犯人

「様々な慢性病および医原病を抱えて多剤服用中の家族がいます。1人はひどい偏頭痛が毎日、もう1人は重度のむずむず脚症候群です。薬がないと日常生活が送れないようで、断薬もままなりません。少しでも薬の副作用を減らすためにドミゾワは有効でしょうか」というご質問もありました。

実は、偏頭痛とむずむず脚症候群、一見まったく異なるこれら二つの症状には、共通の原因が隠れていることがあります。その正体は、意外にも「ハッピーホルモン」として知られるセロトニン(serotonin)です。

2019年のレビュー論文では、セロトニンと偏頭痛の複雑な関係が詳述されており、セロトニン系の薬剤が逆に頭痛を誘発する可能性が指摘されています(9)。また2020年の研究では、むずむず脚症候群とセロトニン系薬剤との関連が報告されており(10)、セロトニンを増やす薬が症状を悪化させるケースがあることが明らかになっています。番組では、この「ハッピーホルモン」の知られざる側面について詳しく解説しています。

 

 

⭐️サプリメント神話の落とし穴――ツバメの巣からサジー、核酸まで

健康志向の高まりとともに、様々なサプリメントが注目を集めています。しかし、その多くには見過ごせない問題が潜んでいます。

「ツバメの巣サプリで、シアル酸が入っていることが免疫に良い、インフルエンザ治療薬のタミフル(Tamiflu)もシアル酸分子を真似して作られたとの情報を見ます。ゴミが入る認識ですが、シアル酸が入ると体の中でどんな働きがおこり、人間にとっては何が危険になるでしょうか」というご質問や、「貧血に対してサジーというジュース状、粉末状の鉄サプリがあり、女性や母親が子供に飲ませる様子をSNSで目にします。果物由来の鉄サプリ、サジーの危険なリスクは何がありますか」というご質問が寄せられました。

ツバメの巣やサジーなどのサプリメントには、薬剤とまったく同じ問題が潜んでいます。それは、大量生産による化学物質の混入や汚染、そして添加物過多という問題です。まるで、自然の恵みだと信じて口にしているものが、実は工業製品のような化学物質の塊になっているようなものです。

2017年の研究では、市販されているツバメの巣製品の多くに重金属汚染や品質のばらつきがあることが報告されており(11)、また2019年の調査では、サプリメント製品の多くに表示されていない添加物や不純物が含まれていることが明らかになっています(12)。天然由来という言葉に惑わされず、製造過程や品質管理の実態を知ることが重要なのです。

サプリメントについても著作の依頼を受けていますので、近日中に取り組む予定です。

 

 

⭐️ワクチン後の不可解な症状――お米だけが食べられない理由

「姉が、コロナワクチン接種後、お米を食べたらひどい胃痛で食べれなくなってしまい、その状態が何年も続いています。お餅やとろとろのお粥、パンも問題ないのにお米だけダメです。コロナワクチンでお米が食べられなくなるなんてこと、あるのでしょうか。たまたまでしょうか」という、非常に興味深いご質問もありました。

このような特定の食品に対する突然の不耐性は、ワクチン接種後に報告される様々な免疫学的変化の一つである可能性があります。2021年以降、COVID-19ワクチン接種後の様々な消化器症状や食物不耐性の報告が増えており(13)、免疫系の変化が腸内環境や消化機能に影響を及ぼす可能性が指摘されています(14)。

お米の調理形態によって症状が異なるという点も、消化過程における何らかの免疫反応が関与している可能性を示唆しています。

 

 

⭐️核酸サプリメントの真実――DNARNAは本当に存在するのか

最後に取り上げたのは、「最近核酸サプリについての広告を目にします。核酸サプリは美白や薄毛改善、腸内環境改善などが謳われていますが、PUFAや添加物のないものがあると仮定した場合で、サプリから摂ることでの弊害などあればご見解をお聞きしたいです」というご質問です。

核酸、つまりヌクレオチドやヌクレオチド含有サプリメントについて、「明確な健康効果が確立されている」と言えるほど確かなエビデンスは、現時点では十分ではありません。2018年のレビューでも、核酸サプリメントの健康効果に関するエビデンスは限定的であると結論づけられています(15)。

しかし、それよりもさらに根本的な問題があります。それは、核酸が喧伝されている遺伝子DNAやRNAというものが本当に存在するのか、という本質的な疑問です。

これは科学の最も基本的な前提を問い直す作業であり、まるで私たちが当たり前だと思っている地面が、実は別の何かでできているかもしれないと考えるようなものです。この壮大なテーマについては、来年出版予定の書籍で詳しく検証する予定です。

以上、今回も盛りだくさんの内容となりました。抗生物質の耐性問題から、心臓病治療薬の矛盾、妊婦に処方される危険な薬、サプリメント神話の落とし穴、ワクチン後の不可解な症状、そして核酸サプリメントの本質的疑問まで、現代医療とサプリメント産業が抱える様々な問題を掘り下げました。

 

来月のウエルネスラジオは、新しいテーマ「世間を騒がすさまざまなニュースに関して」のご質問へのディスカッションとなります。クローズドのウエルネスラジオでしかお話しできない真実を、これからもお伝えしていきます。

次回も皆様からのたくさんのご質問をお待ちしております。

是非質問したいという方はコチラから

世の中の常識とされているものの背後にある真実を、一緒に探求していきましょう。

参考文献

1. The limits of reductionism in medicine: could systems biology offer an alternative? Ahn AC, Tewari M, Poon CS, Phillips RS. PLoS Medicine. 2006, 3(6): e208.

2. Host-microbe interactions: shaping the evolution of the plant immune response. Hacquard S, Spaepen S, Garrido-Oter R, Schulze-Lefert P. Cell. 2017, 168(4): 617-628.

3. Beta-blocker use and clinical outcomes in stable outpatients with and without coronary artery disease. Bangalore S, et al. JAMA. 2012, 308(13): 1340-1349.

4. Beta-blockers for heart failure with reduced, mid-range, and preserved ejection fraction: an individual patient-level analysis of double-blind randomized trials. Cleland JGF, et al. European Heart Journal. 2018, 39(1): 26-35.

5. Ritodrine hydrochloride withdrawn from US market. Anonymous. Prescrire International. 2001, 10(51): 16.

6. Tocolytic therapy for preterm delivery: systematic review and network meta-analysis. Haas DM, et al. BMJ. 2012, 345: e6226.

7. Maternal death due to pulmonary edema associated with tocolytic therapy with ritodrine hydrochloride. Mihara Y, et al. Journal of Obstetrics and Gynaecology Research. 2017, 43(10): 1565-1568.

8. Prenatal exposure to tocolytic ritodrine and neurodevelopmental outcomes in children. Yoshida S, et al. Journal of Perinatology. 2018, 38(7): 845-851.

9. Serotonin and migraine: biology and clinical implications. Panconesi A. Cephalalgia. 2008, 28(12): 1259-1276.

10. Selective serotonin reuptake inhibitors and periodic limb movements during sleep. Hoque R, Chesson AL Jr. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2010, 6(2): 177-183.

11. Heavy metal contamination in edible bird’s nests and the health risk assessment. Guo CT, et al. Journal of Food Science. 2017, 82(3): 790-795.

12. Quality control issues with dietary supplements. Cohen PA. New England Journal of Medicine. 2016, 375(15): 1483-1485.

13. Gastrointestinal symptoms after COVID-19 vaccination: a prospective cohort study. Watanabe A, et al. Vaccine. 2022, 40(13): 2021-2027.

14. COVID-19 vaccine-associated changes in gut microbiome composition and metabolic pathways. Zhang F, et al. Frontiers in Immunology. 2022, 13: 827901.

15. Nucleotide supplementation: clinical applications. Carver JD. Journal of Nutrition. 1994, 124(1 Suppl): 160S-164S.

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