「旅するYouTuberの影に隠された真実―バッパー翔太氏失踪事件が問いかけるもの」
135万人の登録者を抱える旅行系YouTuber、バッパー翔太氏が2025年6月、新疆ウイグル自治区を取材した直後から約3ヶ月間消息を絶った―この事件は日本国内のみならず、国際社会に波紋を広げました。
多くのフォロワーの方々から見解を求められ、先日の大阪出版サイン会でも触れた内容を踏まえ、現段階での私の推測をここに記します。
■ 結論から言えば、彼は「観光客」ではない
旅行系YouTuberDrew Binsky氏とほぼ同様の映像を制作していたバッパー翔太氏―彼が西側勢力(あえて組織名は挙げません)の工作員、あるいは少なくともその資金援助を受けている可能性は、極めて高いと考えています。
両者の動画に共通するのは、NHKドキュメンタリーに匹敵するプロフェッショナルな編集技術です。これだけでも、背後に個人レベルを超えた組織の存在が透けて見えます。
■ Drew Binsky氏の「旅」が示す不自然な軌跡
Drew Binsky氏は「How I Got DETAINED Sneaking into North Korea」という動画で、ロシアと北朝鮮の国境付近で3時間拘束された経験を語っています。公式には「許可証なしの立ち入り」が理由とされていますが、通常の旅行者がこのような敏感地域に単独でアクセスすることは、ほぼ不可能です。
さらに彼は2025年の動画「Entering Syria in 2025 | New Government in Power」で、アサド政権崩壊直後のシリアを訪問し、新政府要職者と接触しています。新政権に賛辞を送っている時点で、その立場は明白でしょう。加えて、パラオやベリーズといった国家元首とも直接会談しています。
これは明らかに、一般の個人レベルを超える政治的コネクションの存在を物語っています。
■ 両者に共通する「越境」の痕跡
紛争地帯や制裁国への容易な入国、政治的に重要な時期における敏感地域への訪問―これらの活動は、通常の旅行系YouTuberの枠をはるかに超えています。
■ 新疆ウイグル自治区で彼が撮ったもの
2025年6月28日、バッパー翔太氏は「中国ウイグル自治区と強制収容所の実態がとんでもなかった」というタイトルの動画を公開しました。
ウルムチやカシュガルでの過剰な監視カメラ、警察の厳重警備、そして「職業訓練センター」と呼ばれる施設周辺の様子―映像には現地住民へのインタビューも含まれており、ウイグル人の言論の自由が奪われていることを示唆する内容がオンパレードでした。
これはもはや観光旅行ではなく、明確にジャーナリスト的な取材活動です。しかし、彼は適切なビザを取得していたのでしょうか?
■ 3ヶ月の沈黙が意味するもの
動画公開後、バッパー翔太氏は約3ヶ月間、SNSやYouTubeでの活動を完全に停止しました。
ネット上では「中国当局に拘束されたのではないか」という憶測が飛び交いました。
2025年9月20日頃、約3ヶ月ぶりに帰国を報告する動画が投稿されましたが、その内容には不自然な点も指摘されています。
■ 中国在住者が看破した「ビザ違反」の可能性
Yahoo!知恵袋に寄せられた中国在住者の方の投稿は、極めて重要な指摘を含んでいます。
「彼はジャーナリスト的な取材をしていますが、適切な取材ビザを取得せずに活動しているようです。中国では、報道や取材目的の活動には専用のビザが必要です。これが違法行為と見なされ、拘束の口実になることがあります。実際、ビザ違反はよくある理由です」
この指摘は、バッパー翔太氏が観光ビザやビザ免除での入国後、本来の目的外のジャーナリスト活動を行っていた可能性を示唆しています。
■ 工作員なら拘束されないという幻想
以上から、バッパー翔太氏がウイグル地区の動画内容からも西側の工作員である可能性は高いと推測できます。
中国当局は、このことを調べ上げ、翔太氏を以前からマークしていたのでしょう。違法行為があれば、たとえ「あちら側」の工作員であっても拘束は可能です。
■ 日本のSNSで展開される「中国叩き」の正体
日本のSNSやYouTube(こちらにも彼らの工作員は多い)では、翔太氏の拘束可能性を取り上げて、ここぞとばかりに中国叩きを展開しています。中には、翔太氏の動画は中国共産党関係企業がスポンサーだと主張する、中国叩きの先鋒のような人もいます。
しかし、もしそれが事実なら、翔太氏が中国当局に拘束されることに論理的矛盾が生じます。
今回の件を取り上げて中国叩きが加熱している現状は、日本を中国にぶつけるという”彼ら”の計画に見事に沿っています。
これは偶然でしょうか?
■ 原因と結果が逆転した言説
しかし、これは原因と結果が逆になっています。翔太氏が西側のエージェントだからこそ、中国当局は動画に中国共産党関係者を登場させて監視しているのです。
日本では中国叩き一色です。中国のことを少しでも客観的に語ろうとすると、すぐに「中国共産党の工作員」とレッテルを貼られて叩かれます。
「中国は確かに問題のある国だが、実質的な世界的権力には及ばない」という事実を伝えると、それだけで私にも中国共産党のエージェントと罵倒するメッセージ(日本のある団体に所属している人間たちから)が届きます。
太平洋戦争の時代にも盛んだった”彼ら”の僕たちによる言論弾圧です。
■ 現実は3Dチェス―感情や信念では見えない構造
現実の世界は3Dチェスです。感情や信念で動くものではありません(感情や信念こそ、最も容易に操作されるのです)。
中国との戦争を煽る者は、属国日本の真の独立を希求する人たちではありません。
また同じ罠に大衆を引きずり込んで、日本を破滅させるつもりなのでしょうか?
“彼ら”に従っていれば自分だけは安全だと錯覚しているのでしょう。しかし、いくら”彼ら”の片棒を担いでも、”彼ら”にとっては「使い捨ての駒」にすぎません。
■ 歴史は問いかける―誰のための戦争だったのか
日本全国の国民を疲弊・困窮させた日清・日露・日中戦争は、いったい誰の利益のために戦ったのか? いや、正確には「戦わされた」のか?
今回の一連の騒動からも、残念ながら日本人は歴史から何も学んでいないことが露呈しています。
歴史から全体を俯瞰して見なければ、問題の本質は決して見えてこないのです。
参考文献
・『No, the UN did not report China has ‘massive internment camps’ for Uighur Muslims』The Grayzone, August 23, 2018
・『Uyghur Human Rights Project (UHRP)』 InfluenceWatch.
・『Uyghur Human Rights Policy Act Builds on Work of NED Grantees』 NED, May 29, 2020
・『NED funds Xinjiang disinformation push』 China Daily Hong Kong, March 30, 2021
・『Fact Sheet on the National Endowment for Democracy』 Ministry of Foreign Affairs, People’s Republic of China, May 07, 2022
・Yahoo!知恵袋(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11320794661)