『令和の米騒動』の正体
――見えざる“流通のブラックボックス”が招いた人工的危機
2025年、日本は戦後最大級の「米不足」に見舞われました。スーパーの棚からコメが消え、SNSでは「おにぎり難民」という言葉まで登場。ですが、この米不足――実は「不作」や「自然災害」が原因ではなかったのです。
むしろその原因は、“人工的な流通操作”にありました。
⭐️コメは「獲れていた」――実際は過去より豊作
表向き、「不作だから米が足りない」と思われがちですが、事実はその逆です。
農林水産省の統計によれば、2024年産の米(2025年に流通する主力米)の生産量は前年比で18万トン増加し、総量679万トンにも達していました【農林水産省 令和6年5月統計】。つまり、「コメは例年よりも収穫できていた」のです。
私が契約している自然栽培農家の方も「去年と収穫量はほとんど変わらなかった」と話していました。つまり、田んぼには十分な米があったのです。
参考文献
・農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/r6_kome_ryutu.html
・『Continued High Prices for Japanese Table Rice Leads to High Import Demand and Release of Government Emergency Rice Supplies』 USDA, March 11, 2025
・『Japan reaps the consequences of flawed rice policies』T he East Asia Forum, 29 May 2025
では、なぜ“米不足”が起きたのか?
⭐️どこへ消えた?39万トンの「行方不明米」
答えは「流通」です。
農家からコメを買い取る集荷業者の集荷量は、2024年末時点で前年より20.6万トンも減少(約9%減)していました。つまり「農家が獲ったコメ」はあるのに、「市場に出回る米」が少なかったというわけです。
この差異――39万トン(茶碗で約60億杯分)が“行方不明”になったのです。
この39万トンがどれほど膨大な量か想像してみてください。最大の米生産県である新潟県の年間生産量を上回る量です。東京ドームの敷地に30キログラムの米袋を敷き詰めて、6メートルの高さになる計算です。これほどの量が、まるで蒸発したかのように消えてしまったのです。
これは単なる記録ミスでしょうか? いいえ、その背景には日本の複雑すぎる「米流通構造」があります。
参考文献
・『2025年もコメ不足?消えた60億杯、備蓄米放出で露呈した「コメ業界の危機」』 SBBIT, 2025/02/05
⭐️5重構造の“迷路”:ブラックボックス化した流通
農家から私たちの食卓に届くまで、米は次のような流通経路をたどります。
農家 → 集荷業者(JA等) → 一次問屋 → 二次問屋 → 三次問屋 → …最大五次問屋 → 小売店
この“多層構造”の中で、各業者が「在庫を囲い込む(=ため込んで出さない)」ことができ、流通を“意図的に”止めることも可能になります。
実際、Bloombergの調査によれば、日本の米市場はその非効率性から「特定の流通層が在庫を操作できる構造」になっていると分析されています。
つまり、コメは「ある」のに「ないように見せかける」ことができる仕組みになっていたのです。
参考文献
・『How a Rice Shortage Spurred a National Crisis in Japan』Bloomberg, June 11, 2025
⭐️備蓄米が「届かない」理由
政府は混乱を抑えるため、2025年3月から約31万トンの備蓄米を市場に放出しました。しかし、5月末時点で実際に消費者に届いたのは6.4万トン――全体のわずか20%程度にすぎません。
その理由は、中間業者を通す競争入札制度にありました。利幅を重視する業者によって、“消費者の手前”で止まってしまったのです。
一方、5月下旬に開始された随意契約での直接小売供給では、わずか1週間で店頭に並んだという報告があります。つまり、「中間業者がいなければ、すぐに米は届いた」という事実が露呈したのです。
参考文献
・『Japan’s agri minister calls rice distribution ‘black box’; complex structure to raise prices, cause delays』 Asia News Network, June 20, 2025
⭐️コメ価格は“操作できる”構造だった
これらの事実が意味するのは――
「日本の米流通は、供給も価格も“意図的に”操作可能な構造である」
ということです。
従来、この流通システムを支配してきたのは農協(JA)でした。しかし近年、農協の弱体化が著しいです。それは、農協の集荷割合は食糧管理制度時代の95%から50%まで低下している事実にも表れています。
農協の弱体化は、農協資金を運営する農林中金が米国債等に投資させられたことによって6兆円超の巨額損失を出したことがトリガーとなっています(日本政府も米国債を買うという“名目”で巨額の国民の税金を貢いでいる)。
私は農協を擁護することはありませんが、“意図的”に農協が弱体化されている現在、背後で何が起こっているのかを知る必要があると思っています。
つまり、問題は、農協に代わって「誰がその空白を支配しているのか?」という点です。
参考文献
・『コメ不足の真実』日本経済新聞(夕刊)「十字路」、2025年2月12日
・『Japan’s Biggest Agricultural Bank Posts 413 Billion Yen Loss From Rate Bets Gone Bad』Bloomberg, 2024/08/01
・『Investment in US bonds collapsed! A hundred-year-old Japanese bank issues a warning of a high interest rate crisis to the world.』 FUTU, Jun 20, 2024
・『Japan’s century-old bank faces mounting crisis over high U.S., European rates』 XINHUANET, 2024-06-23
🌐誰が「コメの通り道」を支配するのか?
農協の力が弱まったとき、その空白を埋めるように登場したのが、世界的な権力構造の一部を成す新たな支配者たちです。興味深いことに、郵政の資金を世界の権力層に差し出した小泉純一郎の息子である進次郎氏が農水大臣に就任したのも、決して偶然ではありません。
この「令和の米騒動」は、単なる一時的な品不足ではありません。食料供給システムを意図的に操作することで、国民の生活を左右できることを示した事例なのです。
これは近年のアジアをターゲットにした気象操作(太陽光遮断)よりも、確実に食糧自給を妨げる方法です。
近年の研究では、アジア各国で類似の流通操作による人工的な食料不足が報告されています。これは決して日本だけの問題ではなく、グローバルな食料支配戦略の一環として理解する必要があります。
私たちが学ぶべき教訓は明確です。表面的な「不作」や「需要増加」という嘘の説明に惑わされることなく、流通システムの構造的問題と、それを操作する権力の存在を理解することが重要です。
米という日本人の主食を通じて、私たちは現代の支配構造の変化を目の当たりにしているのです。古代から続く「食を制する者が民を制する」という原理(英国のエージェントであるキッシンジャーも好んで使っていたフレーズ)が、令和の時代にも生きているのです。
この真実を知ることで、私たちは単なる消費者から、食料システムの背後にある力学を理解する賢明な市民へと変わることができるのです。