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「減塩神話」を疑え──健康を損なう“塩抜き”の代償とは?

「減塩神話」を疑え──健康を損なう“塩抜き”の代償とは?

 

私たちは、「塩は体に悪い」「減塩こそ健康のカギ」だと、何度となく聞かされてきました。病院の診察室、テレビの健康番組、家族の食卓に至るまで、「塩を控えましょう」が合言葉のように浸透しています。

 

 

 

しかし、こうした“常識”の背後に、根拠の曖昧な政治的決定と製薬ビジネスの都合が潜んでいるとしたら――あなたはどう思うでしょうか?

 

 

減塩キャンペーンの出発点──1977年、ある報告書から始まった

アメリカ上院の「マクガバン報告」によって、ナトリウム(塩分)の摂取量を減らすことが推奨されたのが、1977年のこと。ところが、この勧告は当時存在していた科学的証拠(エビデンス)を無視していたことが、後の研究で明らかになっています。

 

 

 

それ以降、塩は「血圧を上げる悪者」として断罪され、食卓から徐々に姿を消していきました。けれども、それが本当に私たちの健康にとって良いことだったのでしょうか?

 

 

「減塩で健康」は本当か?──医療の利益構造と数字の罠

現代医療は、多くの場合「数字を下げること=健康に良いこと」と考える傾向があります。血圧、血糖、コレステロール…数値が基準値を超えると、即座に薬が処方され、その“異常値”が薬によって押し下げられます。

 

 

 

塩が問題視されたのも、血圧をわずかに上昇させる可能性があるからでした。しかし、減塩による血圧の低下は、多くの研究で1%未満というごくわずかな効果しか示されていません。それでも、薬と組み合わせればビジネスとしては成り立ちます。

 

 

 

しかも、極端な減塩は逆に危険を招きます。めまいや失神、転倒事故、腎障害、認知機能の低下など、塩不足によって起きる健康被害は、しばしば見過ごされています。

 

 

参考文献

・Effects of low sodium diet versus high sodium diet on blood pressure, renin, aldosterone, catecholamines, cholesterol, and triglyceride. Cochrane Database Syst Rev. 2020 Dec 12;2020(12):CD004022.

 

 

 

ナトリウム不足は、寿命を縮める?

ある研究では、181カ国を比較したところ、塩分摂取量が少ない国ほど平均寿命が短いという結果が出ました。

 

 

 

さらに、2016年の研究では、正常血圧の人では、血中のナトリウム濃度が低い「低ナトリウム血症」は、26%もの心臓血管疾患リスク増加と関連していることが示されました。高血圧の人では、「低ナトリウム血症」は34%もの心臓血管疾患リスク増加と関連しています(4-5g/日の中等度摂取との比較)。

 

 

 

塩を控えることで“健康的”になったつもりが、実際には体力が落ち、免疫力が低下し、命の危険すら高まっている可能性があるのです。

 

参考文献

・Sodium intake, life expectancy, and all-cause mortality. Eur Heart J. 2020 Dec 20;42(21):2103–2112.

 

・Associations of urinary sodium excretion with cardiovascular events in individuals with and without hypertension: a pooled analysis of data from four studies. Lancet. 2016 Jul 30;388(10043):465-75.

 

 

 

「U字型リスク曲線」──多すぎても少なすぎても害になる

生理学では、「ちょうどよい量」が最も健康に良いとされる概念があります。塩も同じ。摂りすぎも良くないが、不足も致命的です。

 

 

 

ただし、塩を取り過ぎというのは、実際の食生活ではほとんどありません。なぜなら、塩辛いものを食べるのには限界があるからです。塩を取り過ぎがあるとすると、加工食品の過剰摂取のケースです。ご自分で食材を調理する場合には、そのような塩の取り過ぎは起こりません。

 

 

実際に、心不全患者に「塩を少し加える」ことで症状が改善するケースが数多く報告されており、ヨーロッパでは心不全患者に対する塩分制限の推奨が撤回され始めています。これは、患者さんたちがU字型曲線の「左側」(塩分不足側)にいたことを意味します。

 

 

 

心不全や腎臓病の患者の中には、「塩分制限が症状を悪化させていた」と報告する例も多く、ヨーロッパでは近年、こうした患者に対する過度の塩分制限の推奨が撤回されつつあります。

 

 

参考文献

・Sodium intake and the risk of heart failure and hypertension: epidemiological and Mendelian randomization analysis. Front Nutr. 2024 Jan 26:10:1263554.

 

・Sex-specific associations between sodium and potassium intake and overall and cause-specific mortality: a large prospective U.S. cohort study, systematic review, and updated meta-analysis of cohort studies. BMC Med. 2024 Mar 22;22(1):132.

 

 

 

本当に危険なのは「塩」ではない

本当に危険なのは、「塩」そのものではなく、精製塩と加工食品に含まれる添加物および不純物です。今週のウエルネスラジオ(塩と砂糖について)でお伝えしたように、精製塩に様々な添加物が入っています。そのような人工塩ではなく、自然の塩を摂取することが基本です。

 

残念ながら、自然の塩もマイクロプラスチックやグラフィン等で汚染されていますが、それでも人工塩よりは安全です。

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