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『バターか加工油脂(植物油脂)か?〜リアルヒストリー』

バターか加工油脂(植物油脂)か?〜リアルヒストリー

 

私たちの食卓に忍び寄る「加工油脂」の実態

あなたの食卓にある油は何ですか?気づかないうちに、私たちの日常生活には加工油脂(植物油脂)が広く浸透しています。大豆油、菜種油(キャノーラ油)、ひまわり油などがその代表例で、これらは植物の種から抽出され、複雑な化学合成過程を経て大量生産されています。

 

 

一方で、本物のバターは年々入手が難しくなっています。そんな状況のなか、「バターを加工油脂に置き換えるべき」という”科学的”メッセージがメディアで繰り返し発信されています。この情報は本当に信頼できるのでしょうか?

 

 

 

繰り返されるメディアのメッセージ

2025年3月6日に発表された疫学調査によると、バターを植物性油(プーファ)に置き換えることで、早期死亡のリスクを低下させる可能性があることが示されていますが、この情報がメディアやSNSでも拡散されています(Butter and Plant-Based Oils Intake and Mortality. JAMA Intern Med. 2025 Mar 6:e250205.)。

 

 

 

毎度のことですが、ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院を中心となって、植物油脂業界と歴史的に連携してきたアメリカ心臓学会(AHA)で発表された内容です。

 

 

主な研究結果として、「毎日のバター摂取量10g(約1テーブルスプーン未満)を同等のカロリーの植物性油に置き換えることで、全死因および癌による死亡リスクが17%低下。」というもの。

 

 

 

しかし、この研究には多くの専門家さえ見落としがちな重大な問題点があります。

 

 

 

まず疫学的調査という統計を駆使したこのような研究内容は、エビデンスレベルが最も低い研究です。つまり、それだけでは信頼を置くことのできない補完的な研究に過ぎません。

 

 

 

したがって、この手の研究では、後述するようにそもそも「死亡リスクが〜%低下」というような因果関係を証明することができません。

 

 

 

このことは、専門家(医師や研究者たち(^_−)−☆)でさえ、まったく理解していないので、マスメディアやハーバードの人間の発言だけを聞いて簡単に誘導されています。

 

 

 

ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院などの公衆衛生部門が発表する疫学的調査には、多数の問題が指摘されています。そのほんの一部を簡単に述べます。

 

 

疫学調査の落とし穴:専門家も見落とす根本的限界

  • 因果関係の証明が不可能

 

「バター摂取によって死亡率が上がる」「プーファ摂取によって死亡率低下」というような因果関係はそもそも証明できない研究手法が前提

 

  • 統計のもとになるデータの不確実性

4年ごとの食物頻度質問票(FFQ)の自己申告のデータが元になっている。昨日食べたものも思い出せないときがあるのに、4年間食べたものを客観的に覚えている人は皆無です。

つまり、統計に使用する元データに信頼性がない(記憶バイアスあるいは過小/過大報告がある)。

 

元のデータに信頼性がないものをいくら統計をこね回しても、真実など出てくる訳がありません。

 

  • 統計手法の問題

癌・心血管疾患・糖尿病などの病名を持っている人のデータはあらかじめ排除されていたので、元データの対象者が選別されています。そして、結果に及ぼす他の要因(環境要因、社会経済要因)の影響を排除できていないため、バターや植物油脂だけの原因には間違ってもできない。

 

死亡リスクの〜%低下というのは、相対リスク減少と呼ばれるもので、実生活では意味がない指標。実生活で活かせる指標は絶対リスク減少であり、その算出はこの研究で行われていない(拙著『ウイルスは存在しない』参照)。誤解を招く指標の使用が頻繁に認められています。

 

 

 

現代人はバターを1日10gも食べてない

現代人は、バターなど本物の乳製品に摂する機会がほとんどありません。現代の加工食品には、すでにバターの代わりに植物油脂などの加工油脂が使用されています。本物のバターは高価なため、富裕層しか日常的に使用することができないことを研究者たちは知らないのでしょうか?

 

 

この研究では、10g/日のバターを植物油油脂に置き換える効果を強調していますが、米国人の平均バター消費量(約5g/日)を超える非現実的な話です。日本人のバター摂取量は、欧米の約1/6~1/12ですから、この論文の前提は日本人には意味がありません。

 

参考文献

・『Average annual per capita consumption volume of butter in Japan from fiscal year 2014 to 2023』 Statista

研究資金の透明性の欠如

論文には具体的な資金源の記載がなく、植物性油業界との関連が不明です。これらの限界について、著者らも論文内で「観察研究であるため因果関係を推定できない」「他の要因による可能性を排除できない」と自己言及しています。

 

 

 

これらの問題が山積している研究にも関わらず、研究成果がアメリカ心臓学会(AHA)のイベントで発表され、メディア向けに簡略化されたメッセージが拡散されています。

 

 

アメリカ心臓学会(AHA)は、繰り返しますが、植物油脂業界との癒着が問題視されている組織です。

 

 

 

アメリカ心臓学会(AHA)は、「バターのような飽和脂肪酸を植物油脂のような酸化しやすい油(プーファ)に変えなさい」と設立当初から推奨している団体です。

 

 

 

このように真実とはかけ離れた合成エビデンス(簡単に言うとデマです(^_−)−☆)が拡散されて、専門家および一般大衆を洗脳する典型例が今回の研究内容です。

 

 

 

この手法による洗脳脱却(研究内容の見方)については、拙著『奇跡のハチミツ自然治療』に詳述していますので、是非読み返して頂ければ幸いです。

 

 

参考文献

・A short history of saturated fat: the making and unmaking of a scientific consensus. Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2022 Dec 8;30(1):65–71.

 

・『Conflict of Interest in Medical Research, Education, and Practice.』Institute of Medicine (US) Committee on Conflict of Interest in Medical Research, Education, and Practice; Lo B, Field MJ, editors.Washington (DC): National Academies Press (US); 2009.

 

・https://www.heart.org/-/media/Files/Finance/20202021-IRS-Form-990-PDF.pdf?sc_lang=en

 

 

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