「果糖は悪い」という主張を裏付ける代表的な根拠として、医師たちがしばしば引き合いに出すのが、2009年に行われたフルクトース(果糖)飲料を10週間与える人体実験です。
しかし、そもそも自然界の甘味料はグルコースとフルクトースが混在しています。それにもかかわらず、フルクトースのみを含む飲料を与えるという不自然な実験が行われたのです。この点からして、果たして実験結果をそのまま受け入れて良いのでしょうか?
さて、この実験では、フルクトース飲料がインスリン感受性を低下させたとされています。しかし、実際に1日に投与されたフルクトースの量を見てみると、1回あたり約50g、1日3回に分けて摂取させています。
食品や栄養素には、一度に小腸で吸収できる量に限界があります。例えば、フルクトースの場合は12.5~25g、ショ糖であれば25~50gがその上限です(Apple juice, fructose, and chronic nonspecific diarrhoea. Eur J Pediatr. 1989)。それを超えるとどうなるのでしょうか?
未吸収のフルクトースは大腸に達し、腸内細菌のエサとなります。その結果、腸内細菌の異常増殖が起こり、やがて「小腸腸内細菌異常増殖症(SIBO)」を引き起こします。この状態は特に「フルクトース吸収不全(fructose malabsorption)」と呼ばれています。
この異常な腸内環境では、エンドトキシン血症が発生し、全身の炎症を引き起こします。その結果、インスリン抵抗性が生じるのです(Dietary fructose induces endotoxemia and hepatic injury in calorically controlled primates. Am J Clin Nutr. 2013 Jun 19;98(2):349–357.)(Fructose Promotes Leaky Gut, Endotoxemia and Liver Fibrosis through CYP2E1-Mediated Oxidative and Nitrative Stress. Hepatology. 2019 May 31;73(6):2180–2195.)(Metabolic endotoxemia initiates obesity and insulin resistance. Diabetes 2007)(The gut-liver-axis: endotoxemia, inflammation, insulin resistance and NASH. J Hepatol. 2008)。
つまり、この人体実験で見られたインスリン感受性の低下は、果糖自体の影響ではなく、過剰摂取による腸内細菌異常増殖とエンドトキシンの影響によるものだったのです。
さらに注意すべき点は、これと似たような研究が他にも多く存在することです。動物実験や人体実験でも、意図的に果糖やショ糖を過剰投与することで、望ましい結果を導き出そうとするケースが少なくありません。
実際には、これらの実験結果が示しているのは、果糖や砂糖そのものの問題ではなく、カロリー摂取量の増加がインスリン抵抗性を引き起こすという単純な事実です(Fructose and Hepatic Insulin Resistance. Crit Rev Clin Lab Sci. 2020)(A review of recent evidence relating to sugars, insulin resistance and diabetes. Eur J Nutr. 2016)。
つまり、果糖でなくても、脂肪、タンパク質などでカロリーオーバーさせれば、インシュリン抵抗性を引き起こすことができるのです。
どのような体に良いとされてている食べ物であっても、無理に過剰摂取すれば必ず副作用が出ることは当然です(それは、体がこれ以上摂取するなというサインです)。
研究者たちは、故意に過剰の果糖を投与する実験を繰り返し、「果糖悪玉説」を強化しています。それは、日常の摂取量(たとえ最も摂取している年代の量でさえも)では、彼らの望むような弊害が出ないからです(なぜ故意に「糖悪玉説」を流布するのかは、歴史的文脈を知る必要があります(^_−)−☆)。
むしろ、 ショ糖、フルーツやハチミツなどの自然の甘味料では、その逆の健康効果が出ています(拙著『奇跡のハチミツ自然治療』の複数のエビデンス参照)。
このように、現代医学の研究では、不自然な実験条件や過剰投与による偏った実験が堂々と行われています。
現代医学の行っているこれらの実験がいかに不自然であるかを医師レベル(雑務に追われて、勉強する時間がない)や一般の専門外の人たちには分からないようになっています。
したがって、現代医学の研究結果を鵜呑みにすることなく、様々な視点から冷静に評価することが必要です。それには確固たるエビデンスや歴史的文脈(知恵に含まれる)などを知ることが有効になるでしょう。