糖質制限食には2つのパターンがあります。
一つは、「高脂肪食」。いわゆる「ケトン食」です。
高脂肪食は、長期的に様々な健康障害を引き起こすエビデンスは、過去記事や拙著などで繰り返しお伝えしてきたとおりです。
特に、現代では脂肪といえばプーファ(多価不飽和脂肪酸)になっていますので、高脂肪食(高プーファ食)は糖尿病、心臓血管疾患だけでなく、癌や自己免疫疾患を引き起こす主たる原因になっています。
もう一つの糖質制限食のパターンが「高タンパク質食」です。
高タンパク質食は、米国式パレオダイエットの特徴でもあります。
高タンパク質食では、低血糖に対してアミノ酸(タンパク質が分解された単位)を肝臓に送り込まなければなりません。
そして肝臓でアミノ酸を糖に変換して、脳や赤血球などの実質上糖しか利用できない組織に、糖質を供給します。
問題は、アミノ酸から糖質に変換するとき、あるいはアミノ酸を他の目的に利用した場合に、どうしても毒性物質が発生することです。
その毒性物質とは、「アンモニア」です。
アンモニアは、糖のエネルギー代謝をブロックして、脳などの重要な臓器の障害(脳神経障害、アンモニア脳症)を引き起こします。
アンモニアを肝臓でデトックスするには、余分なエネルギーを必要とします。
現代人のように、総エネルギー量が低下している場合は、このアンモニアがデトックスできずに、蓄積していくことになります。
現代人のモデルとして、肝臓のアンモニアをデトックスする酵素が欠損したマウスを用いて、高タンパク質食を与えた最新の実験が報告されています(Dietary protein load affects the energy and nitrogen balance requiring liver glutamate dehydrogenase to maintain physical activity. Journal of Biological Chemistry, 2024; 300 (7): 107473)。
このマウスでは、高タンパク食によってアンモニアが蓄積し、身体活動量が低下しました。
アンモニアは糖のエネルギー代謝をブロックするので、当然総エネルギー量は低下します。
肝臓機能や総エネルギー産生量が低下している現代人は、高タンパク質食を摂取し続けると、アンモニアが蓄積し、身体活動量が低下し、やがて臓器障害を来たすようになることを示唆しています。
以上から、糖質制限食は、高脂肪食あるいは高タンパク質食のいずれかにならざるを得ず、いずれの場合も長期的に心身の健康を損なっていくことが分かります。
米国式パレオダイエットも決して、本来の人類のパレオダイエット(原始人食、狩猟採集食)ではないことに留意しましょう(^_−)−☆。