街を歩く現代の若者の姿勢を見てみましょう。
頭が前に出てまるで老人のように背中が丸まっている(猫背)のに気づくはずです。
首のライン、つまり頚椎のラインは前方に弓形になっています。
加齢とともにそのしなやかな弓形がまっすぐになることで、頭が首の前に出ます。
ところが、最近はスマホやPCを覗き込む姿勢を長時間行っている若者や中高年にこのような姿勢が増えているのです。
これを通称スマホ首(text neck)あるいはストレートネックと呼んでいます。
慢性の首・肩こりの原因です。
重い頭部を姿勢で支えることができなくなり、首の周囲の筋肉だけでなく、体幹の筋肉まで多大なストレスがかかります。
海外に行っても、歩く姿勢だけで日本人と見分けがつくほど、日本人の姿勢が悪くなっています。
この頭が前に出る姿勢(forward head posture)は、生命のフローの基礎となる糖のエネルギー代謝を低下させます。
なぜでしょうか?
それはこの姿勢と筋肉に関係しています。
この姿勢では、首の浅い部分にある筋肉(胸鎖乳突筋、前斜角筋)が固まっています。これらの筋肉は頭蓋骨や頚椎と体幹(鎖骨、肋骨)をつなぐ重要な筋肉です。
さらに、僧帽筋、肩甲挙筋、大胸筋も硬くなって筋力が低下しています。そして、前鋸筋、菱形筋という筋肉も萎縮して弱まっています。
実は、これらの筋肉は呼吸、とりわけ胸式呼吸で必要です。
胸式呼吸とは、みなさんの肋骨のカゴで囲まれた胸郭をアコーディオンのように拡げたり、縮めたりする動きによって空気の出し入れを行います。
スマホ首では、これらの呼吸筋の働きが弱くなるため、肺活量などが低下して呼吸が小さくなります(The effects of forward head posture on expiratory muscle strength in chronic neck pain patients: A cross-sectional study. Turk J Phys Med Rehabil. 2020 Jun; 66(2): 161–168)。
つまり、十分な酸素を取り込むことができないので、常時細胞は低酸素状態になるのです。
低酸素は、低血糖と同じく糖のエネルギー代謝を低下させる重要な因子です(拙著『ガンは安心させてあげなさい』参照)。
生命の中枢である糖のエネルギー代謝にとって、毎日の食べ物は最重要ですが、姿勢のような生活習慣にも十分留意する必要があります(^_−)−☆。