「加齢とともに肉などのタンパク質は要らなくなる」という通説があります。
たしかに、私自身も若いときのように焼き肉をたくさん食べられなくなってきたような気がしていました。
しかし、質の良い肉であれば若いときよりもむしろ食べているときがあります。
元来、糖のエネルギー代謝が回って元気な人は、高齢であってもよく食べます。
元気な高齢者は、現代の若者よりもたくさんタンパク質を食べているでしょう。
さて、この通説は本当でしょうか?
高齢者の生活の質の低下や寿命は、筋肉量の低下にあることが指摘されています(Sarcopenia: a predictor of mortality and the need for early diagnosis and intervention. Aging Clin Exp Res. 2015 Jun;27(3):249-54.)(Sarcopenia is associated with 3-month and 1-year mortality in geriatric rehabilitation inpatients: RESORT. Age Ageing. 2021 Nov 10;50(6):2147-2156.)(Sarcopenia Is Associated with Mortality in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Gerontology. 2021 Jul 27;1-16)。
筋肉量の低下を「サルコペニア(sarcopenia)」といいます。
高齢者だけでなく、若年者であってもサルコペニアがあると生活の質および寿命が低下するのです。
筋肉量の低下はあらゆる慢性病と相関しているということです。
さて、このサルコペニアの状態を防ぐためには、何が有効とされているのでしょうか?
まずは、十分なタンパク質の補充です。
高齢者は、タンパク質(アミノ酸)の量が十分でないと、若者のように筋肉合成にスイッチが入らないため、サルコペニアを防ぐためにはむしろタンパク質の量を多くしないといけないのです(Skeletal muscle protein metabolism in the elderly: Interventions to counteract the ‘anabolic resistance’ of ageing. Nutr Metab (Lond). 2011 Oct 5;8:68)。
もちろん、タンパク質過量も糖のエネルギー代謝を低下させる弊害を起こします(高タンパク質食の弊害は後日お伝えします(^_−)−☆)。
筋肉合成のためには、1回の食事で体重1kgあたり0.4gのタンパク質量が目安とされています(How much protein can the body use in a single meal for muscle-building? Implications for daily protein distribution. Journal of the International Society of Sports Nutrition (2018) 15:10)。
病院や施設に入っている高齢者が認知症になったり、弱っていくのはその提供されている食事内容を見れば当然です。
健康の指標である筋肉量をキープするためにも、「高齢者はタンパク質量が少なくて良い」という通説はリアルサイエンスではないことです(^_−)−☆。