新型コロナウイルス感染症において、集中治療室(ICU)で治療を受けると死亡率が高まることをお伝えしました。
その一つの理由が、人工呼吸器の使用(高濃度の酸素投与)でした。医師たちが人工呼吸器の使用を拒むと、新型コロナ感染症の死亡率が低下したという笑えない事実が2020年に記事になっていました(『Covid death rates dropped as doctors rejected ventilators』 The Telegraph, 3 September 2020)。
さらに新型コロナ感染症の重症例では、ステロイド(グルココルチコイド)治療が推奨されるというとんでもない記事を書いている感染症専門の教授がいます。
ステロイド、つまりコルチゾールはストレスホルモンです。
私たちのコルチゾールの血液濃度は、日中の安静時で200 nm/L程度とされています(就寝時にはゼロ近くになり、朝方に上昇する)。
ここにストレスが加わると、一気に上昇します。
例えば、大手術の後などには、コルチゾールの血液濃度は、1000 nm/Lまで上昇します。
新型コロナウイルス感染症とよばれる病態ではどうでしょうか?
535人の観察研究では、そのうちの403人が新型コロナウイルス感染と診断されましたが、その人たちは有意にコルチゾールの血液濃度が高いことが示されています(Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 Aug; 8(8): 659–660)。
そして、新型コロナウイルス感染と診断された人のコルチゾールの血液濃度は、最大で3241 nm/Lまで上昇していることが分かりました。
大手術後の実に3倍以上のコルチゾールの上昇です。
新型コロナウイルス感染者のコルチゾールの血液濃度が744 nm/L以上の場合は、生存期間の平均はたったの15日でした。
このように新型コロナウイルス感染者の重症例ほど、ストレスホルモンが上昇しているため、ここにステロイドを足すことがいかに死期を早めるかが分かります。
次作でも詳述しましたが、糖質制限は新型コロナウイルス感染症などの感染症を悪化させる原因となります。なぜなら、糖質制限による低血糖で、コルチゾールが上昇するからです。
「糖質制限は、ステロイド治療の食事バージョン」ということを10年前の講義からお伝えしてきましたが、その意味がよく分かる研究内容でした(^_−)−☆。