『ステロイドと感染症:再考』

ステロイド(コルチコステロイド、コルチゾール)は、現代医療に必要不可欠になっている“免疫抑制剤”です。

新型コロナウイルス感染症(covid-19)に対しするステロイド投与は、多数の疫学的調査では、臨床症状や予後(死亡率など)を改善させることができないばかりでなく、ウイルスの排出を遅らせることに注意喚起されていました(Leukemia. 2020 May 5 : 1–9)。

それにも関わらず、オックスフォード大学が中心となって新型コロナウイルス感染症(covid-19)に対するステロイド投与の初のランダム化コントロール試験(RCT)が3月から行われていました。

まだ論文としては提出されていませんが、プレスリリースで、コルチコステロイド(デキサメサゾンを使用)の効果を28日後の死亡率を調べた結果が報告されています。

その結果は、ステロイドを投与していないグループと比較して、

●呼吸器を使用している人では、約1/3死亡率が低下

●酸素投与している人では、約1/5死亡率が低下

●呼吸器、酸素のいずれも必要としない場合は、死亡率に変化なし

という結果だったようです。

(この結果をまた例の民放が早速、「ステロイド薬にコロナ治療効果 死亡率低下」と誤解を招く放送しているというメッセージを頂きました。)

今までは、むしろ新型コロナウイルス感染症(covid-19)の重症例の急性呼吸促迫症候群(ARDS)でのストロイド投与は、むしろ肺障害を悪化させるという結果が出ていました(Lancet. 2020;395:473–475)。

そのメカニズムとして、ステロイドが全身の血管のリークを促進することが報告されています(Intensive Care Med. 2020 May 19 : 1–4)。ARDSは、肺の血管がリークして、肺(肺胞)の中が水浸しになる病態です。

そして中長期的には、入院中の患者へのステロイド投与は、大腿骨頭壊死(osteonecrosis of the femoral head)を引き起こすことが注意喚起されています(Lancet. 2020 May 25)。大腿骨頭壊死は、股関節の激痛と歩行不能により、最終的に手術を要するとされる病態です(これも糖のエネルギー代謝を高めれば治癒します)。

最新の研究でも、新型コロナウイルス感染症(covid-19)の重症化と血液中のコルチゾール濃度が相関していることが報告されています(Lancet Diabetes Endocrinol 2020 Published Online June 18, 2020)。

新型コロナウイルス感染症(covid-19)の重症例では、非感染者の4〜7倍以上の血液中のコルチゾール濃度であることも確かめられています。

ステロイド(コルチゾール)は、感染症の根本原因である免疫抑制を引き起こすストレスホルモンです。

拙著などで、糖質制限などのストレスによって放出されるコルチゾールは私たちの体内のタンパク質、脂肪を分解して、中長期的に全身に炎症を引き起こすことが主作用であることをお伝えしてきました。

リアルサイエンスでは、感染症の根本原因である免疫抑制を引き起こす薬剤が、感染症という病態に投与すると危険であるということは誰でも理解できることです。

ところが、このように医学的知識がなくても自明なことを無視して、しつこく免疫抑制剤の臨床実験する理由は・・・・・

それは、ズバリいいましょう。

ビッグファーマにとって、ステロイドと同じく免疫抑制作用をもつ「生物学的製剤」と呼ばれる大変高価な医薬品を使用したいからに他なりません(専門家でも誰もこれを見抜けない)。

実は、このオックスフォード大学の臨床試験は、他にも高価な抗エイズ薬(Lopinavir-Ritonavir)や生物学的製剤(Tocilizumab)を投与したグループもあります。

今後、ストロイドを含めたこれらの免疫抑制剤の臨床試験(RCT)の論文掲載を楽しみに待ちましょう。

リアルサイエンスがどのようにねじ曲げられていくのかというよい題材になりそうです(^_−)−☆。

いずれにせよ、過去記事でもお伝えしたように、ステロイドには中長期的に上記以外の多数の副作用をもたらしますから、メリットよりもデメリットが上回るのです。

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