今日は、私たちの現実社会を描写した教材をご紹介します。
大衆が目覚めないことが、権力者の支配を2000年以上も許してきたことがよく分かります。
『ジョーンズ氏のプランテーション(奴隷牧場):私たちの現実社会』
奴隷たちが言うことを聞かなくなり、労働意欲をなくして生産性が低下していることに悩んでいた綿のプランテーションのオーナーのジョーンズ氏。
そこに同僚スミス氏が一計を案じて、助け舟を出すことに。
ある日、ジョーンズ氏の綿のプランテーションの奴隷たちを集めて、次のように高らかに宣言しました。
「君たちは、今日から奴隷ではなく、一人のフリーの人間に生まれ変わった。もうここで奴隷として働かなくてもよい。」動揺するジョーンズ氏を制して、スミス氏は、続けます。
「これからは、自分のために働くことだ。しかし、ここを出ていくと、他のプランテーションのオーナーに捕まってそこでまた奴隷として働かされる。だから、ここにとどまって安心して自分たちのために働くように」
奴隷たちは、当惑しながらも、スミス氏の申し出を受け入れ、通常通り働きました。
2日目。
スミス氏は、次の朝に奴隷を集めて、次のように話しました。
「自由といっても、各々が好きなことをやると、全体の生産性が低下する。だから、ルールを定めないといけない。生産性が低下するようなことを犯した場合は、厳しく処罰することにする。」
3日目。
次の朝、スミス氏は苦虫をつぶしたような不快な表情で次のように話しました。
「昨日、とても残念なことが起きた。チャールズ(奴隷)が、勝手にここのプランテーションの綿花を持ち出して、外で売った。これはプランテーション全体の利益を損なうルールに反した行為である。厳重に処罰する。」
チャールズが縄で手足を縛られて、ムチで激しく打たれているときに、サミュエル(奴隷)という一人の聡明な青年が、前に出て、スミス氏に次のように伝えました。
「あなたやジョーンズ氏がルールを決めて、それに従わないものをムチで打つなら、奴隷のときと何が違うのか?」
スミス氏は見下した表情で次のように返答しました。
「おまえは、以前は奴隷だっただろ?お前は、このプランテーションの運営ができるのか?我々が持っている管理・運営のスキルがおまえにあるのか?」
サミュエルは次のように返答しました。
「もちろん、運営の経験はないけど、もし我々が自由ならば、なぜ誰かが決めたルールに“ノー”と言ってはダメなのか?」
スミス氏は、顔を紅潮させて、次のように応答しました。
「サミュエルよ。お前は何も分かっていない。ジョーンズ氏のおかげで、おまたちは、守ってもらえている。食事や寝るところまで提供してもらっている。お前は感謝が足りない!」
4日目
スミス氏は、また奴隷たちを収集して、次のように伝えました。
「今日はさらにビッグニュースを伝えよう。今日から、みんなの希望で、ジョーンズ氏かジョーズ氏の甥のジョンソン氏か3ヶ月置きに、管理者を選べる。自分たちがルールを作るのだ。」
しかし、3ヶ月置きに、支配者がジョーズ氏か、その甥のジョンソン氏に変わっただけで、プランテーションの仕事はますます厳しくなるばかりであった。
5日目
スミス氏は、サミュエルが提言をしてきたことを皆に伝え、集会の前で、サミュエルに話すように命令した。
サミュエルは、少し困惑した表情で、次にように正直な気持ちを吐露した。
「奴隷の身から解放されたと言うけれど、言うことを聞かないとムチで打たれるし、何を伝えても改善してくれない。ジョーンズ氏とジョンソン氏の違いなんて何もない。私たちの生活は奴隷のときと何も変わっていない。ジョーンズ氏は、今までどおり私たちの積んだ綿で大儲けをして、贅沢な生活を送っている。私たちは、自分たちで食事も作り、自分たちで何とかやりくりしている。ジョーンズ氏がやっているのは、私たちから搾取することと、私たちを逃さないように監視していることだけだ。奴隷から搾取することをシェアするとか平等な分配(UBI)と呼んでいる。私たちはまったく奴隷のままだ。みんな、目を覚ませ!」
スミス氏は、サミュエルの発言を制して
「お前は、共同の利益を損なってはならないというルール違反を犯した。よって、厳重に処罰する。」
と言って、サミュエルの手足を木にくくりつけ、激しくムチで打ちました。
奴隷(大衆)たちからは拍手喝采が起こり、サミュエルに対して口汚い罵倒を浴びせました。
そして、奴隷たちが三々五々に自分の持ち場に帰って行ったあと、誰もサミュエルが息絶えたことを知るものはいませんでした(了)。