『感染症の原則:無症状および発症前では感染性はない〜その二』

新型コロナの近縁にあたる新興感染症とよばれるエボラ出血熱、サーズ(SARS)、マーズ(MERS)などには、無症状および発症前では感染性は認められていません。

これらの感染症では、発症してから第2週目などの後期にウイルス量がピークに達して、感染性を発揮するとされているからです(Lancet. 2003 May;361(9371):1767–72)(N Engl J Med. 2016 Sep 29;375(13):1303–5)(mBio. 2015 Feb 19;6(2):e00137-15)。

無症状や症状が出る前の人から、新型コロナウイルスが感染するという研究で、先日お伝えした症例報告以外にもウイルス量(viral load)を測定する研究(viral dynamics studies)があります。

ウイルス量がピークになるときには、感染性もピークになるはずという仮説のもとに展開されている研究です。

この研究も非常に問題の多い研究です。

まず、検体の採取の問題を見ていきましょう。

現在、鼻の奥に綿棒を突っ込んで、検体を採取する方法(nasopharyngeal swabs)が主体になっています。

この方法では、左右の鼻腔で採取されるウイルス量が異なるため不正確な検体であることがすでに報告されています(Virol J. 2014 Dec;11(1):233)。

また同一人物での鼻腔と喀痰でのPCR検査の結果も異なることも分かっています(J Dent Res. 2020 Aug 3 : 0022034520946251)。

また、これらの研究では、ウイルス量の経過を見るのに、抗ウイルス薬やステロイドなどの薬剤の使用の影響が入っているものが大半であることです。

抗ウイルス薬とよばれるものの投与では、ウイルス量は減少します。

ステロイドの投与では、逆にウイルス量が増加するため、自然感染した場合の新型コロナウイルスのウイルス量の経過に人工的な影響を与えてしまいます。

最後にウイルス量(viral load)とはそもそも何なのでしょうか?

現在の研究論文では、ウイルス量(viral load)はあのPCR検査で増幅される遺伝子断片の量を見ているだけなのです!

決して、血液のウイルス粒子の量を調べているわけではありません。

このPCRで増幅される遺伝子の量=ウイルス量は、感染性とは完全に相関していないことがわかっています(Nature. 2020 May;581(7809):465–9)。

これはインフルエンザウイルス感染のときも同様で、PCRの結果と感染性とは完全な相関関係にはありません(J Infect Dis. 2015 Nov 1; 212(9):1420-8)。

つまり、PCRでの遺伝子断片の増幅の数と、感染性は必ずしも一致しないということです。

無症状や症状が出る前の人の検体のPCR検査の結果だけで、感染性があるかないかという議論そのものにエビデンスがないのです。

それにも関わらず、無症状の人と感染者ではウイルス量が変わらないというお馬鹿な論文がまだ跋扈しています・・・・・・・・(JAMA Intern Med. Published online August 6, 2020)

「無症状や症状の出る前の人が感染性を持つ」という研究が今後も出た場合は、その感染性をPCR検査で代用しているものは、信用が置けないということです。

ウイルス量(PCR検査)で感染性を調べるという研究もフェイクサイエンスなのです(^_−)−☆。

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