『大気汚染と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)』

オンライン講義では、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病態と密接に関係している重要な因子として、大気汚染(air pollution)を挙げました。

大気汚染が私たちの心身の健康に及ぼす重大な影響はすでに過去記事大気汚染と糖尿病大気汚染と肺炎)でもご紹介しました。

最新の研究でも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死亡率に大気汚染が重要な役割を果たしていることが報告されています(Sci Total Environ. 2020 Jul 15; 726: 138605)。

大気汚染の中でも、この研究では特に二酸化窒素(nitrogen dioxide(NO2))に注目しています。

ヨーロッパでも、この二酸化窒素 (NO2)による大気汚染が最も深刻だったのは、感染爆発(あくまでもバクテリア感染ですが・・・)を起こした北イタリアで周辺です。

二酸化窒素 (NO2)は、主に工場や車の排気ガスとして大気中に放出されます。

この二酸化窒素 (NO2)は、心臓血管疾患、肺障害、糖尿病、高血圧などの発症と関連していることは過去の研究論文で報告されていました(J. Am. Heart Assoc. 2020;9)(Environ. Health. 2013;12:43)(Eur. Respir. J. 2017;50)(Am. J. Epidemiol. 2012;175:898–906)(Mol. Cell. Biochem. 2002;234:71–80)。

これも、まさしく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症例の特徴である合併慢性疾患と一致しています。

二酸化窒素 (NO2)は、さらに毒性のある硝酸(nitric acid (HNO3))やオゾン(ozone (O3))などの派生物(secondary pollutants)も作り出します。

さて、この様な窒素化合物は、特に私たちの糖のエネルギー代謝の息の根を根本的に止めてしまいます(基礎医学『エネルギー代謝と糖』参)。

その一つのメカニズムは、以前お伝えした水道水の窒素化合物汚染による健康被害に関係しています。

窒素化合物(特に亜硝酸、nitriteや硝酸塩、nitrate)は、赤血球の酸素結合をブロックするため、私たちの細胞に低酸素を引き起こすのです。

酸素を結合しているヘモグロビンを「オキシヘモグロビン(oxyhemoglobin)」と言います。

窒素化合物(nitrite、nitrate)は、このオキシヘモグロビンを酸素を運べないメトヘモグロビン(methemoglobin)に変えてしまうのです(DICP. 1989 Apr;23(4):283-8)。

あの赤ちゃんが低酸素で真っ青になってぐったりする「ブルーベイビー症候群(blue baby syndrome)」の原因です(Environ Health Perspect. 2000 Jul; 108(7): 675–678)。

これは窒素化合物で汚染された水道水を飲むことで起こります。

大気汚染が深刻な地域では、大気を吸った肺や腸から吸収した窒素化合物で、同じことが起こるのです。このことで強い“免疫抑制”がかかります。

つまり、オンライン講義でお伝えした様に、大気汚染はバクテリア感染の下地である“免疫抑制”を作ることで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と総称される病態を引き起こすのです。

その他、窒素化合物はダイレクトにミトコンドリア障害を引き起こすことも、基礎的なサイエンスとして知っておいて下さい。

もちろん、大気汚染は窒素化合物だけでなく、重金属や硫化物など他の微小粒子(microparticle,nanoparticle)の影響も関係しています。

この様に、病原体、病原体とパニックになる前に、もっとしっかりと認識しておかなければならない重要な点は、私たち現代人はすでに感染症という病態にかかりやすい下地ができているということです。

この下地(免疫抑制)を改善することが、感染症の根本的治療及び予防策なのです(^_−)−☆。

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