集中治療室(ICU)での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症者に対して、過剰に人工呼吸器を使用しているという現場の医師の声が記事になっています『With ventilators running out, doctors say the machines are overused for Covid-19』(STAT APRIL 8, 2020)『Some doctors moving away from ventilators for virus patients』(NEW YORK (AP)APRIL 8, 2020)。
つまり、人工呼吸器を使用して強制的に換気を行う必要がないケースも多々あると言うことです。
酸素療法では、体内の二酸化炭素濃度が低下し、逆に私たちの細胞が低酸素になるということをお伝えしました。
それでは人工呼吸器の使用はどの様な影響を与えるでしょうか?
昔から現代医学でも 「人工呼吸器誘発の肺障害(ventilator-induced lung injury (VILI))」という現象が報告されています(Chest, 150 (5), 1109-1117 Nov 2016)。
これは物理的に無理に肺を膨らませることによるストレスで、物理的に肺にダメージを与えるだけでなく、そこからストレスホルモン、ストレス物質が全身に放出され、多臓器不全にまで発展します(Am J Respir Crit Care Med. 2014 Aug 1; 190(3): 258–265)。
人工呼吸器による肺炎(Ventilator-Associated Pneumonia)も、米国だけでも年間25~30万症例は報告されるくらいポピュラーなものです(これは高濃度の酸素と強制換気によって起こる“免疫抑制”が原因です)(Clin Microbiol Rev. 2006 Oct; 19(4): 637–657)。
人工呼吸器を装着する際には、「挿管」と言って、プラスチック製の管を口か鼻あるいは気管切開部分から気管の奥深く(左右分岐部手前まで)挿入します。
すでに免疫抑制状態にある人に、このようなプラスチックの管を突っ込むと、その管をつたってバクテリアが肺まで到達し、肺炎を引き起こします(元々、肺炎であった人の場合は、さらに炎症が拡がる=混合感染)。
皆さんも、朝起きて口を濯いだり、歯を磨かないと臭うと思います。一晩(6〜8時間程度)でも口腔では、唾液などの働きがないとバクテリアが繁殖するのです。
この人工呼吸器誘発の肺障害(VILI)で、非常に興味深いのは、バクテリア感染がなくてもエンドトキシン血症と同じ状態を引き起こすことです(Respir Res. 2010;11:27)。
人工呼吸のストレスによって、リーキーガットが引き起こされたものと考えられます。
この様に、感染症や呼吸器障害で標準治療とされている酸素療法や人工呼吸器による治療は“免疫抑制”作用があり、逆に感染症のリスクが高まるリスクがあることを知っておきましょう。