今回は、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)と呼ばれる病態に対して、どの様な薬物治療が選択されているのかを数回に渡ってお伝えしていきたいと思います。
日本発ということで、youtubeなどのSNSで「アビガン(favipiravir)」というインフルエンザウイルス増殖抑制剤が新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に有効というデマが流されました。
中国当局も今回の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の実態を掴んでいないのか、あるいはそれを利用しているのか(その両方だと考えています)定かではありませんが、アビガンを臨床試験すると2月に発表しています。
このアビガンは、ウイルスが増殖する際に使用する酵素(RNA-dependent RNA polymerase (RdRp))をブロックするとされています(Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2017 Aug 2; 93(7): 449–463)。
アビガン(favipiravir)と同じ作用をする抗ウイルス薬として「Remdesivir (GS-5734)」も中国当局が臨床試験に入ると2月に公表しています。
この薬は、あのタミフルの特許を持っていたギリアド(Giliad)社(拙著『医療ビジネスの闇』に詳述)の開発したものです。
「Remdesivir (GS-5734)」は、元々エボラウイルス(Ebola virus)に対して有効とされていました。
最新の研究でも、培養細胞実験で、「Remdesivir (GS-5734)」と抗マラリア薬のクロロキン(Chloroquine Phosphate)が最も新型コロナウイルス(SARS-COV2)の増殖抑制に有効であることが報告されています(Cell Research volume 30, pages269–271(2020))。
他のタミフルなどのインフルエンザウイルス増殖抑制剤(oseltamivir, zanamivir, and peramivir)や肝炎ウイルスなどの他のRNAウイルス増殖抑制剤(Ribavirin)と作用する場所が違いますが、基本的にはウイルスの増殖を抑えるという点では一致しています。
だいたい、ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬は「〜vir」という命名がされていますね。
さて、アビガンの件です。
アビガンのインフルエンザウイルスへの効果は一定していないばかりか、「催奇形性(赤ちゃんに奇形をもたらす)」が多くの種の動物実験で認められています(Curr Opin Infect Dis. 2019 Apr; 32(2): 176–186)。
したがって、妊婦のアビガンの摂取は禁物(禁忌)です。
催奇形性があるものは、細胞が幹細胞から機能を持った細胞に成長するときに、深刻なダメージを与えるものです。
成長の著しい胎児だけではなく、成人の私たちの細胞も日々生まれ変わっていますので、必ず新生細胞に影響を与えるはずです。
さらにアビガンは、耐性のインフルエンザウイルスを作り出すことも明らかになりました(Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Nov 6; 115(45): 11613–11618)。
バクテリアを叩く抗生物質や昆虫や微生物を殺傷する農薬と同じく、必ず薬が効かなくなるモンスターを作り出すことは、抗ウイルス薬でも同じです。
そして、これらの抗ウイルス薬と呼ばれる新薬の特徴は、白血球減少や他の医薬品と同じく肝臓障害をもたらします。
感冒の症状を和らげる(ウイルスを駆除する訳ではない、数を減らすだけ(^_−)−☆)のに、この様なリスクの高い薬は必要なのでしょうか?
私が一番危惧しているのは、これらの新薬に本当に効果があるのかどうか、あるいは重篤な副作用をもたらさないのかということを調べるのに最低限必要な「ランダム化・ブラインド・プラセボ・コントロール」臨床試験(A randomized placebo-controlled clinical trial)を行なっていないことです(つまり、抗ウイルス薬はサイエンスでは何も証明されていない)。
以上は、あくまでも新型コロナウイルス感染症(Covid-19)と呼ばれる病態が、新型コロナウイルス(SARS-COV2)で引き起こされるという前提のもとでの話です。
そもそも新型コロナウイルス感染症(Covid-19)と呼ばれる病態は、新型コロナウイルス(SARS-COV2)とは関係ないので、抗ウイルス薬とはいったい何なのか?という話になるのですが・・・・
仮に新型コロナウイルス感染症(Covid-19)と呼ばれる病態が、新型コロナウイルス(SARS-COV2)で引き起こされるとしても、これらの新薬は重大な問題があることを知っておいて下さい。