アンチエイジングやスポーツなどのパフォーマンスを高めるという触れ込みで様々な物質がマーケットにあふれています。
みなさんも、ネット上の広告でよく見かけるのではないでしょうか。
最近、私が知ったもので驚いたのが、あるホルモンをアンチエイジング、ダイエットやパフォーマンスアップのために注射していることでした。
そのホルモンとは・・・・・
妊娠のチェックで使用されている「ヒト絨毛性ゴナドトロピン[性腺刺激ホルモン](hCG , Human chorionic gonadotropin)」です。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、主に胎盤(少量は脳下垂体、肝臓、大腸でも産生)で産生されて、プロゲステロンの産生を促す作用があります。
これは妊娠を維持するためです。
妊娠のチェック基剤にも使用されています。
私が医学生だった頃は、このホルモンについては、妊娠の他では、「絨毛膜がん(hydatidiform mole, choriocarcinoma, and germ cell tumors)」という稀ながんで産生過剰になるといったくらいの知識しかありませんでした。
ところが、このホルモンがアンチエイジング、ダイエットやドーピング目的で使用されていたようなのです。
プラセンタ注射もその一つに入ると思います(最近は胎盤から抽出した成長因子と喧伝しています)。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、妊娠時にプロゲステロンを産生しますが、それ以外にも筋肉量を増大させるテストステロンの産生を誘導するからです(Br J Pharmacol. 2008 Jun; 154(3): 569–583)(Clin Endocrinol (Oxf). 2009 Sep;71(3):417-28)。
ところが・・・・
最近になって、乳がんなど多くの種類のがんでヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の血液濃度が高くなることが報告されるようになりました(BMC Cancer. 2017; 17: 817)。
癌で増加するヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、妊娠中に胎盤で産生されるものではなく、胎盤以外の組織(ectopic)で 産生されるもので、この2つは区別しないといけません。
胎盤以外で産生されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)は、胎盤由来のものとは逆に癌を増大させるのです(Int J Mol Sci. 2017 Jul; 18(7): 1587)。
つまり、胎盤からの自己分泌ではなく、外部から与えた場合も癌を増大する可能性があるという事です。
糖のエネルギー代謝が低い場合、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の注射で仮にテストステロンが産生されたとしても、それはエストロゲンに変化します。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を外部から投与するというのは、単なるアンチエイジングやドーピング目的で使うのにはリスクが高すぎるのではないでしょうか (^_−)−☆。