近親結婚(consanguinity、Inbreeding)は近代の日本でも盛んであったことをご存知でしょうか?
一般に近親結婚は、二親等内での結婚を指しています。
世界でも、アラブ、インド、北アフリカ、西アジア(日本を含む)に多いとされています。
過去の報告では、これらの地域の近親結婚率は全体の結婚の20–50% も占めると言われています(Reprod Health. 2009 Oct 8;6:17)。
このうちの1/3は一親等内の結婚ということですから、驚きですね。
その一方で、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなどでは、近親結婚率は1〜5%程度と低いようです(Hum Hered. 2001;51(1-2):27-34)(Ann Hum Biol. 1986 Jul-Aug;13(4):359-67)。
これは中世ヨーロッパでは、ハブスブルグ家(Habsburg dynasty)の近親結婚による没落を経験しているからかも知れません。
そのハブスブルグ家に顔面の変形が頻発したのは、近親結婚と関連があるという最新の研究が報告されています(Annals of Human Biology, 2019; 1)。
ハブスブルグ顎(Habsburg jaw)と言われる変形で、上顎が後退して、下顎が突き出た顔相になります。
近親結婚では、このような顔面の変形が起こることは知られていますが、その他、出生児奇形・高血圧, 心筋梗塞, 脳卒中, がん、痛風、胃潰瘍、喘息、骨粗しょう症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの慢性病だけでなく、躁うつ病、統合失調症、自閉症などのリスクが高まることが報告されています(Am J Hum Genet. 2015 Aug 6;97(2):228-37)( Ann Hum Biol. 2017 Mar;44(2):99-107)。
植物、魚類の近親交配の実験では、遺伝子のスイッチが変化することが分かっています(Biol Lett. 2012 Oct 23;8(5):798-801
)(Epigenetics. 2019 Oct;14(10):939-948)。
遺伝子のスイッチがオフになる変化(DNA methylation)が増加します(ヒトの近親結婚ではまだ確かなデータは出ていません。)。
この変化は、一般的にストレスがかかった時に起こる変化です。
したがって、近親婚というのは、生物にとってはそれ自体がストレスになるということですね。
こうやって世の中の現象を本当のサイエンスで眺め直すとクリアーカットになっていきます(^_−)−☆。