糞便移植(FMT)という治療が危険な副作用を伴うことをお伝えしました。
実は、他人の糞便をカプセルに入れて飲み込むという経口摂取療法があります・・・・・・(^_^;)
ちょっと想像しただけでも、尋常ではないですよね。
「冷凍糞便(FMT)カプセル」が使用された症例で、やはり敗血症になり死亡した事例が報告されました(N Engl J Med. 2019 Oct 30.)。
C型肝炎ウイルス感染症による肝硬変および骨髄異形成症候群(MDS)の2症例の報告です。
いずれも糞便カプセルの経口摂取前に存在しなかった大腸菌の存在が確かめられました。
この大腸菌は、ESBL産生大腸菌と呼ばれています。
ESBLは、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(Extended spectrum β-lactamases:ESBL)とよばれる酵素のことです。
ESBL産生大腸菌は、薬剤耐性菌の一種であり、大腸菌の他にも肺炎桿菌、プロテウス・ミラビリス等の腸内細菌から多くこの酵素が検出されています。
論文では、健康人の便のスクリーニングがしっかりできていなかったことを問題視しています。
しかし、問題の核心はそこにあるのではありません。
他人の腸内では問題を引き起こさなかったバクテリアでも、移植されるとそこで問題を引き起こす可能性があること。
これは糖のエネルギー代謝が低下している場合に顕著です。
さらには、移植を受けることによって、上記の様な新たなバクテリアが増殖を始める可能性があるということです。
つまり、今回も糞便カプセルに提供した人の便の中にも、ESBL産生大腸菌は存在せず、移植先で発生した可能性があるということです。
これは他人の便が入ってきたことで、腸内環境という「場」が変化したことで起こる生命現象です。
基礎のサイエンスという土台がないところでは、今回の糞便移植(FMT)の様な安易な発想が惨事を招くことになります。
これも基礎的な生命現象の知識の欠如による“想像力”の低下の部分現象と言えるでしょう。