男性で魚釣りが趣味の人は多いですね。
私も小学生の時には、溜め池でフナや鯉を釣って喜んでいましたが・・・・・
ある時から、この釣りが生理的に受け付けなくなりました。
特に医師になってからは、さらに・・・・・・
外科の外来を担当しているとよく釣り針が指を貫通したり、刺さって来られる方を何度も受け持ちました。
釣り針は、一回フックすると抜けないように“返し(barb)”という構造が付いています。
このために、指に刺さった釣り針は、抜くことはできません。
それでどうするかと言いますと・・・・・
その針をそのまま進行(刺入)方向に通して(つまり針を貫通させて)針を抜くのです。
これは処置していても痛々しく、痛みを想像できるだけに、嫌な作業でした(当の釣り針が刺さった本人の方がケロッとしていることが多かったです(^_−)−☆)。
そうです。
私は魚の口にフックする釣り針で、魚の痛みを想像するようになってからは、釣りという行為が生理的にうけつけなくなったのです。
さて、こんなことを言うと必ず
「魚は人間のような脳がないので、同じような痛みや苦しみがない」
と言い張る輩がいます。
魚は生きたまま、まな板の上で切り刻まれますよね。
果たして、このような主張は本当でしょうか?
最新の研究で、魚はほぼ人間と同じように痛みを認知していることが報告されました(Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2019 Nov 11;374(1785):20190290)。
実験では、水槽の魚に電気ショックを与えて痛みを引き起こすと、3日間一切餌を食べなくなったようです。
釣り針で頻繁に魚の口をフックしても、餌を食べなくなりました。
さらに・・・・・・
魚の身体の一部を傷つけると、人間と同じく過呼吸になりました。
私たちは痛みが強いと、そのショックでパニックになり過呼吸になります。
そして痛みのある部分を尾で擦る行為も認められたようです。
これも痛む部分を擦る私たちの行為と同じですね。
以前、脳神経系がない昆虫でさえ痛みを感じていると言う研究をご紹介しましたが、魚も同じです。
私はおそらく植物でさえ、痛みを感じると考えています。
さて、『東京喰種トーキョーグール』と言うアニメの話を聞いたことがあります。
グールという生き物は人間しか食べないという設定です。
人間を魚のように生け捕りでまな板の上で、切り刻んで生でも食べるのです。
「それはひどいじゃないか!」という抗議に対してグールは、
「人間はもっとひどい。我々は地球で人間しか食べないんだ。しかし、人間は地球上のありとあらゆるものを食べ尽くす。」と言った名セリフがあります。
興味深いのは、ビーガンやベジタリアンの人肉はマズイという設定になっていることです。
これは体内がプーファだらけになっているからですね(この著者は私の本を読んでいたのでしょうか?)。
このマンガは「人間中心主義(ヒューマニズム)」という思想の恐ろしさを考えさせることが主旨であるのは一目瞭然です。
魚も含め全ての生命体は、構造が違うものの、機能は等しく持っています。
ヒトだけが大きい脳を持っているからというだけの理由で、ハイエラルキーの頂点に君臨しているというようなニムロデの思想。
これは、単なる幻想(いや過剰に肥大した欲望)にしか過ぎないということが本当のサイエンスによって突きつけられているのです。