Book

『“寄生虫ダイエット”で痩せる??』

寄生虫感染で体重減少が起こることは昔から知られています。

ソプラノ歌手の故マリア・カラスはサナダムシを利用し1年間で約50kgの減量に成功したとされていますが。。。。。。

この体重減少は体に良いのでしょうか?

この体重減少効果はアドレナリンによる脂肪燃焼によるという日本の研究論文が発表されています(Infect Immun. 2019 Apr 8. pii: IAI.00042-19)。

マウスに高脂肪食を28日間摂取させ肥満状態させています(肥満の原因は糖ではなく、脂肪であることは明らかですね)。

次に、肥満マウス腸管寄生蠕虫Hp: Heligmosomoides polygyrusを感染させる群と感染させない群に分け、体重の変化を検討しています

この論文では、

●寄生虫感染によって交感神経が刺激される(アドレナリン放出)

●寄生虫感染によってアドレナリンを放出する腸内細菌が増える

という2点を主張しています。

まず、寄生虫感染で交感神経が刺激されるというのは、寄生虫感染が私たちとってストレスであることを示しています。

そのため、ストレスホルモンであるアドレナリンが血液中に放出されます。

これはストレスに対応する糖が不足しているので、アドレナリンによって脂肪を糖に変換するためでした(リポリシス)。

そのため遊離脂肪酸(血液中を浮遊する脂肪酸)が増えて、その脂肪をエネルギー源にするようになります(肝臓では脂肪を糖に変換して脳に送り込む)。

実際に寄生虫感染した肥満マウスでは、血液中の遊離脂肪酸が減少しています。これは遊離脂肪酸が細胞内に取り込まれて、エネルギ―源になったことを示しています。

これがストレス時の代謝の変化で、この状態が続くと糖尿病、リウマチ、うつ病やガンになるのでした。

さて、この論文では、アドレナリンによって脂肪組織の脂肪細胞が熱産生を盛んに行うために代謝が上がることで体重増加が抑えられるとしています・・・・・・・

OMG!

基本的なことですが・・・・・

基礎代謝は筋肉量に依存しています。脂肪の量ではありません。

一時的に体重減少が認められたのは、アドレナリンによって脂肪が分解されて遊離脂肪酸となって血液中に出されたからに他なりません。

ガンの末期(ガン悪液質)と同じ病的痩せの状態です。

ここ“一時的”と書きましたが、長期的には逆に太ります(ガンになって死亡しない限り)。

この寄生虫感染させたマウスも長期的には、必ず太るはずです。

こういう動物実験は短期的な効果しかみないので、生命現象の本質がつかめないのです。

さらに・・・・・

2点目の腸内細菌の変化は、拙著『慢性病は現代食から』に詳述していますように、私たちの体の代謝の変化による副次的なものです。

つまり、腸内バクテリアが変化したから、アドレナリンが放出されたのではなく、寄生虫感染によって代謝が変化(脂肪のエネルギ―代謝)したことによって、腸内バクテリアが変化しただけです(たまたまアドレナリンを放出するような腸内バクテリアが増えた)。

そもそも血液中に大量にアドレナリンが流入するほどの腸内細菌が増加するならば、その生命体は生存できないでしょう。

腸内細菌がアドレナリンを放出するといっても微々たるもので、全身への影響は体内で産生されるアドレナリンとは比較になりません。

おそらく、何等かの新しい知見がないと論文掲載は難しいので、腸内細菌を絡めたのでしょう。

無意味とまでは言いませんが、枝葉末節すぎる感がぬぐえません(^_-)-☆。

今回の結論です。

“寄生虫ダイエット”は、栄養の横取りおよびリポリシス(危険な脂肪分解)による病的な痩せを引き起こす。」

拙著『慢性病は現代食から』に寄生虫感染療法(アレルギー、自己免疫疾患)について詳述しましたので、再度読み返して頂ければと思います(^_-)-

 

関連記事

  1. 『ワクチン・シェディング現象について〜リアルサイエンスシリーズ』

  2. 『仕事の合間の雑談シリーズ〜【続・シリカ(ナノ粒子)の危険】』

  3. 『スリムは健康的なのか?』

  4. 『がん検診に意味はない!〜リアルサイエンスシリーズ』

  5. 『ネオニコチノイドは、私たちにも影響を及ぼすのか?』

  6. ◆パレオ協会Q&A◆ 『回復過程について』

  7. 『感染症の本当の原因はどこにある?』

  8. 『私たちは毎日毒物を食べさせられている〜アジェンダシリーズ』