最近はあまり見かけなくなりましたが、低炭水化物・高脂肪食(日本では糖質制限やケトン食と呼ばれているもの)が糖尿病を治癒させるという見当違いな研究が散見されます。
これがなぜ見当違いかは、生命の本質が「糖のエネルギー代謝」にあるということを理解するだけで十分です(^^♪。
さて、このような見当違いの研究の一例をご紹介したいと思います(Diabetes Ther. 2018 Apr;9(2):583-612)。
低炭水化物食を1年トライしてもらう臨床研究です。
低炭水化物食で一体何をもって糖尿病が治ると言っているのでしょうか?
この研究では、「 HbA1C」 という過去6か月前後の血糖値を反映する値に注目することで、糖尿病のコントロールの指標としています。
そしてその「 HbA1C」 値を測定しているのが、低炭水化物食を開始した70日後とそれを終了した時点である1年後です。
ということは、低炭水化物食を開始する4~5か月前および開始後6か月目の血糖値を見ていることになります。
この値が改善したことをもって、糖尿病に低炭水化物食が効果があるとしているのですが・・・・・
それでもたったの全体の25%の人しか、その値も改善しなかったようですから、この研究の発表の意義を疑います。
低炭水化物食を行っている最中では、当然ケトーシス(ケトン体、遊離脂肪酸が血液中にあふれる)になり、血糖値が低下するので、1年後の測定時点(低炭水化物食開始後6か月の血糖を反映)では、「 HbA1C」 値が低下するのは当然です。
しかし、この血糖値の低下と糖尿病の治癒とはまったく関係がありません。
糖尿病の治癒を証明したければ、低炭水化物食終了後の最低でも1年後に「 HbA1C」値、血糖値あるいはブドウ糖負荷試験などを行って評価しないといけません。
現代医療のガン治療でさえ、三大療法でガンが一時的に小さくなったこと(血糖値の一時的な低下と同じアナロジー)を”治癒“とは呼びません。
それは、一時的な縮退(remission)と呼んでいます。
そして、ガンの場合は5年後のガンの大きさで評価しています(5年生存率)。
どうしてすぐに評価して済まさないのでしょうか?
なぜなら、ガン細胞を攻撃するような治療では、一時的にガン細胞が小さくなったように見えても、必ず増大・転移してくるからです。
この研究でも5年後とは言わないまでも、最低でも低炭水化物食終了後の1年後のデータを提出しなければ何も言えないのです(#^.^#)。
この研究デザインそのものが、「低血糖にすれば糖尿病が治る」という”幻想”とまったく同じ過ちをおかしていますね(原因でなく、高血糖という結果にアプローチしても治らない)。
糖尿病薬はすべて低血糖にする作用がありますが、「糖尿病を治すことはできない」という事実一つをとるだけでで十分です(^^♪。
糖質制限・ケトン食などは、血糖降下だけに着目した医薬品治療の”食事バージョン”なのです。
さて、この研究が長期フォローの測定をしない理由・・・・・
それは・・・・・・・・
低炭水化物食をやめると、いわゆる「リバウンド」が来て、テスト前よりも糖尿病が悪化するからです(^_-)-☆。
テレビでファスティングやカロリー制限を課して痩せさせるというダイエット番組がよく企画されてますよね。
ここに参加した肥満体型の人たちは、この番組が終わったあとには、以前よりもリバウンドして太ってしまうのです(米国のダイエット番組でもこのことが暴露されています(^^♪)。
血糖値を下げるという食事法もダイエット番組とまったく同じなのです(^_-)-☆。
私の臨床経験からも、たくさんの方がリバウンドでさらに糖尿病や心身の調子が悪化したことが原因でご相談を受けています。
なぜ糖質制限・ケトン食・ファスティングやカロリー制限食に”リバンド(当初より悪化する)”が伴うのかをじっくり考えてみましょう(^^♪。