私は大学卒業後に大学内で最も厳しいと言われていた脳神経外科を選択しました。
まず入局して感じたのは、ものすごい競争社会で当時の私のエネルギーでは対処不可能なほどのストレスだったいうことです。
私が入局する前はもっと状況が苛烈で、「寝るな、食うな、風呂に入るな」というような事がまことしやかに規律になっていました。
パンツも前後、表裏をチェンジすれば、風呂に入って着替えなくても4回はもつ・・・・・・
実は現代医学の最先端といわれる米国でも状況は似たり寄ったりです(ただし日本のような理不尽な負荷は少ない)。
レジデントといって、まだ修行の身であるときには、同僚との激しい競争があります。それによって医師の将来が決定されます。
競争があまりにも過激なので、米国の外科系や循環器系の医師を中心にいわゆる「燃え尽き症候群(バーンナウト)」が問題になっています。
日本も昔から丁稚奉公というものがありますよね。
さて、このような過酷な競争のなかで、本当にスキルや知識が向上するのでしょうか?
最新の研究では、これが明確に否定される論文が報告されています(Scientific Reportsvolume 9, Article number: 1747 (2019))。
競争を煽るような厳しいプログラム(レジデンシープログラム)や辛辣な生活環境を改善してストレスを減らすほど、より高い外科のスキルが身についたのです。
外科系のレジデントは常に高いストレスにさらされています。
この高い慢性ストレスは、コルチゾール、アドレナリンなどのストレスホルモンを常時分泌させます。
一般に言われる「闘争か逃避か」といわれるストレスモードを引き起こします。
これによって学習能力が低下し、ミスが目立ってくるのです。
その反対に、リラックスできる環境だと学習能力やスキルが向上します。
まるで好きなこと(趣味)をするような気持ちであると、益々学習能力が向上するのです。
「好きこそものの上手なれ」
これは、一般社会にも通用する原理ですね。
生命体は競争や苛烈な環境におかれると、パフォーマンスが著明に低下していきます。
これは、ストレスホルモンによって糖のエネルギー代謝が低下するからですね(#^.^#)。
競争や峻烈な環境を課す現代社会システムは明らかに、生命体の”生きる”エネルギーを奪ってしまうのです(^_-)-☆。