いままでに数々の健康神話を斬ってきましたが、その一つに「コレステロール神話」があります(コレステロール神話を含めたプーファを推奨するものが「脂質神話」)。
簡単に言うと・・・・
・コレステロールが高いと心臓血管疾患のリスクが高くなる
・LDLコレステロールは悪玉、HDLコレステロールは善玉
これはすでに1960年代以降の研究で間違いであることが明確にされていたのにも関わらず、医療関係者の間でもこの神話にまだ振り回されています。
このような解釈は危険であることはメディカルパレオプログラム(健康神話の真実)のところで詳しくお伝えしています。
また過日の生化学の授業でもお伝えいたしました。
さて、今回このコレステロール神話の2番目の柱である、
「LDLコレステロール=悪玉、HDLコレステロール=善玉」
が完全に覆された10年前の研究を追試した最新の研究結果が発表されていましたので、シェアしたいと思います。
LDLコレステロールを低下させて、HDLコレステロールを上昇させる薬剤を使用して心臓血管疾患および死亡率を検討した研究です(N Engl J Med 2017;376:1933-1942)。
10年前に同じ作用をする薬剤で、心臓血管疾患および死亡率が上昇したことをすでに「脂質の真実3」でお伝えしていました。
つまり、悪玉コレステロールを下げて、善玉を上げるとむしろ悪い結果が出たということです。
(生化学の基礎的な勉強をしていると当然の結果です)
今回はその再確認です。
今回もLDLコレステロールを低下させて、HDLコレステロールを上昇させることに成功していますが、心臓血管疾患の発症を低下させることはありませんでした。
ただし、総死亡率は若干の低下を認めています。
さて、これをどう解釈するのでしょう?
ポイントは・・・・
この実験では対象者1万2,092のうち96%の患者がスタチン(コレステロール降下剤)の投与を受けていて、そのうちの46%の患者が高用量スタチンでした。
スタチンは糖のエネルギ―代謝を止めてしまう毒性の強い薬剤です(糖尿病、ガン、心不全、横紋筋融解症などの副作用が200以上ある)。
このような物質の投与がこの実験結果に影響しているは間違いありません。
(今回の研究で、プラセボ群と薬剤投与群でどちらにスタチン高用量者が多いかということは実験結果を左右する)
本来ならば実験デザインでは実験結果に影響を及ぼす他の要因を極力排除しないといけません。
今回の場合ではスタチンという物質が総死亡率に及ぼす影響が報告されているにも関わらず、このような物質を投与しながらの他の薬剤を加えるという、そもそも解釈が困難になるような複雑なことをやっているのです。
いや統計学ではそれでもランダムに割り付けているから関係ないんだという数字屋さんの極論もあると思いますが、あきらかに死亡率に影響する因子(タバコ、プーファ、エストロゲン、今回の場合はスタチン投与も)をできる限り排除しない限りは、純粋な単一の薬剤の影響を測り知ることはできません。
こんな基本的なことをおろそかにして、相反する研究結果が出たところで右往左往すること事態がいつもの「木を見て森を観ず」の視野狭窄症です。
地球は太陽の周囲を公転するということと同じく、すでに基礎医学の度重なる実験で、LDLコレステロール、HDLコレステロールのいずれもがとても重要な役割を生体内で担っていることが証明されています(特に、LDLコレステロールが下がるのは死亡率を高める)。
このような基礎的な事実をおろそかにして、「いや太陽が地球の周りをまわっている」と幻想を頂くことは中世では許されたとしても現代では許されません。
しかし、現代医学(および一般健康常識)ではまだ多くのことが驚くころなかれ、中世のままなのです。当事者たちがそのことの自覚がありません。
「LDLコレステロール=悪玉、HDLコレステロール=善玉」という幻想はいつになったら太陽の周りを回るようになるのでしょうか?