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『マーガリンの問題は、トランス脂肪酸ではなくプーファ』

『マーガリンの問題は、トランス脂肪酸ではなくプーファ』

 

 

SNSでさまざまなインフルエンサーが喧伝している一般健康常識は、目を覆いたくなるような誤情報ばかりで溢れかえっています。今回は、その中の一つである「トランス脂肪酸」についての誤った認識について本質を詳しくお伝えしていきます。

 

 

 

⭐️マーガリンに含まれるプーファのエビデンス

  1. 植物油脂の組成

2016年の米国における調査では、市販されているマーガリンおよびスプレッド製品37種(市場シェア80%以上)の脂肪酸組成が分析されました。14グラムのサービングあたり、平均して総脂質7.1グラム、飽和脂肪酸1.8グラム、一価不飽和脂肪酸1.8グラム、多価不飽和脂肪酸3.0グラム、リノール酸2.6グラム、α-リノレン酸0.3グラムが含まれていました(1)。この研究では、調査対象製品の86%が部分水素添加植物油(PHVO)を含んでいませんでしたが、マーガリンの原材料として菜種油、紅花油、ひまわり油、トウモロコシ油、大豆油、ピーナッツ油などのプーファ(植物油)が使用されていることが明記されています(2)。

 

 

 

2024年のイラン・テヘランにおける研究では、マーガリン24サンプルの脂肪酸プロファイルが分析され、平均して総脂質99.00±0.18グラム/100グラム脂肪、飽和脂肪酸40.36±0.87グラム、一価不飽和脂肪酸(主にオレイン酸36.98±1.81グラム)、プーファ (主にリノール酸19.67±1.25グラム)が検出されました(3)。これらのデータは、マーガリンが高濃度の不飽和脂肪酸、特にプーファ(多価不飽和脂肪酸)を含むことを示しています。

 

 

 

  1. 製造工程における植物油の使用

マーガリン製造工程では、液体植物油を固形化するために水素添加が伝統的に行われてきました(4)。現代のマーガリンは、パーム油、パームステアリン、菜種油などを混合して製造されており、製品によって57%精製パーム油、12%パームステアリン、11%菜種油、20%水といった組成が報告されています(5)。製造過程では、油脂と水溶性成分を60度で混合し、冷却・結晶化を経て水中油型エマルジョンを形成します。

 

 

 

⭐️マーガリンにおける過酸化脂質のエビデンス

  1. 脂質過酸化の進行

2021年のウィーン大学の研究では、4種類の市販マーガリンを15度で180日間保存し、脂質過酸化の進行を測定しました(6)。過酸化物価(PV)は保存期間中に増加し、最高値はM2サンプルで4.76±0.92 meq O₂/kg油に達しました。共役ジエンも同様に増加し、M2では14.7±0.49に達しました。酸化安定性(OIT)は最大50.9%低下しました。

 

 

 

  1. 加熱による過酸化脂質とアルデヒド生成

2021年の研究では、マーガリンを80度で1時間加熱すると脂質過酸化が加速され、過酸化物価と酸化誘導時間が変化することが示されました(7)。緑茶抽出物は抗酸化作用を示しましたが、αトコフェロールアセテートは逆に過酸化を促進しました。単価グリセリドの脂肪酸鎖の種類により、酸化への影響が異なることも判明しました。

 

 

 

2014年のスペイン・バスク大学の研究では、3種類のマーガリンを180度で加熱した際の劣化過程を¹H NMR(核磁気共鳴法)でモニタリングしました(8)。加熱によりマーガリンに含まれるプーファ(多価不飽和脂肪酸)が分解され、多様なアルデヒド類(アクロレイン、4-ヒドロキシ-2-ノネナールなど)とエポキシド類が生成されることが確認されました。特に、オメガ3脂肪酸で強化されたマーガリンでは劣化速度が著しく速く、毒性のあるα,β-不飽和アルデヒドが多量に生成されました。この研究は、マーガリン加熱が発がん性物質であるアクロレインを生成することを実証しています。

 

 

  1. アセトンの生成

2021年の研究では、保存中のマーガリンからアセトンが検出され、これが脂質過酸化の新たな指標となる可能性が示されました(9)。アセトンは180日間の保存期間中に全種類のマーガリンで増加し、M1では45.4±5.80 µg/Lから345±71.5 µg/Lへ、M2では641±17.3 µg/Lから968±149 µg/Lへ増加しました。アセトンは不飽和脂肪酸の過酸化反応において、エピジオキシドラジカルの環化と断片化を経て生成されると推定されています(図3参照)(9)。

 

 

 

  1. エポキシ化トリアシルグリセロール(oxTAG)

LC-MS分析により、パーム油を主成分とするマーガリン(M2、M3)からエポキシ化トリアシルグリセロールTAG54:1(O)、TAG54:2(O)、TAG54:3(O)が検出されました(10)。M3では保存期間中にこれらのエポキシドが増加し、TAG54:1(O)は1.06±0.10 mg/kgから1.59±0.33 mg/kgへ、TAG54:2(O)は0.77±0.11 mg/kgから1.32±0.33 mg/kgへ増加しました。エポキシドは水素引き抜きに依存しない初期脂質酸化経路、またはヒドロペルオキシドの分解による二次酸化生成物として形成されます。特に植物油脂(リノール酸)由来のモノエポキシドは毒性が高いとされています(11)。

 

 

 

以上のエビデンスから、マーガリンには以下の特徴があることが科学的に実証されています。

 

  1. 植物油脂の高含有:マーガリンは大豆油、菜種油、ひまわり油、パーム油など多価不飽和脂肪酸を豊富に含む植物油から製造されており、リノール酸(オメガ6)含量が特に高い(最大19.67グラム/100グラム脂肪)。
  2. 過酸化脂質の蓄積:保存および加熱により、マーガリン中の多価不飽和脂肪酸は容易に過酸化され、過酸化物価、共役ジエン、エポキシドが増加する。
  3. 有害アルデヒドの生成:加熱により発がん性物質であるアクロレイン、4-ヒドロキシ-2-ノネナールなどの毒性アルデヒドが生成される。
  4. アセトンおよびエポキシドの形成:保存中にアセトンおよびエポキシ化トリアシルグリセロールが生成され、これらは従来の過酸化指標では検出されにくい。

 

 

 

したがって、マーガリンの健康リスクはトランス脂肪酸そのものではなく、製品に含まれるプーファ (多価不飽和脂肪酸)とその過酸化によって生成される過酸化脂質およびアルデヒド類にあるという結論が、複数の独立した研究によって支持されています。

マーガリン製造におけるプーファのシス→トランス異性化は、もともとシス型不飽和脂肪酸が酸素存在下で酸化される際に、二重結合の移動・異性化が起こり、より熱力学的に安定なトランス体が副次的に生成するものです。

 

 

この場合、「酸化の結果としてトランス体が生じる」のであって、「トランス体が過酸化脂質生成を特別に促進する」ということではありません。

 

 

 

ただし、プーファ(シス型)よりも安定的なトランス脂肪酸も不飽和脂肪酸なので、ラジカル連鎖反応や一重項酸素などによって酸化されれば、他のプーファ(シス型)と同様に過酸化脂質(脂質ヒドロペルオキシドなど)を形成し得ます。

 

 

 

しかし、「トランス脂肪酸だから特別に過酸化脂質を作りやすい/作りにくい」のではなく、より不安定なプーファの二重結合の数と周囲の酸化環境(鉄、活性酸素、光、熱)が生命体の心身にダメージを与えるということです。

 

 

トランス脂肪酸は、支配層が私たちに意図的に摂取させているプーファの害悪を隠すための、スケープゴートなのです。

参考文献

  1. Fat composition of vegetable oil spreads and margarines in the USA in 2013: a national marketplace analysis. Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2016, 116(8), 1239-1249.
  2. USDA Specifications for Vegetable Oil Margarine. Agricultural Marketing Service 2024.
  3. A comparative analysis of butter, ghee, and margarine and its implications for healthier fat choices. Food Science & Nutrition 2024, 12, 10123-10137.
  4. Margarine – an overview. ScienceDirect Topics 2024.
  5. Ingredient-dependent extent of lipid oxidation in margarine. Antioxidants 2021, 10(1), 59.
  6. Acetone as indicator of lipid oxidation in stored margarine. Antioxidants 2021, 10(1), 59.
  7. Ingredient-dependent extent of lipid oxidation in margarine. Antioxidants 2021, 10(1), 59.
  8. 1H Nuclear Magnetic Resonance monitoring of the degradation of margarines of varied compositions when heated to high temperature. Food Chemistry 2014, 165, 119-128.
  9. Acetone as indicator of lipid oxidation in stored margarine. Antioxidants 2021, 10(1), 59.
  10. Acetone as indicator of lipid oxidation in stored margarine. Antioxidants 2021, 10(1), 59.
  11. 1H NMR monitoring of margarine degradation. Food Chemistry 2014, 165, 119-128.

 

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