『「目に見えない疫病」——ペットから海洋生物まで、動物たちを襲う慢性病の謎を解く』
私たちの愛するペットや家畜、そして広大な海に生きる生物たちが、今、かつてない健康危機に直面していることをご存知でしょうか。世界中の動物たちががん、肥満、糖尿病、変形性関節症といった慢性疾患に苦しんでいます。
私たちの子供もそうですが、ペットたちも具合が悪いとすぐに病院に駆け込んでしまいます。病院ではよくて症状を一時的に抑えるだけで、場合によってはより悪化することがあります。
そして、次に私たちの取る行動は、インターネットでの検索です。これでさらに誤情報に騙されて、自由診療のクリニックなどで高い代価を支払わされるハメになります。しかし、子供やペットたちの病気はさらに悪化しています(私たちが目にするインターネットには、仕組み上本当の情報がそのまま流れることはありません)。

なぜ、このような状況になるのでしょうか?
これらの病気は、病院が診断するような細菌や架空のウイルスによる感染症ではなく、毒性物質による「非感染性疾患(NCD)」と呼ばれるものだからです。人間社会で「生活習慣病」として知られる病気と同じ仲間であり、その広がりは驚くべき速さで進行しています。

まるで人間社会の健康問題が鏡に映し出されるように、動物たちも同じ苦しみを味わっています。しかし、なぜこれほど多様な種で、これほど急速にこうした病気が増えているのでしょうか。
科学界では、この問いに答えるための広範な学際的研究がまだまだ不足しています。動物の健康に影響を与える要因は、往々にして人間にも影響を及ぼすため、こうした傾向を深く理解することは、私たち自身の未来を守るためにも不可欠です。
⭐️遺伝の呪縛と環境の影響——病気を生み出す二つの力
2025年に『リスク分析』誌に掲載された最新の研究は、動物における非感染性疾患に関する既存の科学文献を丹念に検証し、病気を引き起こす複数の要因を指摘しています(1)。まるでパズルのピースを組み合わせるように、遺伝的要因と環境的要因という二つの大きな力が浮かび上がってきたのです。
まず、遺伝的素因についてです。特定の動物集団では、まるで設計図に欠陥があるかのように、病気にかかりやすい体質が受け継がれています。これは遺伝子という架空の存在を持ち出さなくても、エーテル共鳴という興味深い現象で十分説明つきます(拙著『これからの心身を整える「共鳴力」の鍛え方』参照)。

外見の美しさや可愛らしさを追求して人工的かつ選択的に繁殖された犬や猫、あるいは乳量や肉量を増やすために改良された家畜たちは、その代償として糖尿病や僧帽弁疾患などの病気に対する脆弱性を抱え込んでいます。これは、まるで高性能のスポーツカーが燃費の悪さや故障しやすさというトレードオフを抱えているようなものです。
次に、環境要因です。毒性物質の摂取(=栄養不良)、運動過多あるいは不足、慢性的なストレスなどは、種を問わず、病気の発症様式や時期に深刻な影響を与えます。これらの要因は、まるで種を蒔く土壌の質が作物の成長を左右するように、ヒトおよび動物の健康状態を決定づけています。
⭐️家庭のペットに広がる静かな危機
飼い猫や飼い犬の肥満は今や蔓延しており、最近の調査では50パーセントから60パーセントもの個体が過体重に分類されています。これは人間社会における肥満の広がりと驚くほど似ています。
この肥満の波は、猫の糖尿病の年次増加を助長しています。2010年代後半の研究では、飼い猫における糖尿病の有病率が過去数十年で着実に上昇していることが報告されています(2)。
畜産の現場でも状況は同様です。集約的に飼育される豚のうち、約20パーセントが変形性関節症を発症します。

これは、まるで人間が狭いオフィスで長時間座り続けることで腰痛や関節痛を発症するようなものです。家畜は、生産性を追求するあまり、自然な動きや行動を制限された劣悪な環境で暮らすことを強いられているため、当然の結果といえるでしょう。
⭐️海の生態系にも忍び寄る脅威
問題は陸上の動物だけに留まりません。海洋生物も同様の、あるいはそれ以上に深刻な課題に直面しています。セントローレンス川に生息するシロイルカ(Beluga whale)では、消化器系のがんが確認されています。2000年代初頭の研究では、この地域のシロイルカにおける腫瘍発生率が他の地域よりも顕著に高いことが報告されました(3)。
養殖される大西洋サケでは心筋症症候群が発生しています。さらに衝撃的なのは、多環芳香族炭化水素(PAHs)やポリ塩化ビフェニル(PCBs)などエストロゲン作用をもつ工業化学物質で汚染された河口域に生息する野生生物における肝臓腫瘍の発生率です。
1990年代後半から2000年代にかけての研究では、こうした汚染地域に生息する魚類の肝臓腫瘍発生率が15パーセントから25パーセントに達する事例が報告されています(4)。

⭐️環境変化という増幅器——病気のリスクを高める人間活動
人間による生態系の変容が、これらの脅威をさらに増幅させています。都市化、5GやAIデータセンターの設置、太陽光パネルや風力発電による自然破壊、人工的な気候操作などの人間の活動によって生物多様性の喪失が起こっています。
日本で視聴率がとれるということで喧伝される熊被害もこの延長線上にある問題として捉えないといけません(それでも長期的なデータでは激増というものではない)。さらには熊被害を煽ることで利益を得る国際的集団が存在しています。

海洋汚染とサンゴ生態系の衰退は、ウミガメや魚類における腫瘍発生率の上昇と相関しています。2010年代の複数の研究では、水温上昇がウミガメの免疫系に影響を与え、線維乳頭腫症という腫瘍性疾患の発生を促進することが示されています(5)。
化学物質(多くはエストロゲン作用をもつ)の流出や大気汚染は、鳥類や哺乳類に過剰なエストロゲン作用をもたらすことで、ペットの肥満、糖尿病、免疫抑制を引き起こしています。
以上から種を超えた病気のパターンがはっきりと明確になっています。それは、人間が作り出した毒性物質の蓄積があらゆる慢性病を引き起こしているという現実です(『世界一やさしい薬のやめ方』サイン会のテーマでした😃)。
現代医学や獣医学もこの真の原因にアプローチしない限り、状況をさらに悪化させるだけに終わるでしょう。
ヒトも動物も心身の不調の陰には、必ず毒性物質の蓄積が隠れています。そして、このことは現代のサイエンスや医学ではまったく無視されています。
したがって、どの病院に行こうが、インターネットで検索して自由診療のところに行こうが、結果は目に見えています。

愛するペットや動物を守るためにも、自分や家族を守るためにも、私たちが毒性物質の暴露に留意していくことしかないのです。
参考文献
- Mataragka A, et al. Beyond Infections: The Growing Crisis of Chronic Disease in Animals. Risk Analysis, 2025; DOI: 10.1111/risa.70130
- Öhlund M, et al. Incidence of Diabetes Mellitus in Insured Swedish Cats in Relation to Age, Breed and Sex. Journal of Veterinary Internal Medicine, 2015; 29(5): 1342-1347
- Martineau D, et al. Cancer in Wildlife, a Case Study: Beluga from the St. Lawrence Estuary, Québec, Canada. Environmental Health Perspectives, 2002; 110(3): 285-292
- Myers MS, et al. Improved Flatfish Health Following Remediation of a PAH-Contaminated Site in Eagle Harbor, Washington. Aquatic Toxicology, 2008; 88(4): 277-288
- Aguirre AA, et al. The One Health Approach to Toxicants in Marine Turtles: A Perspective. Journal of Experimental Marine Biology and Ecology, 2016; 479: 77-83

















