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『「肥満」の定義が変わる!5人に1人が新たに肥満と診断される時代の到来』

『「肥満」の定義が変わる!5人に1人が新たに肥満と診断される時代の到来』

 

「肥満」の常識が変わる日

BMIだけではもう測れない──“隠れ肥満”のリスクと新しい診断のカタチ

 

ある日、健康診断の結果を見て「BMIは25だから、まぁ大丈夫」と胸をなでおろしたあなた。それが“落とし穴”かもしれない時代がやってきました。

 

 

 

2024年、『Nature Medicine』に掲載された欧州肥満研究協会(EASO)による新しい肥満の定義は、これまでの“体重と身長だけで決まる肥満”という概念に大きく揺さぶりをかけました。この定義では、単なるBMIだけでなく、「お腹の脂肪」や健康リスク(合併症)を考慮し、肥満をより“質的”に捉えるアプローチが採用されました。

 

 

参考文献

・A new framework for the diagnosis, staging and management of obesity in adults . Nat Med

2024 Sep;30(9):2395-2399.

 

 

 

■「見た目スリム」でも、肥満のリスクに該当?

この新しい定義によれば、BMIが25以上30未満の“いわゆる過体重”とされていた人のうち約5人に1人(18.8%)が、実は「肥満」と再分類される可能性があります。

 

 

この再分類の鍵となるのが、「ウエストと身長の比率(腰囲/身長 ≥ 0.5)」。つまり、スリムに見えてもお腹まわりに脂肪がついていれば、健康上のリスクが高まるという判断です。

 

 

 

実際、再分類された人たちの多くが高血圧(79.9%)や関節炎(33.2%)、糖尿病(15.6%)などの合併症をすでに抱えており、単純なBMIだけではこうした危険を見逃してしまう可能性があることが示されました。

 

肥満の新定義に基づき再分類された“肥満”群では、正常体重で健康な人たちと比べて死亡リスクが約1.5倍高かったことも報告されています(ハザード比1.50, P < 0.001)。

 

 

参考文献

・Implications of the European Association for the Study of Obesity’s New Framework Definition of Obesity: Prevalence and Association With All-Cause Mortality. Ann Intern Med

. 2025 Jul 8. doi: 10.7326/ANNALS-24-02547.

 

 

 

■因果関係の逆転か、真犯人は別にいる!

再定義された”肥満”の人が高血圧、関節炎や糖尿病などの合併症が多いという事実は、実際は高血圧、関節炎や糖尿病自体が過体重(腹部の脂肪蓄積)を招いている可能性があります。つまり、因果関係が逆になっている可能性です。

 

 

 

合併症自体が腹部の脂肪蓄積リスクを押し上げている場合は、人工的に薬剤などで体重減少させても死亡予測を大幅に改善することはありません。なぜなら、高血圧、関節炎や糖尿病の真の原因は、お腹の脂肪とはまったく別だからです。

 

 

 

むしろ、高血圧、関節炎、糖尿病とお腹の脂肪は同じ原因(例えばプーファによる全身の炎症やインシュリン抵抗性)によって発生している事象(相関関係にすぎないということ)の可能性が高いです。

 

 

 

現代医学では、このような真犯人を放置して、肥満自体を“冤罪(スケープゴート”)にする傾向が非常に強いです。

 

 

 

それは、お腹の脂肪、つまりプーファ蓄積によって炎症が加速するので、あたかもお腹の脂肪が原因に“見える”だけで、それは高血圧、関節炎、糖尿病を引き起こす真の炎症の原因ではありません。

 

 

 

つまり、真の原因で発生したお腹の脂肪(プーファ)が、さらに炎症を加速させるという悪循環があるだけで、お腹の脂肪がこれらの慢性疾患の最初の炎症の原因ではないからです。

 

 

 

実際に、お腹の脂肪がほとんどなく痩せている人でも、高血圧、関節炎、糖尿病を発症しています。

 

 

参考文献

・Metabolic syndrome in rheumatic diseases: epidemiology, pathophysiology, and clinical implications. Arthritis Res Ther 10, 207 (2008).

 

・Is hypertension associated with arthritis? The United States national health and nutrition examination survey 1999–2018. Ann Med. 2022 Jul 4;54(1):1767–1775.

 

・Diabetes, Hypertension, and Cardiovascular Disease: Clinical Insights and Vascular Mechanisms. Can J Cardiol. 2018 May;34(5):575–584.

 

 

 

なぜ肥満を再定義するのか?

この肥満というレッテルをより数多くの人に貼るというのは、ちょうど血圧やコレステロールの基準値なるものを下げて、病人を増やしてきた経緯と重なります。

 

 

肥満という病名がつけば、イーロン・マスクが使用していたことで脚光を浴びた糖尿病薬などの使用を増やすことができます。

 

 

 

この糖尿病薬は、過去記事でお伝えしたように筋肉減少、甲状腺ガン、老化、自殺傾向を促進するなどの複数の副作用が問題となっている薬剤です。

 

 

 

肥満も含め、慢性病を自然治癒させるためには、薬剤やサプリメントを増やすのではなく、むしろこれらの“超”人工加工品(つまり、毒性物質です)を減らしていく「引き算」の発想が必要です。

 

 

 

その重要性を拙著『世界一やさしい 薬のやめ方に豊富なエビデンスを提示して解説していますので、じっくりお読み頂ければと思います。

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